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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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50海里目 帰還

 気が付けば、俺はベッドで横になっていた。いつの間にか寝ていたらしい。朝日がまぶしく部屋の中を照らす。

 寝ぼけた頭で、俺はベッドから出ようと上半身を起こそうとした。だが、それを拒むように体は重い。まるで何かが体にまとわりついているような感じである。

 何かと思い、目線を横に移してみると、まさに俺を抱き枕のようにしてがっつり抱いて寝ているサラがいた。

 それに驚いた俺は、サラの腕を振りほどいて飛び起きてしまう。


「…ぅん?」

「サラ、起きた?」

「…!なんでアンタがここにいるのよ!?」

「なんでって…、昨日あんなに酔っぱらってたし、なんかほっといたら大変になりそうだったし…」

「~!だからって、もうちょっと何か方法があるでしょうよ!」

「理不尽じゃない?」

「知らないわよバカッ!」


 これは俺が悪いのだろうか?

 そんなことを考える間もなく、サラに部屋から追い出されてしまった。

 仕方なく俺はダイニングに向かう。そこにはアスナさんが朝食の準備をしていた。


「あら、カケル。おはよう」

「おはようございます、アスナさん」

「昨日はどうだったの?いい夜を過ごせた?」


 アスナさんはいたずらそうに尋ねてくる。


「そ、そんなんじゃないですよ…」

「まぁ、別になんだっていいんだけどね。もし何かあっても、カケルなら信用出来るし」

「それは素直によろこんでいいのやら…」

「それに防衛連盟の司令官の玉の輿になれるなんてこれ以上のことはないよ」

「まさかそれが本音じゃないですよね?」

「あっははは!なんでもいいじゃない。仲良くしているならそれが一番じゃない」


 なんだか煙に巻かれた感じがする。

 そのあと、リフレット一家と朝食をとった。その時はサラの機嫌はまだ若干悪いままだった。

 朝食を終えると、俺はトーラス補佐官のもとに行くためにリフレット一家を離れる。


「またお別れになってしまうな」

「そうですね…」

「カケルなら大丈夫よ」

「そうそう、兄ちゃんなら大丈夫!」

「そうだな。カイ君も頑張って飛竜使いになるんだぞ」

「もちろんだよ!」


 そんな感じで挨拶をかわしていく。若干一名を除いて…。


「ほら。サラもいつまでも拗ねてないで」

「拗ねてない」

「まぁ、いつも通りっちゃそうかもしれないですけどね」

「…分かってるわよ。大丈夫」

「それじゃあ、サラ。またな」

「うん。…またね」


 サラの挨拶を聞いた俺は、そのまま駆け出していく。


———


「…大丈夫かな?」

「少し心配ですね…」


 彼の背中を見送ったリフレットとアスナはそうつぶやいた。その顔は、わが子を見守る親のようであった。


「大丈夫よ、カケルなら…。アイツはどんな壁でも乗り越えていくから」


 二人の発言に呼応するように、サラがぽつりと言う。それはまるで、彼のことを知っているかのようであった。


———


 俺は仮設住居区の入り口に向かう。そこにはトーラス補佐官がいた。


「来たか、司令」

「トーラスさん、お待たせしました。昨日は大丈夫でしたか?」

「あぁ…。まぁ、確かに散々ではあったがな…」

「とにかく行きましょうか。向こうに待たせてはいけないですからね」

「うむ、そうだな」


 そういって、俺たちは用意されていた車に乗り込んでいった。

 数十分後、俺たちはレンペルス城に到着する。そこで待っていたのは、シドマ国王であった。


「待っていたぞ。さぁ、こちらだ」


 シドマ国王に案内されるがままに、城内を移動する。案内されたのは、そこそこ大きめの部屋だ。

 行うのはもちろん記者会見である。既に報道関係者が詰めかけており、部屋の中はそこそこの熱気に包まれていた。

 シドマ国王はそこに入っていく。俺もその後ろをついていく。


「待たせたな。これより共同記者会見を行おうぞ」


 こうして記者会見は始まった。


「連合艦隊の司令官とは流浪者としての頃からの知り合いである。彼は当時から真面目であり、それは今も続いている。これは素晴らしきことだ。そしてこれは連合艦隊の組織としての意識にまで至っているのだ。これは称賛されるべきことである。我々はそれを鑑みて、連合艦隊と協定の締結に至った…」


