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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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56海里目 始まる年

 年が明け、創世歴1745年となった。なんだか一年があっという間に過ぎ去っていった感じはある。

 そんな俺は防衛連盟本部で開催される新年会合に参加していた。


「諸君、新年おめでとう。早速だが、今年こそ防衛連盟はクレバイルに対して正義の鉄槌を下すべく、大規模な作戦を決行することが昨年の参謀会議にて決定された。よって今年中には全軍に対して、クレバイルに大進撃する作戦に参加してもらう。これは20年に渡る戦争に終止符を打つためのものだ」


 そう演説したのは、防衛連盟軍総司令長官フリード・シュトロンハイム大将だ。

 俺は演説を聞きながら、今後の防衛連盟のあり方について考えていた。今後戦力を拡大していくことを目標にしていくことは明白として、問題はどこまで拡大するかにあった。

 戦艦を作るのはいいとしても、それを運用する戦術があるとは限らない。なぜなら戦艦と帆船では何もかもが違いすぎる。駆逐艦といい勝負をしているレベルだ。ならば駆逐艦を量産するべきかと思うが、そうとも限らない。もともと駆逐艦では、全体的な能力が低い。例えば通信や指揮系統の充実性などである。これは巡洋艦や戦艦の役割である。となれば、戦艦、巡洋艦、駆逐艦をバランスよく建造すればいいということになる。

 そうすると、戦艦1隻に対して巡洋艦が2~3隻、駆逐艦が10隻程度を一部隊として編成すればちょうどいいのかも知れない。

 そんなところまで考えたところで、新年会合は終わりを告げた。

 そのあとは立食パーティーである。


「それでは、防衛連盟の今後に乾杯!」


 今回の会食ではアルコールはない。もしもの時に酔っていてはいけないという配慮からだ。こちらとしてはありがたい限りである。

 俺は出された料理をガツガツと、しかし上品に見えるように食べていた。普段こんな料理を食べることなんてないからな。

 そんな俺の元に、ある人物がやってくる。


「やぁ」

「あ、ダリ中佐」


 俺が幾度となく頼ってきたダリ中佐である。


「最近の調子はどうだね?」

「悪くはないですよ」

「どうやら予算を確保したらしいからな。その方法を聞こうと思ったのだが」

「方法も何も、信頼を以って予算をくれたんですよ。それ以外ありませんから」

「ふむ、今はそうしておこう。それよりも先ほどの演説は聞いていたな?」

「えぇ、まぁ」

「まだこれは立案中の作戦なのだが、防衛連盟軍のほぼ全ての戦力を投入する総力戦を行おうとしている。その中には当然連合艦隊も含まれる」

「…ついに出動ですか」

「そうなる。それまでに十分に戦力を拡大しておいてくれ」


 そういってダリ中佐は去っていった。

 その後、俺の元には様々な役職のお偉いさんがやってきては挨拶をしていった。

 翌日。俺は朝から「天龍」の元に赴き、一刻も早く完成させるべく残っている艤装の建造を行う。

 しかし難しい所も多々ある。

 例えば重心の問題。現在使用している機関や兵装では、どうあがいても重心が上がってしまう。下手をすれば、駆逐艦でもトップヘビーになって転覆していたおそれがあった。現状そうなっていないのは、高圧になった液状魔力が想像していたより少し重かったことにある。それでも燃料がなくなってしまえば転覆の危険は高まってしまうが。

 どちらにせよ、重心が上がることは良くない。そのため、俺は「天龍」の艦底におもりを設置することにした。場合によっては緊急の燃料として使えるように、予備の液状燃料をおいておこう。

 問題はほかにもあり、それが主砲である。新たに開発しているものは上手くいっているのだが、これも耐久試験を行っているわけではないため、いつ破損するか分からない。これでは工業製品として失格かもしれないが、今は時間がないため、問題が発生したら逐次対応していくことにする。

