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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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64/115

61海里目 続く準備

 あれから数日が経過した。「龍田」の公試も無事終了し、実戦に出られる状況になる。

 こうして、天龍型軽巡洋艦2隻と吹雪型駆逐艦4隻による水雷戦隊を編成することが可能になった。旗艦を「天龍」とした第一水雷戦隊である。

 そんな中、ヤーピン皇国から一通の手紙が届く。


「カケル司令に手紙だ」

「ヤーピン皇国からですか?アレの結果が分かったんですかね?」

「おそらくそうだろうな」


 手紙の内容を見てみると、アルトゥル教のことについて要点をまとめて書かれてあった。


「内容はなんだって?」

「えぇと…、アルトゥル教は、聖者であるアルトゥル=クルーズ=スリュードを神格化し、崇拝する宗教である。アルトゥル教は、大災厄前後に形成された宗教団体であり、その歴史の古さは、現状存在する宗教の中でも群を抜いている。だが、その実態は詳しく知られていない。信者は親族や知り合いを通じて増やす方法を使い、今日まで存続しえていた」

「場所に関しては書いてないか?」

「場所は…、総本山の場所は西方戦闘海域のエルトルフ海か、ヤーピン皇国の南方のグラジル海にある可能性が高い…そうです」

「グラジル海か…。そこならシュルツ氏の予言とも合致する」

「では、今後はそこを目指す感じですかね」

「だが実際にそこにあるとは限らない。ここは慎重に行くべきだろう」

「まぁ、すぐに行くわけではないので、計画だけはしておきましょう」

「そうだな」


 そういってトーラス補佐官は情報の整理のため、執務室を出て行った。

 静かになった執務室で、俺は椅子に座る。

 そして書類を眺めながら、あることを考え出した。


「どうしてクレバイルはヒルノ海上国家まで来れたんだ?」


 そう、先の戦闘においてクレバイルがヒルノ海上国家の国境線まで近づいてこれた理由だ。

 複数の理由が考えられるが、今のところ有力なのは三つ。

 一つ目は偶然である。たまたま哨戒していない場所を通ってやってきた。だが、これは少し考えにくいし、どうして防衛連盟の内部にまで接近してきたのかが説明できない。

 二つ目は哨戒範囲を徹底的に調べ上げての侵攻だ。これなら今までの侵攻の理由も説明しやすい。

 三つ目は哨戒艦の通信を傍受していることだ。今のところこれが一番可能性が高い。だが確証はなく、これを証明するにしても難しい。

 しかしながら、二つ目はいいとして、三つ目が行われていると考えた場合、こちらの情報は筒抜けになっている可能性が大だ。これは戦略上とても危ない。

 俺はその実態を把握するため、ひとまず関係者にあたってみることにした。


「というわけで、連合艦隊に編成される前の通信状況の確認をしているんですが」

「そうですか」


 頼ったのは、いつもお世話になっているルクシュー少佐である。

 そのルクシュー少佐に防衛連盟の通信状況を確認しようとしたのだ。


「とはいっても、通信手ではなかったので、なんとも言い難いのですが…」

「そうですか…」

「あ、でもジンブルグ大佐に聞けば何か分かるかもしれません」

「トーラスさんですか?」

「えぇ。あの人、前は小艦隊司令官でしたし、どんな状況だったか教えてくれるかもしれないですね」


 そうなれば、すぐにトーラス補佐官の元に向かう。


「何?防衛連盟の通信状況が聞きたいだと?」

「はい、お願いします」

「そうだなぁ…。通信機に声をかけると、そのまま別の通信機に声が届くという感じだな」


 つまりは、携帯電話と同じと考えてもいいだろう。


「その時に、何か音声を加工したりはしないんですか?」

「加工?いやそんなことはないな。ただ通信機間で声を送受信しているだけだな」


 となると、音声がそのままクレバイルに筒抜けという可能性が否定できない状況にある。

 これは早急に対策を講じないといけないな。

 俺はクレバイルが通信を傍受している可能性のことをトーラス補佐官に話す。


「…なるほど、それは考えたことがなかったな」

「連合艦隊だけでも対策をする必要があると思うんですけど」

「確かにそうだ。だが当てはあるのか?」

「まぁ、なくはないんですが…」


 そう、打開案はある。モールス信号だ。

 かの日本海海戦において、バルチック艦隊を発見し、いち早く情報を伝達したことで日本が勝利を収めたと言われている。

 そのモールス信号を連合艦隊に導入しようと考えているのだ。

 問題はモールス信号の符号をどうやって現地語に当てはめるかだ。

 一応言語に堪能なトーラス補佐官やジェイル大尉を据えて開発に乗り出したほうがいいかもしれない。

 それと、モールス信号の送受信機の製造もしないといけない。これは研究班に任せようかな。

 そんなわけで、早速研究班に制作を依頼しよう。


「ちょっと無理かもしれないですね…」

「えっ?」


 なんと断られてしまった。


「なんで?」

「いや…だってどんなものか分からないっていうのが一番で…」


 確かにそうかもしれない。送受信機だっていろんな技術を使っているわけだからな。一概に技術者といってもできることとできないことがある。


「そうなると、どうしたもんかなぁ…」

「それなら、クリファラン学園に行ったほうが早いと思いますよ」

「…それは考えてなかった」


 だが、誰に頼んだほうがいいだろうか。

 その時、脳裏に一人頼れそうな人が思い浮かぶ。


「そうだ、ホフキンス教授だ」


 そう、以前お世話になった量子(シュレディンガー)の能力を持つ学園の教授だ。

 彼なら、学園でモールス信号の送受信機を制作できる技術者がいるかもしれない。

 俺はすぐにクリファラン学園へと向かった。


「そんなわけで、送受信機を作れそうな研究室か製造所を教えていただきたいんですが」

「君は唐突だね」


 ホフキンス教授のもとを訪ねたが、早速小言を言われてしまった。


「まったく…。まぁ、君の頼みなら仕方ないか…。確かロディ研究室が電気電子関係の研究をしていたな。あと民間企業になるが、ターンドコム製造所が似たことをしていたはずだ」

「ありがとうございます、ホフキンス教授」


 ホフキンス教授に場所を教えてもらい、早速ロディ研究室に向かう。

 ロディ研究室では、電流や電磁石のようなものを使った通信技術について研究している。

 俺はそこに乗り込み、研究している学生や先生を説得し、どうにか研究を行ってくれることを確約してもらった。

 大まかな設計図を渡すと、今度はターンドコム製造所に向かう。

 そこでは、ロディ研究室で送受信機を研究してもらうから量産を依頼するということを頼みにいった。

 最初は難色を示していたターンドコム製造所側であったが、依頼料として具体的な金額を提示すると、次第に印象が変わってきたようで最終的には依頼を受けてくれることになった。

 こうして着々と準備を進めていく。

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