 こう言っているが、内容は至って簡潔である。

 俺は信用に値する、と。

 この後は俺も喋った。


「本日はお集まり頂きありがとうございます。我々は連合艦隊として、防衛連盟の強力な剣として今後も続けていく所存であります。さて、本日は…」


 こんな感じで簡単な演説を行った。

 これが終わると、あとは連合艦隊の出発のみである。

 ラガスーロ海軍基地に戻った俺たちは、シドマ国王の見送りを受けていた。


「ここでひとまずお別れであろう」

「そうですね」

「だがすぐに会えることもかなうだろうぞ」

「はい。お世話になりました」


 こうして、連合艦隊はシドラール国を出発することになる。あとはヒルノ海上国家へ戻るのみだ。

 その道中、旗艦の「吹雪」では司令部の人間が一同に会していた。


「さて、いよいよテラル島に帰還する。ここまで防衛連盟加盟国すべてと協定を結ぶことに成功した。これは喜ばしいことである」

「ここまで来るのに苦労…はあまりしませんでしたね」

「ランスエル公国が一番難関ではありましたが」

「どちらにせよ、よい成果をあげたことには変わりないだろう。残りの航海も気を付けていこう」

「はい」


 残りの航海はもちろん訓練に費やす。いつもの砲撃訓練に加え、今回は水雷射撃訓練も行った。これには人数がいないために、砲塔にいる隊員を順番に訓練させる。

 水雷射撃訓練は実験の意味も込めて行う。今後の戦術の幅を広めたいのが目的なのだが、帆船相手に魚雷を使うのも気が引ける。一方で陽動にも使えるかもしれないという淡い期待もある。だがどちらにしてもコストがかかるのは間違いないだろう。


「どうしたらいいんだろうなぁ…」


 俺は強く悩んでしまった。

 誰かに相談しようにも、魚雷のことは自分くらいしか分からない。そのため、どのようにするか、そもそも魚雷を採用するか否かまで考えないといけない。


「面倒だなぁ…」


 これはテラル島に戻ってから検討しなければな。

 こうしているうちに1週間が過ぎていった。ついにヒルノ海上国家へと帰還する日がやってきた。


「ようやくテラル島ですよ」

「あぁ、ようやくロード演習作戦も終わりになるな」

「戻ったら次の艦艇の建造も考えたいなぁ」

「その前にクリファラン学園を卒業しないとな」

「うっ…、分かってますよ」


 テラル島の港に入ると、その港の変わり具合に驚く。

 港のそばには立派な建物が並び、埠頭は整備が行き届いていた。

 埠頭に接岸すると、ジェイル大尉たちが出迎えてくれた。


「お帰りなさい、カケル司令」

「ただいまです。…だいぶ変わりましたねぇ」

「そうですね。本庁舎はほぼ完成、埠頭の設備もあと数か月以内には出来上がると思いますよ」

「おぉ、それは楽しみですね」

「それとムクーティー中佐がお見えになっています」

「ダリ中佐が?俺に?」

「はい」


 なんの用事だろうと思いながら仮庁舎の応接室に向かう。

 応接室の扉を開くと、そこにはまるで我が家のようにくつろいでいるダリ中佐の姿があった。


「おぉ、久しぶりだな」

「ダリ中佐、いきなりどうしたんですか?」

「いや、君が今日帰ってくると聞いてな。こうして帰還を祝おうと思ってきたのだよ」

「こっちは戻ってきたばっかりで忙しいんですけど」

「いやはや申し訳ない。こちらも時間を開けて伺おうと思ったのだがな、予定が詰まっててできなかったのだよ」

「はぁ…」

「まぁ、そんな露骨に嫌がらなくてもいいではないか」

「…ま、いいですけど」


 話の内容はただの雑談であり、今回の演習作戦の様子を積極的に聞いてきたりする。

 俺はその話に軽く答えていくだけだった。

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