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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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49海里目 帰郷と宴会

 ランスエル公国を出発しておよそ一週間。

 俺たち連合艦隊は、まさに始まりの地とも及べる場所へと向かっている。


「久しぶりですね…シドラール国」

「あぁ、そうだな」


 艦橋で黄昏ている俺に、トーラス補佐官が相槌を打つ。

 ハジーサ島からずっと一緒にいたトーラス補佐官にとっても、シドラール国は何か思うところがあるのだろう。

 向かう先はもちろん、王都のあるラガスーロ海軍基地だ。

 昼間のうちに入港しておきたかっものの、天気の関係でそれは叶わなかった。

 天気が回復した夕方にようやく入港できた。そこには、あの時と同じように関係者が埠頭に並んでいる。しかし、当時と違うのは出迎えの理由だろう。

 埠頭に係留すると、桟橋がかけられた。そこから俺たちが降りると、見たことのある男性が迎える。

 シドマ国王である。


「久しぶりであるな、カケルよ」

「お久しぶりです、シドマ国王」


 そういって俺とシドマ国王は固い握手をかわす。


「今日は疲れたろう?宿はとってある。今日は十分に休むがよいぞ」

「ありがとうございます」


 この日はそのままホテルのほうに直行した。これまでならラガスーロ海軍基地の宿舎で寝泊りしていただろうが、今の状況ではそういうわけにもいかなくなったのは仕方のないことだろう。

 翌日、王宮に出向いた俺たちは、早速シドマ国王たちとの対談を行う。


「改めて…。久しぶりであるな、カケルよ」

「はい。半年ほどしか経ってないのに、だいぶ時間がたったような感じがしますね」

「本当だな。あの時とはだいぶ関係が変わった感じはあろうぞ」

「それでも、あの時にシドマ国王がいなければ今の自分はいないでしょう」

「うれしい限りであるな」


 このあとは軽く雑談をして、事務次官級の会合に入っていった。

 その間は、もちろん俺は必要のない人間になる。その間を使って、ある場所に向かった。

 その場所は王都の郊外にある。外見は簡易的な建物が並んでいるのが特徴的であった。

 ここはシドマ国王に教えてもらった場所で、俺にも(ゆかり)のある場所である。


「ここが、ハジーサ島民の居住区…か」


 そう、移住してきたハジーサ島の住人が暮らす仮設住居がある所だ。

 車から降りて住居の様子を見ていると、それを遠目に見ていた島民が俺の姿を見つけたようだ。


「あれ?カケルか?」

「あら、ほんとだわ」


 そんなことを言いながら、次第に周りに島民が集まってくる。

 みんな口々に様々なことを言っていて、よく聞き取れなかったものの、それは感謝の言葉が多くあった。


「カケルか?久しぶりじゃな」

「あ、島長さん!」


 俺に声をかけたのは、かつてハジーサ島で島長をしていたベイエルさんである。


「ワシはもう島長なんていう人間ではないわい。この居住区の代表じゃよ」

「島長から村長になったんですね」

「あながち間違いではないがの」


 そういってベイエルさんは笑った。

 すると、そこに聞いたことのある声が聞こえてくる。


「カケル君!」

「リフレットさん!お久しぶりです!」


 リフレット一家である。


「アスナさん、カイ君も!」

「兄ちゃん、久しぶり!」

「あらあら、こんなにも立派になっちゃって」

「そんな変わってないですよ」


 そんな取り留めのない会話をかわす。もちろん彼女のことも忘れない。


「久しぶりだね、サラ」


 そう、彼女とはサラのことである。別れ際に大胆な行動をとったおかげで今でも忘れられない。


「久しぶりね、カケル」

「あれからどう?何かあった?」

「そうね、お父さんから飛竜使いの皆伝されたくらいね」

「おぉー、それはすごいじゃん」

「アンタの方がすごいじゃない。アタシなんてまだまだよ」


 俺がいない間にも、みんなはそれぞれの道を進んでいっていることを強く感じる。


「どうだ?せっかくだし今日はゆっくりしていかないか?」


 リフレットさんからそんな提案をされる。

 しかし、そういうわけにもいかない。俺には会合の件があったりするわけで、王宮に戻らないといけないのだ。

 一応トーラス補佐官にアイコンタクトをする。

 だが、帰ってきた返事は意外なものであった。


「いいんじゃないか。いわゆる里帰りみたいなものだし、今晩くらいはゆっくりしていくといい」

「えっ、本当にいいんですか?」

「あぁ、国王陛下も既に承諾済みだ」

「…根回しですか」

「人聞きの悪いことを言うな」


 どっちにしろ、このように言われているのだからありがたく受け取っておこう。

 こうして俺は、ハジーサ島仮設居住区で一夜を明かすことになった。

 時間は少し過ぎて夜。仮設居住区にあるベイエルさん宅兼集会場にて、宴会が執り行われた。宴会とはいっても、飲み物を手にして立ち話をするだけの簡単なものであるが。しかし、それだけであっても、会話に花が咲くというものである。

