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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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46海里目 謁見と見学

 レイグル王国領海に入ると、一遍して穏やかな海になる。さっきまでの荒れ模様は何だったのかと疑うほどだ。

 次第にレイグル王国の領地へと近付いていくが、これまでとは違って船の往来が少ないような感じがする。その分だけ連合艦隊は進みやすいのだがな。


「今回の寄港先はフォロン港と呼ばれる所だな。世界最古の港町とも呼ばれる場所だ」

「へぇ、そうなんですか」

「ただし、時代に合わせて港全体を改造しているからなかなか面白いことになっているぞ」

「面白いって…。それ言っていいんですか…?」

「レイグルの職員には内緒だ」


 そんな冗談もそこそこに、フォロン港に接近する。



 レイグル王国は、その名の通りレイグル国王による立憲君主制を採用している。その国王は新技術に対して強い興味を持っており、防衛連盟内でも一番の技術先進国とも言われているほどだ。ヒルノ海上国家の工業地帯にいる技術者の半分はレイグル王国出身なんて噂もあるほどである。



 フォロン港に入港すると、早速出迎えが来る。


「レイグル王国へようこそ。私はレイグル国王の側近で外交担当官のヴォース・ルドロフです。宮殿にて国王がお待ちです」


 まるで秘書官のような人に連れられ、俺たちは車に乗り込む。その車はスチームパンクに出てくるような、蒸気と謎の機関と歯車で構成されているような感じであった。そういえば蒸気機関は最近採用されているとか聞いたことあったな。レイグル王国がそうなのかも知れない。

 そして意外にも蒸気を使用した車両であるにもかかわらず、かなりの速度を出している。機関車に技術転用したら、すぐにいいものができそうな気もするけどなぁ。

 そんなことを考えていたら、いつの間に首都に到着していた。

 首都は比較的古びた印象を受ける。なんというかシドラール国に似たような雰囲気なのだ。両者とも君主制だし、古いものは守っていかないといけない心意気を感じるんだよなぁ。

 そんなことは心の中の留めておくとして、俺たちはレイグル王国国王に謁見するため、首都にある宮殿を訪れてた。

 宮殿はどこか前世代の古さびた作りになってはいるものの、中は新しいもので構成されている。おそらく、時代に合わせて内装をいじっているのだろう。

 そんな宮殿の中をヴォースさんを先頭に、真っすぐ迷うことなくとんでもなく大きい扉の部屋の前に案内された。


「こちらに国王がおられます」


 その直後、扉が開いて中の様子がわかるようになる。これまでとは異なって空間を広く使った風光明媚な装飾が施されていた。

 そんな部屋の中央に鎮座する一人の人物。おそらく彼がレイグル王国国王なのだろう。

 ヴォースさんが歩いていくところをついていくように、俺たちは彼に向かって進む。

 ちょうど国王を見上げるような位置につくと、ヴォースさんは片膝を立てて(こうべ)を下げるようなポーズをとる。ファンタジー世界ではよく見る相手に敬意を示す体勢だ。俺も同じようにする。


