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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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67海里目 建造と検疫

 ジリジリと太陽が真上から照りつける8月。

 松型駆逐艦量産計画は、ヒルノ海上国家のみならず、周辺国家の造船所まで巻き込んでいた。

 中にはボイコットまで起こす造船所もあり、俺はその度にその場所まで向かい頭を下げ続けた。

 そんな中でも、俺は時間を見つけては連合艦隊の戦力を増強するため、手始めに主力駆逐艦の量産を始めた。詳しく言うならば、吹雪型駆逐艦の5~8番艦である「叢雲」「東雲」「薄雲」「白雲」の4隻だ。

 これで連合艦隊が保有する現在の戦力は軽巡洋艦2隻、駆逐艦8隻の計10隻になる。これだけあれば、防衛連盟軍の2個中艦隊は易々と撃破できるだろう。

 それに加え、俺はある計画を打ち立てていた。とはいっても、そんな大層なものではない。


「重巡洋艦の建造を始めます」


 そう、いよいよ重巡洋艦の建造に踏み切るのだ。

 今回建造するのは、古鷹型重巡洋艦の1番艦「古鷹」である。

 早速テラル島にある船台に竜骨(キール)を設置していく。だが、重巡洋艦はその規模が全くもって違いすぎる。

 古鷹型重巡洋艦は、その全長が185mもある大型艦艇だ。まずこの長さの竜骨(キール)を設置するのに一苦労である。

 さらに重巡洋艦には、軽巡洋艦よりも厚い装甲が装備されている。そういった意味でも、「古鷹」を建造するのには、いくつかの困難が待ち受けていることだろう。

 その問題が露呈したのは、実際に建造を始めてから数日たったころだった。


「ま、まずい…。使用する金属の量がこれまでに比べて尋常じゃない…」


 実際この通りであって、その量の比較はそれぞれの排水量を見てもらえれば分かる。

 俺が実際に建造した天龍型は基準排水量で3120tだ。それに比べて古鷹型の基準排水量がカタログ値で8700tと、天龍型のそれの倍以上である。

 この時点でこれだけの差があるのだ。実際には古鷹型の基準排水量は軽くなると見られているが、どうなるか分からない。


「鉄鋼の生産は外部に委託出来そうにないなぁ…」


 そんなことも考えながら、俺は着々と建造を進めていく。

 こうして試行錯誤約1ヶ月で「古鷹」の船体が完成した。

 しかしまだ上部構造物の建造を進めなければいけないため、まだしばらくの間建造に勤しむしかないのである。

 そんな中、「白雪」の船内で謎の病気が流行しているとの噂を聞きつけた。


「それで、どんな症状なんです?」

「まずは高熱、吐き気、倦怠感と重症化した時に呼吸困難が発生しているな」


 そこまで聞いて、俺は二つの可能性を考えた。

 一つはインフルエンザウイルスだ。高熱と倦怠感はインフルエンザウイルスの典型的な症状であるからだ。

 もう一つはコロナウイルスである。高熱と重症化すれば呼吸困難になるのならば、まさにそれであろう。

 だが、これでは吐き気の症状が説明出来ないし、そもそも二つのウイルスの症状が出ている時点で若干おかしいだろう。

 そんな執務室にアルトさんが入ってくる。


「謎の病気が流行していると聞いてな。手伝いに来た」

「アルトさんって何かできるんですか?」

「もちろんだ。私にはこの世界の歴史と知識にアクセスできる権限がある」


 急にSFチックなこと言い出したな。


「それはつまりどういうことですか?」

「まぁ、簡単な話、知りたいことがあれば可能な限り教えられるということだ」

「本当ですか?」

「もちろんだとも」

「では、現在『白雪』で流行している病気について教えてください」

「分かった。少し時間をくれ。調べてくる」


 そういってアルトさんはどこかへ消えていった。

 数十分後したあと、アルトさんは戻ってくる。


「分かったぞ。あれはアフィリトウイルスによるものだ」

「アフィリトウイルス…?」

「あぁ。詳しい説明は省くが、海原にも分かりやすく言うならば、これはインフルエンザウイルスとコロナウイルスを合わせたような症状を発症させるウイルスだ」

「なるほど…」


 だから二つのウイルスの症状が出ていたのか。


「だが、現在特効薬や治療薬といったものは一切ない。自然治癒に任せるしかない代物だ」

「そんな…、何とかなりませんか?」

「そう言うと思って、何かないか調べてきた。一つだけ、何とかなる方法が見つかった」

「それはなんです?」

「ヒルノ海上国家のクリファラン学園に、医師(アスクレピオス)の能力を持った流浪者がいる。彼女に会いに行けば、おそらく何とかなるだろう」

「分かりました。今すぐ行ってきます」


 そう言って俺は、執務室の窓からクリファラン学園に向かって飛んだ。

 俺はクリファラン学園にいるホフキンス教授のもとに向かう。


「というわけで、医師(アスクレピオス)の流浪者がいるって聞いたことがあるんですけど」

「全く、君はいつも唐突だな」

「まぁ、緊急事態でもあるんで」

「はぁ…。クリファラン学園の北部にある医学部B棟に行けば分かるぞ」

「ありがとうございます」


 颯爽と俺は北の方へと向かって飛ぶ。


「医学部B棟ってあれか…?」


 そこには周囲のレンガで建てられた建物と違って、真っ白になっている建物が一つある。

 明らかに現代的な建物だ。

 その入口に降り立つと、なんとも分かりやすく自分の居場所を開示していた。

 俺はその指示通りに向かう。すると3階の一室に案内された。

 俺はとりあえず部屋のドアをノックする。


「はいはいはーい!」


 中からテンションの高い声が聞こえてくる。

 少ししてドアが勢いよく開く。

 そこには茶髪の女性がいた。


「どうもー!私が医師(アスクレピオス)のアンナでーす!」


 この人、テンションが高いな。でも、この人から名状しがたいオーラを感じるということは、間違いなく流浪者なのだろう。


「…はい、私が流浪者のアンナ・アレクシスです」

「どうも、海原駆です」


 中に入って簡単な自己紹介をする。


「本題なんだけど、今日は何の用事で来たんだい?」


 アンナさんのテンションの高さで忘れかけていたが、彼女に会いに来た理由があった事を思い出した。


「実は、我が連合艦隊の艦艇の1隻で、アフィリトウイルスによる感染症が流行している状態なんです。もし可能であれば、治療をしてやってもらえませんか?」

「いいよー」


 軽っ。


「だって私にとっては検体がタダで手に入るチャンスなんだからねぇ」


 そういってアンナさんは笑う。俺はその状態に若干引いた。

 翌日、彼女と部下数名を連れてテラル島へとやってきた。


「今日はありがとうございます」

「いいのいいのー。昨日も言ったけど、タダで検体手に入るからさー」


 そういって彼女は防護服を身にまとい、フルフェイスのマスクをつけて「白雪」へと入っていく。

 それから数時間。日も傾き始めた頃になって、ようやく出てきた。


「これで問題なし!アフィリトウイルスには私特製のワクチンと予防薬があるから、それを投与したから。あとは経過観察ね」

「ありがとうございます」

「いいのよ。困ったときはお互い様だから、ね!」


 そう言って彼女はウインクをする。

 それから数日後、無事に「白雪」の乗員はみんな回復に向かった。

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