 話の内容は、近況報告から思い出話まで幅広かった。特に最近のハジーサ島を取り巻く状況については話が盛り上がる。


「…でね、ライディったら張り切りすぎちゃってさ」

「その話はもうよしてくれ…」

「だっはははは!あれは傑作だったなぁ!カケルにも見せてやりたかったよ!」


 宴会というよりかは暴露大会のようになっているが、かまわず話は進んでいく。

 皆の酔いが回ってきたところで、リフレット一家のもとに行く。もちろん、詳しい近況報告をするためである。


「それでどうだい?指揮官の仕事は?」

「慣れれば案外楽しいものですよ。その分大変なことも多々ありますが」

「そうか、それはいいことだ。自分たちもそれなりに変化があったさ」

「そうなんですか?」

「もちろんだとも。さっきも聞いたかもしれないが、サラがが飛竜使いの皆伝を得たし、カイに至っては半人前の飛竜使いになったところだね。二人とも頑張っているよ」

「そっかぁ、カイ君もサラも頑張ってるんだなぁ」

「俺も兄ちゃん見たいになりたいからな!」

「俺のようにはなれないかもなぁ」

「ほんと、カイがそんなことばっかり言うから大変よ」

「いやいや、サラだって一人前の飛竜使いになれたんでしょ?」

「そんなの努力すれば誰だって慣れるでしょ」


 俺がサラの努力を褒めると、彼女はまるで当たり前のように切り返す。

 その流れを見ていたリフレットさんが、ふいに口をはさむ。


「はははっ、確かにサラは頑張っていたさ。でも、俺だっていろいろ頑張ったさ」

「そうなんですか?」

「そうだとも。なにしろ俺が聞いたことある中では女性の飛竜使いは聞いたこともない。そもそも俺がサラに飛竜使いにさせようとしたときも周りからものすごい反対されたものさ」

「お父さんそれ何回目よ?」

「そうなんですか?リフレットさん?」

「あぁ、そうだとも。だからサラにはこれからも頑張ってほしいんだ」

「もー、お父さん酔ってるでしょ?」

「酔ってないさ。まだまだ飲めるぞぉ」

「飲みすぎよ。もう今日は飲み終わりよ」


 アスナさんに忠告されて、リフレットさんと共に宴会場を後にする。

 そこに残された三人は、出されている料理をつまんでいた。


「何か飲み物持ってくる?」

「そうね、水でいいわ」

「あいよ」


 そんなことをしている間に、俺はある考えをしていた。

 これは前から考えていたことだが、ドラゴンを艦に搭乗させて水上機代わりにするというものだ。ドラゴンなら垂直離着陸が可能である。それにサラ達のDPドラゴンパートナーなら駆逐艦の後部甲板でも搭載可能だ。デメリットがあるとすれば、ドラゴンも生物である以上、餌や世話が必要であることだろう。これは航空機でも変わらないものであるが。


「ちょっと、カケル?何考え込んでるのよ?」

「ん、いや。今後の連合艦隊の方針を考えててね」

「カケルもそんなこと考えるのね」

「なんか心外だな…」

「でもそうね。カケルはそういう立場の人になっちゃったのね」


 サラがしんみりにそう言った。

 俺がサラに感じたことは、サラにも同じように感じていたのだろう。

 その時、俺は少し違和感を感じた。それは彼女が持っていた飲み物にあった。


「サラ…、そのコップどこから持ってきた…?」

「うん?スタールが持ってきてくれたわ」

「中身は…?」

「ぶどう酒」


 想定外の所からやってきた飲酒である。


「さすがに飲酒はまずいでしょ」

「いいじゃない、せっかくの宴会なんだし」

「ダメでしょ。酔ったら誰が世話するの?」

「カケルがすればいいじゃない」

「なんでさ!」

「兄ちゃん、家に来るの?」

「うーん、この調子だとそうなるのか…?」

「姉ちゃんも兄ちゃんに会いたがってたから、いいじゃん!」

「えぇ…?」


 なんだか複雑な気分である。

 その途中でも、サラはぶどう酒の入ったコップを呷っていた。


「ちょ、サラストップ!」

「いいじゃなぁい、飲ませてくれてもぉ」

「完全に酔ってやがる…」

「酔ってなぁいわ」

「しかもリフレットさんと酔い方同じかよ…」


 俺は頭を抱えた。これは俺が面倒を見なければいけないパターンであるからだ。

 頼みの綱であるトーラス補佐官は遠くで元島民と交流している。なんで近くにいないんだ。


「しょうがないなぁ…」


 俺はカイ君に家まで案内してくれるように頼み、サラをいわゆるお姫様抱っこで運ぶ。

 そのままリフレット一家が居住する家まで移動した。その間、サラは泥酔してしまったようで、やたらと俺に甘えてくる感じであった。

 そのまま部屋まで送っていくと、これがなかなか離してくれない。


「サラ、そろそろ離してくれない?」

「いやぁやっ」

「んもー…」


 このままサラを放置していくのも気が引ける。

 俺は仕方なくサラの部屋で一夜を過ごすのであった。

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