 こうして、約2ヶ月の時間をかけて、軽巡洋艦「天龍」が完成となった。

 早速人員を配置する。この人員は駆逐艦4隻に勤めていた隊員から選抜することにした。訓練中の新入隊員でもいいかも知れないが、彼らは勝手を知らない。そのため、勝手を知っている隊員を「天龍」に勤務させ、新入隊員を駆逐艦4隻に振り分けることにした。


「というわけで公試運転のために『天龍』を出航させたいんですが」

「何がどういうわけだ。まぁ、許可してやらないこともないが…」

「じゃあ、明日から早速行ってきます」

「早くないか?」


 そんなトーラス補佐官の言葉も聞かず、俺は司令官室を飛び出していった。

 翌日になり、早速「天龍」の出航作業に入る。

 今回数日間をかけて「天龍」の公試を行うことを想定している。

 初日は問題なく各種試験をクリアしていった。

 しかし二日目…。


「司令、機関の調子が悪いようです」

「マジで?何かやらかしたかなぁ?」


 どうやら主缶機の調子が良くないらしい。まぁ、確かに「天龍」に搭載している主缶機は吹雪型と異なって大型化してるから、何らかの異常が発生してもおかしくはない。

 早速俺は、主缶機が設置してある艦後方に向かう。

 ゴォンゴォンと大きく鈍い、まるで衝突音のような音が響き渡っている。俺は能力を使って、問題の箇所の洗い出しを行っていく。


「ここまではよし、ここもよし。あとは…おっと、ここが問題だったか」


 問題を確認したのなら、すぐさま修理に取り掛かる。

 今回悪かったのは、魔力を回転する運動エネルギーに変換したあとに問題があったようだ。回転するタービンブレードのようなものと固定している壁との間でこすれていたようである。

 チャチャっと問題箇所を修理する。幸い、主缶機を停止せずに直すことができた。

 その後は問題なく公試を行い、無事にテラル島へと戻ってきたのだった。

 こうして「天龍」は正式に連合艦隊の戦力に加わることになった。

 早速「天龍」を含めた水雷戦隊の編成を行う。旗艦を「天龍」にし、追従する第十一駆逐隊を編入。これを第一艦隊第一水雷戦隊とする。

 こうなると、これまで指揮権を持っていた「吹雪」から「天龍」に委譲しなければならない。その他吹雪にある資料やら指揮系統やら全部「天龍」に移さないといけないだろう。

 そう考えた俺は、そそくさと行動に移る。まずは「吹雪」の艦長室に置いてある紙の資料などを移動させる。「天龍」には司令部としての役割を持たせるために、専用の部屋を用意している。とは言っても、士官の部屋を改造しただけに過ぎないのだが。

 何度か「吹雪」と「天龍」を行き来すれば、荷物の搬入はだいたい完了である。

 そんなある日、公試後の「天龍」の検査をしようと思い、彼女の元へ向かっていると、そこにはこそこそとしているミラの姿があった。


「だ…ミラ、なにしてるの?」

「あ、先輩。実はこの艦に少し興味がありまして…」

「興味っていうのは?」

「いえ、大層なものではないんですが…。あの、この艦って全部金属で出来ているんですよね?」

「まあ、そうだね」

「そこでお願いなんですが…」

「何かな?」

「ちょっとだけ中を覗いてもいいですか!?」


 ミラが少し興奮気味に言う。なにが彼女の心を動かしているのだろうか。


「まぁ、少しならいいかな」

「ホントですか!やったー!」


 ミラはテンションが上がって飛び跳ねている。

 この調子だと、そのまま迷子になりそうだ。


「ただし、俺がついていくからな。迷子になるなよ」

「大丈夫ですよ、そんな心配はいりません」


 本当かなぁ?いささか心配になる。

 そんなことはよそに、ミラはさっさと「天龍」に乗り込んでしまった。

 俺は彼女の後を追うように「天龍」へと乗り込んでいく。

 その後、ミラはものの見事に迷子になっていた。

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