68海里目 拡充する兵力
数週間後、どうにか「古鷹」の建造は完了した。
あとは公試の結果次第だ。
だが、ここで一つの問題が発生する。
「搭乗員どうしよう…」
そう、搭乗員の問題がある。
いくらテラル島での兵学校で隊員を育成しているとしても、それだけでは必要な定員が足りるとは限らない。
ここは一度トーラス補佐官に相談するか。
「…そんなわけで、隊員の数が足りないんですよねぇ」
「そう言われても、足りないものは足りないんだ。仕方ないだろう」
「そうですけど…」
トーラス補佐官には簡単にあしらわれてしまう。
どうしよう。このままでは無用の長物が出来上がってしまう。
そんな時、一緒に話を聞いていたアルトさんが口を開く。
「それなら我が信者に手伝ってもらうとするか」
「はい?どういうことですか?」
「今は兵員の数を増やしたいのだろう?それならアルトゥル教の信者たちに呼びかけて、兵員となりうる人材をかき集めるというものでどうだろうか?」
「いいんですか、そんなことして?」
「良いも悪いも、俺はすぐにでもクレバイルに対して反攻したいのだ。そのためなら努力は惜しまない」
その努力、もうちょっと別の方向で発揮して欲しいなぁ。
というわけで、隊員の問題はひとまず解決した、と思う。
そしてもう一つ問題がある。
航空兵装の問題だ。
こればっかりはどうしようもない。今から航空機の開発でもするか?
ここまで思案したところで、一つの考えにたどり着く。
「そうだ。飛竜だ」
そう、以前ハジーサ島からシドラール国本島まで、「吹雪」の後部甲板に3匹の飛竜を載せて航海したことがある。その時も、確か艦艇に載せている航空機のようだと考えていたなぁ。
そんなわけで、このことについてもトーラス補佐官に相談する。
「ということで、どうにか飛竜使いを集めて航空兵力として使ってみたいのですが」
「本当に司令官は突然なこと言い出すな…」
トーラス補佐官は頭を抱えてしまった。
いつものお約束である。
「とにかくだ。航空兵力として使うにはクリアしなければならない課題もある」
「なんですか、それ?」
「飛竜は少なくとも我々と同じ生き物だ。飼育するにはいくつか条件がある」
「なるほど。それをクリアしない限りは兵力として数えるわけにはいかないんですね」
「まだ早計と言わざるを得ないが、まぁそうなるな」
なら簡単な話だ。
テラル島にはいまだ空いている土地がいくらかある。
そこに飛竜飼育用の建物を建設すればいいだけのことだ。
「あとは、誰がその役割を担ってくれるのかだが…」
「防衛連盟軍にはいないんですか?」
「いるにはいるのだが、あちらさんは陸軍の管轄になっているから、おいそれと飛竜を渡してくれるとは限らないぞ」
「あー…。陸軍と海軍は犬猿の仲なんですか?」
「そういうわけではないが、陸軍は陸軍で必要最低限の飛竜しか持ち合わせていないようでな。多分どこも交渉には応じてくれはしないだろう」
「うーん…」
どうにかして軍内部で貸してくれそうな場所を考えてみたものの、結局は無理そうだという結論に至った。
「仕方ない。苦渋の決断だが、あそこにいくか」
そういって俺は艦を出すよう指示した。
今回は「古鷹」に乗っていく。一応新人隊員と古参の隊員を混ぜて出航する。
そして1週間後、ある場所に到着する。
シドラール国だ。
早速王都に入港すると、わざわざシドマ国王が出迎えてくれた。
「久々であるな、カケルよ」
「お久しぶりです、シドマ国王」
「さて、今日は何用かね?」
「お世話になった方々をスカウトしに来ました」
そういって俺は王都の西側郊外へと向かった。
そこには、かつてハジーサ島に居住していた島民の面々が、仮住居に住んでいる場所がある。
そしてもちろん、そこに俺の目的の人たちがいるのだ。
俺は、とある建物のドアをノックする。
「はーい」
中から女性の声がする。しばらくしてドアが開く。
「あら、カケルじゃない」
「お久しぶりです、アスナさん」
「あっ、兄ちゃん!」
「おー、久しぶりだなカイ君」
「久しぶりだな、カケル君」
「リフレットさん、それにサラも」
「何よ、私はついでなのかしら」
「そういうわけじゃないけどさ」
「それで、カケル君。今日は何の用事で来たんだ?」
「それは中で話しましょう」
そういって家の中に入る。
早速本題に入った。
「…というわけで、航空兵力として飛竜、および飛竜使いを連合艦隊に登用したいと考えています」
「なるほど、それで僕たちに白羽の矢が立ったわけか」
「お願いします。どうにか協力できないでしょうか?」
「…もちろん、僕はいいけれど、アスナやサラ、カイが何て言うか…」
「僕はいいよ。兄ちゃんの力になれるなら協力する」
「私も、カケルのためなら命をかけてもいいわ」
「カイ、アスナ…」
「…サラはどうなんだ?」
俺はゆっくりとサラのほうを見る。
サラは少し考えて、顔を上げた。
「いいわ、やったげるわ」
「…本当にいいんだね?」
「本当よ、二言はないわよ」
これでリフレット一家の承諾を得ることが出来た。
「それじゃあ、早速だけど、連合艦隊の本拠地に行きましょう」
「今からか?少し気が早いというか…」
「そうよ、いろいろと整理しないといけないし、少しここに滞在していきなさい」
「そうですか?じゃあお言葉に甘えて」
こうして俺は数日間、ハジーサ島の住居区に滞在することとなった。
数日後、リフレット一家の出発を島民の皆が祝福してくれた。
「リフレットよ、新しい土地でもしっかりやってくるんじゃぞ」
「もちろんです、ベイエルさん」
「カケルよ、彼らを頼むぞ」
「はい」
こうしてリフレット一家と俺は「古鷹」へと戻っていくことになる。
早速リフレットさん、サラ、カイ君の三人は「古鷹」の後部甲板に降り立った。
「これがカケル君の新しい船か。ずいぶんと大きいんだね」
「そうですね」
「全く、カケルったら変な事ばかり注力してるんだから」
「仕方ないでしょ、これが仕事みたいなもんだし」
「ふん。…まぁ変わってないようで何よりよ」
「え?なんか言った?」
「何も言ってない!」
そんな感じで、リフレット一家を向かい入れた「古鷹」は王都を離れていった。
テラル島へ戻る途中、俺は彼らに一つのことを提案する。
「早速ですが、艦上航空兵力の試験をしましょう」
「本気か、カケル司令官」
トーラス補佐官が心配そうに聞く。
「彼らはまだ民間人という立場だ。試験をするのは、テラル島に戻ってからでも問題はないだろう」
「そうは言いますが、彼らがここにいる時点で民間人ではない気もしますよ」
「それはそうだが…」
トーラス補佐官は狼狽えてしまう。
そして渋々了承してくれるのだった。
「というわけで、リフレットさん。早速飛んでみてください」
彼らに与えた部屋で、俺はほぼ無茶ぶりのようなことをする。
「よし、分かった」
だが、それに合わせるようにリフレットさんも了承してくれるのだった。
一度は駆逐艦の上でやっていたし大丈夫だろう。
俺はそう考えていた。
早速後部甲板に移動し、飛行準備に取り掛かる。
「いつでも大丈夫だ!」
「それじゃあ飛んでください!」
俺の合図と共に、リフレットさんとそのDPは大空へと飛び立っていった。




