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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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53海里目 歓迎、対談、誘致

 9月が始まったある日。

 テラル島には、かつてのトルカチョフ研究室のメンバーがいた。目的はもちろん、連合艦隊での研究を行うためである。


「何度目か分からないけど、ようこそ連合艦隊へ」

「…改めて考えてもすごいことですよね、これって…」

「そうか?まぁ自由にやってもらえればいいよ。一応住み込みなんだし」


 そう、彼女たちはここで暮らしながら研究を行うことになる。

 それに合わせて、食料や日用品の確保をするため、定期船にこれらを積み込む必要が出てきた。こうなってくると、一つの事業で成り立ってくるような感じではあるな。


「ほかに必要なものとしては、機材の搬入だったっけ?」

「はい、そうです」

「これは研究室にあったものを流してもらうように学園側と話をつけてきたから問題ないとして…。ほかに必要なものがあるなら早めに言ってね」

「あのぉ、せ…、いえ、司令官?」

「なんで疑問形?」

「あ、いや。なんてお呼びしたらいいのかなぁって…」

「あぁ、なんでもいいよ。今まで通りでも、司令官でも」

「じゃあ…。先輩って呼びます」

「うん、このほうがしっくり来るね」

「そうですね。…このやりとり、前もしませんでしたか?」

「そうだっけ?忘れたなぁ」

「もう、先輩ったら。ふふっ」


 端から見れば、なんだか初々しいカップルのような感じである。実際、ほかの研究室のメンバーがそんな感じの目で見てきている。

 こうして彼女らはテラル島で生活をすることになったのだ。

 とはいっても生活の基盤が弱いテラル島では、彼女たちの居住スペースがない。前日に仮設のプレハブ小屋を建設したが、これでよかったのだろうか。

 この話題はひとまず置いといて、彼女らにテラル島の案内を行う。これからここで生活するわけだからな。

 それが終わると、俺は司令室に戻り、トーラス補佐官とともに今後の方針をまとめる。


「だから、労力が足りないと言っているだろう。これでは許可ができない」

「そこを何とか…。でないと今後の艦隊運用に問題が発生するかもしれないんですよ」

「だからって…、そんな急に言われてもなんともできないだろう」


 結局は人員の不足ということで許可が下りなかった。

 何とかこの状況を打破しないと、連合艦隊とは名ばかりの駆逐艦4隻のみを運用する名前負け艦隊になってしまう。それだけは絶対に避けなければならない。

 こんな時に頼るのはあの人しかいないだろう。


「それで私を?」


 そう、ダリ中佐だ。


「そうなんですよ。今後クレバイルとの戦闘があったとしても勝てる可能性は低くなりますよ」

「そうはいってもだがなぁ…。こっちとしては予算の都合もなるわけでな…」

「そこを何とか!」

「うぅむ…、私の一存ではなんとも言えないのだが…」

「じゃあどうすればいいんですかね?」

「そうだなぁ…。まず一般人に対して連合艦隊の活動を知ってもらうことが第一歩だろう。我々は防衛連盟に属する国民の税金で成り立っているわけだからな。そのためには広報活動が必要になるのだが…」

