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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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43海里目 第2の国

 リクア共和国を出発して数日。連合艦隊は第3戦速という速さで海を走っていた。


「後続艦はどうだ?」

「『シラユキ』問題なし。『ハツユキ』はやや後方。『ミユキ』はかなり後ろで航行中です」

「戦闘時ならともかく、やっぱり高速航行での巡航はやるべきではないなぁ」

「しかし、こうして第1戦速以上での艦隊行動を確認出来たことだし、良い機会だったであろう?」

「まぁ…それもそうですけど。…では現在の状態を30分維持し、その後は原速に戻して艦隊を立て直せ」

「了解」


 連合艦隊はヤーピン皇国に向かうため、大洋を進んでいる。この航路はロード演習作戦において一番の移動距離だ。そのため、移動行程に予備日が設定されている。

 だが、個人的には予備日を使わないで予定を消化したいとうっすら考えている。もちろんこれには深い考えなどない。

 途中、訓練の終わりにF作業なんかを挟みながら10日以上もの航海日程を終え、ついにヤーピン皇国へと到着した。



 ヤーピン皇国は、かつてシドラール国で出会った成弘親王がいる国である。複数の大きな島を中心として成り立つ国家で、何かと日本に似ている所が多い。似てないところがあるとすれば、ヤーピン皇国はほぼ唯一の南半球に存在する国家と言える点ぐらいである。また他の国にはあまり見られないような文化を持っているのも特徴だ。その他にも、技術的な面でも他国と比べてある種秀でているところもあるため、連合艦隊に欲しい人材がいるかもしれない。



 そんなヤーピン皇国に入国するため、指定された軍港へと向かう。そこはヤーピン皇国の首都、西京さいきょうにほど近い港町の浜須賀に入港した。

 浜須賀にはかなりの数の艦が往来し、そして停泊しているため、とても狭く感じる。

 所定の埠頭に停泊すると、リクア共和国と同じように政府関係者が迎えに来ていた。


「海原様、ようこそヤーピン皇国においでくださいました」

「丁寧なお出迎えありがとうございます」

「さっそく宮殿のほうにご案内します」


 そういって車に乗るように案内される。ヤーピン皇国の車はリクア共和国ほどではないが、それなりに車っぽい見た目をしている。

 車に乗り込み、約1時間ほど揺られると次第に家が多くなってきた。

 そんな中、木々が生い茂る敷地へと入っていく。

 そして、これまた豪勢な建物に案内される。その中を進むと一度休憩室のような場所に通される。


「時間になるまでここでお待ちください。時間になりましたら、本殿にて皇帝陛下に謁見していただきます。よろしいですか?」

「はい。分かりました」


 そういって案内してくれた人は部屋から出ていく。部屋の中を一目見ると、なんとも洋風でありながら和風が取り入れられたような装飾が特徴的である。

 しかし、こういう場所って落ち着きがなくなるなぁ。


「どうした?カケル司令。やけにそわそわしているではないか」

「そりゃあ、こういった感じってあんまり経験ないというか…」

「今まで何度もやってきたというのに?」

「なんというか、今までとは何か違う感じがするんですよ」


 そのような会話をしていると、部屋のドアが開いて先ほどの案内していた人が再び現れた。


「準備が整いましたので、これから本殿にご案内します。海原様は私の後についてきてください」

「はいっ」

「カケル司令、気を抜いていけ」


 トーラス補佐官の助言になっていない助言をもらい、俺は一人で本殿の方へと案内される。

 数分もしないうちに、大きな扉の前に到着する。


「防衛連盟理事会直轄独立統合戦術機動部隊、海原駆海軍大将のご入場です」


 扉の向こうから、このような声が聞こえてくる。その直後に扉が開き、案内の人が前に進む。

 俺も遅れないように、その人の後を追った。

 案内されたのは本殿のようだが、そこは厳かな雰囲気というのが一番似合っているような場所である。

 部屋に入って左側に人々が整列しており、それに正対するように一段高くなった椅子に一人の男性が座っていた。男性の服には豪華な装飾や勲章の類いが多数つけられている。おそらくこの人が皇帝陛下なのだろう。

 そんな風に彼のことをチラ見しながら部屋に入ると、案内してくれた人は皇帝陛下の前に立つように指示した。

 俺は指示の通りに、皇帝陛下の前に立つ。案内してくれた人は俺の左後ろにとどまった。

 すると皇帝陛下が立ち上がり、横の方から側近らしき人が巻いた紙を持って壇上に上がる。

 皇帝陛下が紙を受け取り、それを開いて言葉を発した。


「本日は、我が国にとっても、訪問者にとってもより良い1日になるでしょう。今、私の前におられるのは独立統合戦術機動部隊の司令官、海原駆海軍大将であります。現在、我が国と同盟国は敵対するクレバイルと戦争状態にあり、海原海軍大将はこの戦争における一つの転換点になることを期待しています。そのためにも、我が国に滞在する間、存分に真価を発揮できるようにお互いが切磋琢磨できることを望みます」


