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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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55海里目 補充と完成

 当初の予定と異なり、臨時予算の拡充と人員の補充が出来た今、連合艦隊は次なるステップに踏み出す。


「というわけで巡洋艦を作ります」

「何がどういうわけだ?」


 そばにいたトーラス補佐官に突っ込まれてしまった。


「別にいいじゃないですか。人員も補充できたし、お金の心配もある程度なくなったわけですし…」

「まぁ確かにそうなんだが…」

「というわけでちょっくら行ってきますねー」


 そういって俺は窓から飛び出していった。


「あっおい!書類は!?」

「後でやりまーす」


 そのまま俺は島の反対側にある建造用の埠頭へと飛んでいく。

 こちらのほうは残ったインフラの整備で作業員が何人かいた。そんな彼らの上を飛んで、俺は人気のない造船用船台へと降り立つ。

 早速俺は船台に船の背骨となる竜骨(キール)を設置する。

 今回建造するのは、軽巡洋艦の天龍型だ。大きさが駆逐艦のそれとは違う。

 そのため、今回は試行錯誤をしながら建造していくことになる。「吹雪」の時と同じだな。

 だが、大きさが違うだけで、船体の構造はほぼ同じだ。駆逐艦を建造したときの経験を使うべきなのだ。

 とはいっても今日一日ですることは少ない。少なくとも竜骨を設置して大まかな大きさを測定するくらいである。

 その日戻ると、これまで積まれていた書類と一緒に、防衛連盟本部に対して「天龍」建造の旨を伝える書類を作成した。これを提出して連合艦隊の戦力拡充を報告する。

 翌日も船台に向かい、「天龍」の建造に勤しむ。

 この日は船体構造の建造をするとき、これまでは薄かった側面装甲もだいぶ厚くなってくる。いじるときは慎重にならないと最悪の場合破損する可能性もある。そうはならないようには注意してはいるが。

 船体構造を建造したら、次は上部構造物の建造に移る。吹雪型とはまた異なる艦橋や煙突など、新しく作るものは多くある。

 特に主砲はまた新しく作る必要がある。確か主砲の口径は14cmだったな。単純に大きくすればいいかな?

 そんなことを考えつつ、「天龍」を建造していく。

 こうして11月上旬、大まかな船体が出来たところであるニュースが防衛連盟を駆け巡る。


「クレバイルの侵攻…!?」


 俺はその報を朝起きたところで聞かされる。


「そうだ。西方戦闘海域から約10隻が進軍中との報告が上がった。現在リクア共和国の海軍が対処に当たるそうだ」

「ちなみにうちは?」

「現状待機だ」

「ですよね…」


 予想通りであった。


「だが、待機とは言っているが、追加で命令が下っている」

「なんです?」

「何かあったときのために出動できるように準備をしておくこと、だそうだ」

「準備…ということは、もしかしたら」

「可能性は無きにしも非ずということだろう」


 これはワンチャンあるのでは?


「だが我々の存在意義を忘れないようにな。あくまで現状の連合艦隊はヒルノ海上国家の防衛なんだから」

「はーい…」


 そんなわけだから、この日は一日出撃待機状態でいた。

 だが、地味に連合艦隊史上初めてとなる実戦である。隊員の表情も少しばかり固い。

 そんな中、「吹雪」の艦橋で待機中の俺はものすごくのんびりとしていた。


「カケル司令、もう少し緊張感を持ってくれないか」

「そうですけどぉ、なんか実感が湧かないんですよねぇ」

「それはカケル司令が軍人に成りきれてないからだろうな」

「それに『天龍』の建造も途中ですし、そっちのほうが気になりますよ」

「まったく…」


 そんなこんなで14時間が経過したところで、待機が解除された。

 どうやらクレバイルの偵察のようであったらしく、リクア共和国の対処で何とかなったようだ。


「しっかしリクア共和国も大変ですね」

「何がだ?」

「敵の本隊がバンイ帝国にあるでしょう?なら対処するのは毎回リクア共和国になりますよね?」

「まぁ、それが防衛連盟のあるべき姿だろう」

「そうですよねー…」


 だがリクア共和国が担う海域は決して小さいものではないはずだ。それは地図を見れば分かる。

 それに毎度毎度同じような場所から出現するのも気がかりだ。クレイル連邦からも出撃してもよさそうな気もするが、そのあたりの真意はどうなのだろうか。

 それはいったん置いといて、俺は「天龍」の建造を続けていた。

 そんな中、いよいよ入営試験の合格者がテラル島にやってくる。今回の合格者は33人、技術者の枠も含めての人数だ。当初より数人ほど多くなったものの、人がいるに越したことはない。


「ようこそ、防衛連盟理事会直轄独立統合戦術機動部隊、通称連合艦隊へ。私はここの司令官である海原だ。諸君らはこれから連合艦隊の一員として、その身をもって防衛連盟に尽くすことを期待する」


 それからは、テラル島の兵学校に案内した。ある種の掘っ立て小屋だが、彼らが生活するには十分な建物を用意している。その横には学び舎となる学校を併設している。


「これから諸君らにはここで寝食を共にしてもらう。文句の一つもあるだろうから、もし何かあれば遠慮なく言ってほしい」


 こうして、連合艦隊初の新入隊員が誕生したのである。ここの指導者は経験豊富なルクシュー少佐、たまに俺となった。

 それから時間が経ち、いつの間にか12月に差し掛かろうとしていた。新入隊員達も日々の訓練でいい感じに仕上がっている。

 そんな中、「吹雪」建造時より時間はかかったものの、ついに「天龍」の進水式を迎えた。この日のために、防衛連盟本部から来賓が訪れ、テラル島はこれまでにない賑わいを見せていた。

 この日に合わせてインフラを整備してくれた業者の方々には感謝しかない。

 そして式典が始まる。まずは防衛連盟本部副参謀フィディー・ハウザー少将から挨拶だ。


「本日はこのような式典に招待いただき、大変光栄に思う。さて、防衛連盟は連合艦隊の戦力拡大に非常に関心を持っている。それはすなわち、防衛連盟全体の戦力拡充につながるからである…」


 こんな挨拶をいくつか行い、いよいよ「天龍」を進水させる。

 この日のために調達したシャンパンを、俺が艦首の縁に添える。俺はシャンパンを振りかざし、艦首に思いっきり当てた。

 その勢いでシャンパンは砕け散り、船台が動き始める。

 こうして「天龍」は進水を果たしたのだった。

 式典はここで終わり、この後は「天龍」を近くの埠頭まで運ぶ。次の作業は艤装の設置だ。

 ここで本格的に主砲の開発を行う。吹雪型をそのまま拡大したものと捉えていいかも知れないが、それによって不都合が起きると、今後が面倒になる。ここはおとなしく主砲の開発をしておくのがいいだろう。

 早速、テラル島の北部に射撃試験場を整備する。もちろん、そこに通じる道も作った。

 しかし、主砲の開発なんて「吹雪」の建造時以来やっていない。これは気合を入れてやるしかない。


「さーて、やるぞぉ」


 そんな感じで開発を続けていると、いつの間にか年越しである。寒くないかたそんな感じはしないのだが。

 連合艦隊での年越しは初めてであるため、仮庁舎では年明けに向けていろいろと準備が進められていた。


「そろそろ仮庁舎では手狭になってきたな。本庁舎に移るか?」

「そうですねぇ…。今は年明けの式典で忙しいですから、それが終わってからですねぇ」


 年の瀬は次第に更けていく。

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