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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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62海里目 新規の製造

 モールス信号の送受信機の制作を依頼して数日。

 俺の元をある人物が訪ねていた。


「初めてお目にかかる。私は防衛連盟兵器研究部陸戦兵器研究課のアンドレス・カスローネだ。今日はある相談があって来た」

「その相談というのは?」

「ほかでもない。今後発生すると思われるクレバイル領地侵攻において、これまでにない強力な兵器の製造を行いたいと考えているのだ」

「それを防衛連盟に依頼したいと?」

「そうだ。わが課では専門家の意見も交えているのだが、どうも限界に近い。そのため、少しでも情報を持っているであろう流浪者のウナバラ氏に協力を仰ぐことにしたのだ」

「なるほど。もし自分がそんなものを持っていない可能性は考えなかったんですか?」

「それはない。なぜなら、一人でどんな艦隊をも打ち破る艦を何隻も造り上げているのだから」

「それもそうですね」


 そんな他愛もない話をして本題に入る。


「さて、どのようなものがあるか、まずは大まかな内容から説明してほしい」

「そうですねぇ…」


 とは言われても、実際どんな兵器が有効なのか分からない。

 ここからは、現場の声が頼りになる。


「では、実際にどのようなものが欲しいのか教えてもらってもいいですか?」

「そうだな…。まずは敵が有するあらゆる兵器の射程外から攻撃できる能力が欲しい」

「なるほど」


 となると、連合艦隊が有する砲ならどれでも問題なさそうだ。


「それから量産が可能なこと。数に勝るならそれ以上のことはない」

「ふむ」

「それに機能性。あれば便利だが、最大の考慮に入れなくてもよい」

「ほう」


 こうなると、だいぶ絞られてくるだろう。

 現在候補に上がっているのは、対戦車砲、自走砲、迫撃砲といったところか。

 その中でも、特に使い勝手のよさそうなのは迫撃砲だろう。

 というわけで、俺は迫撃砲を提案する。


「迫撃砲か…。確か部内でもそういったものは開発されてはいたが、どれも採用に至らずに終わっている。それを採用することができれば、わが軍の戦力増強に一役買うことになるだろう」


 詳しい開発はこちらに来る研究員と共に行うことになり、今日のところはカスローネさんは撤収した。

 それから俺は少ししてから、あることに関して考え始める。

 それは、連合艦隊の陸上戦力についてだ。

 さっき候補にあげた対戦車砲や自走砲、迫撃砲に加え、各種戦車などを整備しないといけないだろう。

 だが、どれも敵地への侵攻がなければ作っても意味がない。だからといって作らないわけにもいかない。

 どうすればいいのだろうか。

 数分間考えたのち、一つの答えに至る。


「そうだ、民間に委託すればいいんだ」


 民間の製造所に委託すれば、こちらが苦労せずに武器を製造することが可能だ。

 もちろん、それに見合うコストを負担する必要が出てくるが。

 それに新規製造となると、設計図やら材料やらが必要になってくる。新しく製造ラインを構築しなければならないから、それに見合ったコストを提供してくれるか分からない。

 でも、ダメ元でやってみる必要はあるだろう。

 俺は早速アンデルトへ向かった。ここでは以前、魔法加熱炉を製造してもらったモンドローさんがいる工業都市だ。

 そこで企業同士で構成されている組合に問い合わせることにした。


「…そんなわけで、新しい武器および兵器の製造を受け持ってくれる製造所を探しているんですが」

「なるほどぉ…」


 対応してくれたのは、組合員のコンウェンさんである。


「しかしなぁ、今のご時世どこも忙しいだろうし、難しい注文ではあるよ?」

「それを承知で探しているんです」

「うーん…。あんまりこんなことはしたくなかったんだけど…」

「なにかあるんですか?」

「うん。アンデルトにある工房全部を並列化して、街全体を一つの工房にしちゃうんだ」

「それはつまり、工房ごとに部品を製造して最終的に組み立てまで行うってことですか?」

「まぁ、そんなとこかなぁ。もちろん、それが最善というわけではないんだけど」

「でもそんなこと出来るんですか?」

「協力してくれる工房次第だけどねぇ。とりあえず手当たり次第に聞いてみるから来週あたりまた来て」

「分かりました。よろしくお願いします」


 そう言って俺はアンデルトを後にする。

 その間に、俺はカスローネさんから頼まれている迫撃砲の設計を行うことにした。

 モデルは八九式重擲弾筒だ。まずは筒自体の制作である。本来の八九式重擲弾筒はこの筒に仕組みがあるのだが、今回は省く。それだとただの筒になるのだがな。

 次に弾薬だ。炸薬が入った弾頭部分と、信管のついた発射薬でなる。これ自体は制作に問題はない。

 問題があるとすれば、この軽迫撃砲をこの世界の技術で作れるかどうかである。

 これもカスローネさんが派遣する研究員との協議のあとだな。

 そこで試しに作ってみることにした。手伝いに連合艦隊の技術研究班を呼んでの実験だ。


「それじゃ、作ってみるか」

「はい」


 まずは擲弾筒の本体である筒だ。これはすぐに制作できた。

 次に弾薬の製造だ。炸薬や発射薬は火薬で問題ないが、これを組み立てるのが問題である。

 ここで技術研究班に相談である。


「これ、どう思う?」

「そうですねぇ…。少し難しいとは思いますが、外装部分を薄い鉄板で作れば何とかなると思います」


 そういって試行錯誤を繰り返していく。

 こうして技術研究班の協力のもと、新たな迫撃砲の製造ができた。

 その数日後、防衛連盟の研究員がやってくる。


「よろしく、司令官」

「よろしくお願いします」


 その研究員と一緒になって迫撃砲の設計を行う。

 どうやら設計面でも製造面からでも問題はないようだ。研究班と試行錯誤をした介があった。

 その翌日、アンデルトから連絡が入り、例の件が何とかなりそうであるとの連絡が入る。

 すぐさま俺はアンデルトに向かう。


「いやぁ、みんな案外ノリノリだったよぉ」


 コンウェイさんがそう言う。確かに、こんな短期間で複数の工房や製造所が一緒に動くのはなかなかない。


「ほんとありがとうございます」

「後は肝心の設計図とか材料が揃えば、すぐに製造に移れると思うよぉ」

「すぐに製造に移れるんですか?新しい技術が入っていると思うんですけど」

「それは多分問題ないと思うけどね。その時は司令官さんに手伝ってもらうかも」

「まぁ、必要ならばやりますけど…」

「それじゃよろしくねぇ」


 そういってコンウェイさんのところを後にする。

 さて、ラインの確保は出来たことだし、何を作るか考えたほうがよさそうだ。

 とはいっても何を作ればいいやら…。

 迫撃砲や自走砲なんかは興味をそそられる。面制圧は結構強いからな。

 だが、そんな頭の中をある武器が横切った。

 小銃である。


「そうだ、小銃作らなきゃ何にもならないじゃん」


 小銃なら一応汎用性があるし、自衛もできる。

 それに拳銃も一緒に作れば、近接武器一式の完成である。

 早速俺は制作に移った。


「グリップ部分は拳銃の時と同じようにして、撃鉄と弾だけは新しく製造したほうがよさそうだな…」


 こうして夜は更けていく。

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