 そういって、皇帝陛下は手にした紙を再び側近に渡す。

 そのあと、俺は後ろにいた案内の人から紙を差し出される。内容を確認すると、どうやら皇帝陛下の言葉に対する返答のようだ。


「皇帝陛下に置かれましては、ありがたきお言葉をありがとうございます。我らの艦隊は迫りくるクレバイルを穿つべく結成されたも同然であります。故に、防衛連盟の同盟国が総力を合わせ、一つの目的に立ち向かうための一番槍が我らの艦隊と言えるでしょう。そのためにこのような訪問を行っている訳です…」


 この後はヤーピン皇国に対して感謝を言って俺の返答は終わる。

 俺が紙を読み上げ終わると、案内の人が、俺の前に出てきて退室を促す。俺はそれに素直に応じた。

 入ってきた扉とは別の方に案内され、そのまま最初にいた部屋に通される。


「カケル司令、終わったのか?」

「多分ですけど」

「そうか、ご苦労だったな」

「はい。…そういえばこの後の予定って特に聞いてないんですが、何かありますか?」

「先ほど連絡が来て、数時間後に晩さん会が執り行われるようだ。それまではこの部屋で待機、終わったら宿泊予定のホテルに送ってくれるとのことだ」

「分かりました。少し休みますね」

「うむ。そうしておいたほうがいい」


 トーラス補佐官の言葉を受けて、俺は部屋にあったソファに寝転がった。本殿での対面は意外と緊張したから、体の力がゆるゆるだ。

 しばらく眠りこんだようで、トーラス補佐官に起こされるまで熟睡していた。

 起きた俺は軽く身支度を整え、晩さん会に備える。

 数分後には係の人が晩さん会の会場に案内された。会場入りすると、リクア共和国の時とは違って威厳と格式あるような感じである。まぁ、リクア共和国の時はほぼ立食パーティーに近かったから、比べるのは愚問というものだろうか。

 俺は係の者に誘導され、自分が座るテーブルに案内される。その場所は数時間前に謁見した皇帝陛下が右隣にいる席であった。


「皆さんがお揃いになったので、これより独立統合戦術機動部隊歓迎晩さん会を執り行いたいと思います。皆さん、前にある杯をお手に取ってください」


 司会の言葉で各々が自分の前にあるグラスを手に取る。

 俺も手に取ってみると、ある一つの事実に気が付いた。

 このグラスに入ってる透明の液体はアルコールを主成分としたもの、つまり酒である。酒自体に色などなく、香りからでもアルコールっぽい匂いを感じるため、蒸留酒であることには間違いないだろう。

 現在までアルコールの摂取をししていない俺は、今回も何とか摂取を逃れたかった。しかし、この場にいるほとんどの人がグラスを持っているのに、中身を変えてくれとは言えるはずがない。特に、自分の横に国家元首がいるなら余計にだ。

 次の瞬間、俺の脳内に一つの方法がよぎる。あまり使いたくはない手段であったが、背に腹は変えられない。


「それでは陛下、乾杯の音頭をお願いいたします」


 皇帝陛下がグラスを少し上に持ち上げる。それに合わせるように、他の人もグラスを掲げる。

 ここだ。俺は能力を使い、グラスに入った酒を水に置き換える。全部じゃなくていい。アルコール分が影響ない程度まで変換すればいいのだ。

 数秒ほどで、グラスに入っていたアルコールの99.2%を水に変える。これくらいならば、酒の影響は限りなく少ないはずだ。

 水への置換が終わったちょうどその時、皇帝陛下が乾杯の音頭を取り出す。


「それでは、我が国と彼の幸運を願って。乾杯」

「「かんぱーい」」


 こうして晩さん会は始まった。

 とは言ってもおおよそは食事メインであり、間に隣の席の人と言葉を交わす程度のものである。

 俺は特に自ら話すこともなく、黙々と食事をするか、挨拶回りに来た要人と話をするくらいしかないだろうと思っていた。成弘親王も挨拶に来てくださったが、会話をすることもなく、他の人へ挨拶に行ってしまうし。

 すると、隣に座っている皇帝陛下が直々に話しかけてくれた。


「少し緊張されているのですか?」

「あっ、…えぇまぁ」

「あまり緊張しなくても大丈夫ですよ。今は食事をしているのですから」

「…はい」

「ところでお聞きしたいのですが…」


 こうして皇帝陛下との会話が弾んでいった。

 晩さん会が終わると、俺たちは宮殿からほど近い場所にあるホテルへと移動する。ここも伝統ある格式高いホテルとのことらしいが、そう言われると変に緊張してしまうから止めてほしいところだ。

 部屋に入ったところで、トーラス補佐官に今後の予定を聞かされる。


「これもリクア共和国の時と同じようなものだが、明日の午前中は首相との会談、午後は議会で簡単な演説。明後日はヤーピン皇国の軍施設の見学になる。大変だろうが、頑張ってくれ」

「へーい」

「どうした?あまり元気がないように見えるが」

「そりゃそうでしょうよ。なんか妙に疲れたんですから」

「ま、仕方ないな。陛下は世界においてもかなり位の高いお方だからな」

「…マジっすか?」

「あぁ。とにかく、明日もよろしく頼むよ」

「はぁ…」


 なんだか釈然としないが、仕方ないだろう。

 トーラス補佐官が部屋から出た後、俺は今日のことを思い返しながら眠りについた。

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