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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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54海里目 確保

 10月某日。

 このくらいの時期だと比較的涼しくなるのだが、残念ながら赤道直下であるこの地域は関係ないことである。

 そんなある日のこと。

 俺は防衛連盟本部へと赴いていた。


「再びご足労いただきありがとうございます」

「今日はどのような要件で?」

「前回お話した予算の話で続きがありまして…」

「ほう。どんな話でしょう?」

「…防衛連盟に多額の寄付金が寄せられました。単年度予算の2%にも及びます」

「すごい額が集まりましたな」

「はい。よって防衛連盟に臨時の予算を編成することができます。当面はこの寄付金を給付しようと考えています」

「ありがとうございます」

「本当に、こんな金額どこから湧いて出てきたのだか…」

「以上で話は終わりですか?」

「あぁ、あと一点だけ。入営希望者が続々とヒルノ海上国家に集まっているようです。早めに対処をお願いします」

「予算が確保できたのですぐにでも動きましょう」


 俺は内心嬉しくなりながらテラル島に帰る。

 予算の確保が出来たところで、早々に次の行動に移る。


「入営希望者、か…」


 人が入るのはありがたいのだが、ただの一般人がそのまま入るのは、戦力として少々問題が残る。

 もし、退役軍人ならば多少の訓練で何とかるだろうが、これがただの一般人になると話は変わってくる。

 となると兵学校を作ったほうがよいだろう。だが誰を教師におけばいいかわからないもんだ。ここは経験豊富なルクシュー少佐に頼もうかな?

 ていうか兵学校で教えるほどのことはないんでは?


「まぁ、あとで考えるか…」


 それに入営希望者も何とかしないとな。

 ここは素直にトーラス補佐官に相談だ。


「なるほどな。兵学校を設立したいと」

「そうなんですよ。これまでとは一線を画す艦隊なもんですし、ここは一から教育する必要があるのではと思うんですよ」

「確かに、一理あるな」

「予算の確保も出来たわけですし、ここはやるべきだと思うんです」

「そうだな。ではそのようにこちらも動くとしよう」

「ありがとうございます」

「それと入営希望者の選定方法なんだが、いくつかの身体測定とテストを課すのはどうだろうか」

「そうですか…」

「これは防衛連盟基準で考えてもいいかも知れないな」

「分かりました。その方向で行きましょう」


 こうして、トーラス補佐官が主導となって入営試験が整えられていく。

 そして翌月。すべての準備を整え、いよいよ試験を執り行う日がやってきた。

 ちなみに試験を行うと防衛連盟各国にアナウンスしたところ、100人以上もの応募があった。今回の募集はおおよそ30人程度であるため、大幅に超えてきたのは正直驚いた。

 ヒルノ海上国家から出る定期便には多くの人であふれていた。今回の会場であるテラル島に向かう人でいっぱいなのだ。


「止まらないでくださーい、流れを止めないでくださーい」


 なぜだか分からないが、俺も案内スタッフとして駆り出された。トーラス補佐官曰く、人手不足らしい。

 そんなこんなで、テラル島の運動場。ここに入営希望者に整列させる。

 その彼らの前に俺が出ると、騒がしさが一瞬で静まった。


「みなさん、おはようございます。私が連合艦隊司令の海原です。本日は連合艦隊入営試験ということでお集まりいただきありがとうございます。これから一次試験のほうを始めていきたいと思います。まずは各々が持っている受験番号の順番に合わせて順番に身体測定を行っていきます」


 そういう感じでぞろぞろと移動させていく。

 今回の身体測定は、基礎体力を調べるためにいくつかの試験を盛り込んでいる。

 こんな感じで半日を費やして、全員分の身体測定を終えた。

 夕方、再び運動場に集合させる。


「本日はお疲れさまでした。合格不合格にかかわらず通知します。以上で解散とします」


 こうしてテラル島の長い一日が終了した。

 その日の夜から合否確認の作業をしている中、俺はふと疑問に思う。


「なんで学力テストからじゃなくて、身体測定からなんですか?」


 そう、普通なら学力を測るのが先だろう。実際、防衛大学校もそうだし。


「確かにそのほうが最も手っ取り早いかも知れないな」

「でしょうね」

「だがそうはいかないんだな、これが」

「というと?」

「防衛連盟では一般の兵は頭脳より体力を必要とする。頭脳を使うのは上層部で十分だ」

「…つまり艦橋にいる人間以外は命令を聞ければそれでいいってことですか?」

「そうなるな」


 確かに、考えてみれば帆船の内部は力仕事が中心の現場である。そこで頭脳を持っているのは上層部からしてみれば、いささか不都合が生じる場面もあるのだろう。例えば反乱を指揮する兵士が出てくれば、上層部はたまったものではない。

 そう考えれば体力テストを最初に課すのは理にかなっているものと考えてもいいだろう。

 そんなことを頭の片隅で考えつつ、俺はトーラス補佐官と事務官とともに今日の試験結果を整理していた。

 数日後、合格者の通知を送付し、一仕事を終えた。


「ぬぁぁぁ…、疲れたなもぉぉぉ…」

「さて、次の仕事だ」


 そういってトーラス補佐官は書類の束をどっさりと持ってきた。


「ここ数日は試験で時間をつぶされていたからな。早めに提出してくれよ」

「そんなん早くいってくださいよぉ…」


 俺は半べそをかきながら書類と格闘した。

 その内容には連合艦隊兵学校設立に関するものも含まれていた。


「トーラスさん、結局のところ兵学校の件はどうするんですか?」

「あぁ、そうだな。現状は各艦長が講師をするという感じで調整している。ほかに足りない所はカケル司令の能力を借りることになるだろうな」

「俺の能力を借りる程のものって何ですか…」

「まぁ、主に道具類だろうな」


 トーラス補佐官はあくまで冷静に答える。ここでも俺に拒否権はないのだろうか。

 そんなことを心の中にとどめながら俺は書類を片づけていた。

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