「独立統合戦術機動部隊の司令官カケルよ、よくぞ来た。楽になれ」

「はい」


 そう言われ、俺は敬意の体勢から直立になる。


「ようこそレイグル王国へ。吾輩はレイグル王国国王のヴィートリヒ4世である」


 国王であるヴィートリヒ4世が、そう自己紹介する。その風貌と言動から、かなりの堅物のような印象を受けた。


「短い期間ではあるが、ゆっくりと我が国のことを見学していくとよい」

「ありがとうございます」


 短い時間ではあるものの、ヴィートリヒ4世への謁見は終了した。

 そして事務官級の会合をしている間に、俺はレイグル王国を見学することになった。もはやお約束と言っていいほどの行程だ。

 今回はレイグル王国の科学技術の視察ということで、総合技術研究所へと訪問していた。

 この研究所では様々な科学技術を確立するために、多様な分野の研究を行っている。その中でも、特に造船関係の研究室を見学しに行く。


「ようこそ、造船工学研究センターへ。ここでは造船やそれに関わる工業技術について研究しています」

「軍用の艦艇もここで研究しているんですか?」

「そうですね。この手の研究はヒルノ海上国家のクリファランでも行っていますが、我が国でも独自に研究、開発をしています」

「独自に研究していると、クリファランとの研究と重なってしまうところもあるのではないですか?」

「確かにそれもありますね。ですが、クリファランとは定期的に情報交換を行っていますし、共同研究も行っています。そういう意味では、お互いに高みを目指していると言えるでしょう」

「なるほど」


 そのような説明を受けつつ、奥のほうへと進む。

 ここには実物大の艦艇があるほか、その艦艇に搭載する兵器や資材などの研究も行っているようだ。

 その中で、ひときわ目立つ艦艇があった。


「あの艦はなんですか?」

「あちらの艦は、レイグル王国海軍からクレバイルが所有する艦艇について推測される艦影を原寸大で再現してくれと依頼されて作られたものです。我が国のみならず、防衛連盟加盟国の軍関係者も視察に来るほどの完成度を誇っています」

「そうなんですか」

「ですが、あくまで推測で建造された艦であるため、実際のクレバイルの艦艇ではありません。我々の想定を上回る性能を叩きだしてくる時もあるので、それらについて推察することも稀にですがやることもありますね」

「なるほど。拿捕船がないが故に、すべて想像で想定しないといけないんですね」

「その通りなんです。もし拿捕できたならばどんな小さなことでも敵のことを知ることができるんですが…」

「そうですよねぇ。でも最も新しい拿捕船は12年も前のものであると…」

「これ以上悲しい話はないでしょうね」


 まるで世間話のような感じで総合技術研究所の見学は終了した。

 夜になってホテルの方に戻ってくると、トーラス補佐官が相談したいことがあると言って部屋に訪れた。


「どうしたんですか?」

「今日の会合であったことなんだがな、レイグル王国側が連合艦隊の艦艇に強い興味を持ったものでな。その技術をぜひ見たいと言ってきた」

「つまり、うちの艦を見学したいってことですか?」

「まぁ、端的に言えばそうなる」

「どっちにしろ明日の昼間は予定なかったですよね?」

「うむ。だから最高指揮官であるカケル司令に意見を聞いて、早めに返事をしたい。どうか?」

「いいと思いますよ」

「ではそのように返答しておこう。明日の昼はよろしく頼む」


 そういってトーラス補佐官は部屋を後にした。

 翌日、フォロン港に戻った俺たち一行は、吹雪型の案内に入る。

 この案内もなんだか懐かしい気がした。これはあれだな、初めてトーラス補佐官が「吹雪」に乗った時と同じような感じだな。

 そんな感じで「吹雪」の艦内を案内する。その途中でレイグル王国の技術者が何度か質問をして、その都度答えを返す。

 彼らが特に興味を示したものは、主缶機である。もちろん、様々な技術や魔術やらを利用しているからだ。

 ほかにも、彼らの常識にはない主砲や魚雷の設備など、興味が尽きることはないだろう。

 この日の夕方、レイグル王国首相との記者会見があった時には俺は若干疲れていた。想像以上にレイグル王国の技術者ががっついてきたからだ。まぁ、それ自体は別にいいんだけど。

 記者会見では、お互いは良い関係になれるだろうという内容が話された。いつも通りのお決まり文句である。


「時間はもう過ぎ去ってしまうが、我々の関係はいつまでも続くだろう。今回の訪問は実に有意義だった」

「ありがとうございます、ヴィートリヒ陛下」


 このような挨拶を交わして俺たちはレイグル王国を後にする。

 そして次の目的地、ランスエル公国へと進路を取った。

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