「でも広報なんてどうすればいいんでしょうか?」

「地道なロビー活動に限るだろうな」

「そんなぁ…」


 今後の方針が地道なロビー活動によって決定づけられるというのだから大変である。これには俺も頭を抱えた。

 だが状況は翌日に一転する。


「カケル司令、ちょっといいか」

「なんです?」

「実はだな、ぽつぽつと防衛連盟本部に連合艦隊についての問い合わせが来ている」

「マジっすか?」

「どうやら、連合艦隊への入営を希望する声がいくつかあるそうだ」

「これはキタのでは?」

「まぁ、そうだな…」


 俺はさっそく防衛連盟に連絡を入れる。もちろん、入営希望の人を受け入れることと、予算を拡充してもらうことを頼むのだ。

 その場で返事をもらうことはできなかったが、代わりに防衛連盟本部で緊急の会合を入れることができた。

 数日後、俺とトーラス補佐官は防衛連盟本部に向かう。

 そこで担当者と合流し、会議室に案内される。


「さて、本日はご足労いただきありがとうございます」

「いえ、問題はないですよ。必要なことなので」

「そうですか…。では本題に入らせていただきます。本日の内容は人員の補充についてと、臨時予算の確保という話ですね」

「えぇ」

「人員の補充については、現在各国から相次いで連合艦隊の問い合わせが来ている状況です。もし、そちらの受け入れが可能であるならば、すぐにでも案内可能でしょう」

「なるほど」

「もしそうなった場合、本部は仲介役となるだけでそれ以降のことは連合艦隊に一任します」

「分かりました」

「もう一つの方ですけど、予算は現在上限いっぱいであるため、これ以上の増額は認めることはできません」

「そこを何とかできませんかね?」

「と言われましても…。現在なんとも言い難いところですね…」

「どうすれば増額してもらえますか?」

「増額も何も、これ以上余裕がない以上、予算は割り当てることはできませんよ」

「そんなぁ…」

「でも、多額の寄付が入れば話は別ですけどねぇ」


 最後に担当者がぽつりとつぶやいた言葉が、俺の耳に強く残った。

 多額の寄付…。寄付があれば何とかなるものなのか。

 その時、俺の頭にある考えがよぎる。


「そうか…これならいけるかも…」

「何か言いましたか?」

「あ、いえ何も」


 俺が思いついた考え、それは複数人の貴族から支援として寄付金を募るというものだ。

 ロード演習作戦の際、様々な貴族や富豪と対面していた。そのため面識のある彼らに対して何かしらの対価を持ち掛ければ少しは寄付を募ることができるかもしれない。

 そう考えた俺は、防衛連盟本部をあとにすると早速行動に移す。

 とはいってもやることは一つ、手あたり次第に寄付をお願いする手紙を書くのみである。

 内容を簡単にまとめると、「お金くれたら特別な待遇をしてあげるかもしれないよ」という感じだ。

 簡単ではあるが、効果は期待できるかもしれない。


「本当にこんなのでいいのか?」


 手紙を書く作業を手伝ってくれたトーラス補佐官が聞く。


「いいんですよ。これで食いついてくれれば御の字なんですから」

「うまくいかないだろう、これは…」


 そんなトーラス補佐官の心配をよそに、俺は次々と手紙を量産していく。

 そして出来上がった手紙の山を、それぞれ宛名を変えて郵送する。早ければ1週間で到着するだろう。

 それとあわせて、各国宛にも手紙を出す。もしかしたら特別予算を編成してくれるかもしれないからな。

 しかし、ここまでの行動を思い返すとゲスの考えていることしかやってない…。他人の金を使って自分の都合の良いように使うとかなおさらである。


 そんなことを思いつつ、数週間後。

 なんと手紙の返事が来た。差出人はヤーピン皇国だ。

 その内容を要約してみると、「お金あげるから技術ちょうだい」というものだった。

 技術を要求されると、何を開示していいものか分からないものだ。


「うーん…。何かいい感じの技術ってあったかなぁ…?」


 そう考えてみると、連合艦隊にある技術というのはほとんど外に出ていないものでいっぱいである。

 単に公開していないだけなのだが、逆に言えば公開する場がないともいえる。

 それにせっかくの連合艦隊という名前もついてるし、何か情報を流してみるのもいいだろう。


「何を流すかが問題だよなぁ」


 事実、現在までに外部に流出している情報はつい先日まで所属していた元トルカチョフ研究室の鉄鋼材料と、艦艇の見た目ぐらいである。つまりほとんどないわけだ。

 なら何を流しても問題はないだろう。

 というわけで、ヤーピン皇国には駆逐艦の船体構造についての情報を共有させる。

 もちろん、この世界でも似たような船体構造をしているだろうが、俺が情報を渡すのは、船体材料が金属でできているものだ。

 すなわち、連合艦隊とヤーピン皇国が協力しないと完成できないようなものを流す。これによって、互いに技術力が向上すると考えられるだろう。かなり希望的観測ではあるが。

 俺は早速返事の手紙をしたためた。

 その後も、ちらほらと返事が返ってくる。そのほとんどはヤーピン皇国と似たような返事であった。

 もちろん、それぞれに必要な情報や技術を供与する約束にした。

 だが、ここで一つのことに気が付いた。


「これ、何股もかけてるクズ野郎じゃん…」


 冷静に考えてはいけないかもしれない。

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