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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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41海里目 初めての見学

 その日、一度官邸に戻った俺は、テロ被害を受けたとの報告が上がっていたため、政府関係者から軽い事情聴取など取り調べを受けた。特に内務自治省の職員が中心となって、話を進める。


「…結局のところ、カケル大将は犯人との面識は一切ないとのことですね」

「えぇ。彼を見るまで亜人種とも会ったこともありませんし」

「分かりました。お話は以上です」


 こうして彼らはその場を離れていった。


「はぁ…。どーして、こうも面倒事に巻き込まれるんだかなぁ」

「それはカケル司令が面倒事を引き寄せてるからだろう?」

「そんな体質いらないんだけど…」


 官邸で事務的な会議を行っていたトーラス補佐官が合流し、俺の事情聴取を聞きに来ていた。

 しかし戻ってきて最初に言うことがそれかぁ?俺結構悲しいんだけど?


「それで?この後はどうするつもりだ?」

「と、言うと?」

「こっちの案件はあらかた終わって、あとは簡単な擦り合わせぐらいだからあるようでないようなもんだ。そして陸軍の視察は明後日。だから、1日くらい自由行動を挟んでも問題はないだろう」

「つまり、最初の訪問先から寄り道していくってことですか?」

「悪くはないだろう?もし予定が押してもロード演習作戦の日程表にはいくつか予備日も用意されてるし、航海中にでも船速をあげれば何とかなるだろう」

「そうですかねぇ…」


 案外適当だな。

 でもまぁ、たまにはいいかもしれないな。特に戦闘時における速力を中心とした訓練もしたいし。

 そんな訳で、早速翌日を俺の個人的訪問期間、簡単に言えば自由時間として設定した。訪問先は内務自治省だ。この決断をした直後、すぐにトーラス補佐官が動いてくれて、内務自治省にアポを取りに行った。

 その後、ホテルへと戻った俺はベッドに入るなり、すぐに深い眠りに入ってしまう。

 そして翌日。すっきりとした目覚めで向かうのは、内務自治省だ。昨晩のうちにアポが取れたようで、いつの時間帯に来てもよいとのことだ。トーラス補佐官の実行力もさることながら、内務自治省側もよく許可を下してくれたもんだなぁ。

 内務自治省の庁舎があるのは、今いる首都ローレックの東側に位置する。昨日訪問した官邸の近くにあり、さほど時間はかからずに到着した。

 庁舎に到着し、車から降りる。庁舎自体はさほど大きいとは言えないが、年季の入った外見が非常に特徴的だ。

 内務自治省庁舎に入ると、そこには亜人種の姿が多くあった。主に人に近い外見をした亜人種が中心である。そのうちの多くをエルフが占め、その他少数をドワーフや小人などで構成されているように見えた。


「あなたが連合艦隊のカケル大将ですね?」


 急に声をかけられ少し驚いてしまった。振り返ると、そこに少しシワのあるエルフが立っていた。


「私は内務自治省広報室のフレティ・クァムアスと申します」

「あぁ…どうも。本日は急な用件で訪問してすいません」

「いえいえ。我々内務自治省は、ほかの省庁に比べて担当する業務が非常に限定的で稀有な事が多いものですから、その内容を知っていただくのはありがたいことなのです」

「はぁ…」

「さて、立ち話もなんですし、どこか腰を据えてお話しましょう」


 そういってクァムアスは自分たちについてくるよう指示した。

 彼が案内したのは広報室の一角にある応接室だ。


「さて、どこから説明しましょう?とは言いましても、順に追って説明するのは難しいですから、何かご質問があればお伺いしましょう」

「そうですね…。では、内務自治省の具体的な業務などを教えていただきたですね」

「分かりました。我が省では、基本的に亜人種に関わる業務全般を担っています。人間社会で亜人種が生活できるような仕組み作りから、昨日カケル大将が爆弾犯の標的になったような犯罪の取り締まりまでを管轄しています。ですが人間を中心とした社会においては、あくまでも主体は人間基準であるため、他の省と業務が重なる場合もあります。昨日の例がそうですね。あの時は爆弾犯がエルフであることがすぐに分かったため、本省の保安監督部が出向いた訳ですが、大抵の場合は一般司法警察…いわゆる人間側の警察が取り締まりを行うのです。まぁ、事前に亜人種が犯罪を犯すことが分かっていない限りは保安監督部が最初から出てくることはないでしょう」

「なるほど…」


 内務自治省は人間と亜人種を繋ぐ架け橋のような存在なのだろう。人間に比べて人口は少ないはずだ。でなければ、亜人種のみで構成された国家が誕生していてもおかしくはない。だが実際には自治国としてリクア共和国の一部になっている。

 そして人間が国家を形成している以上、そこには人間がうまく生活できるような仕組みが作られているはずだ。そんな所に人とは異なる亜人種が入っていくと、どこかしらで軋轢が生じるのは明白である。

 そこを救うために、内務自治省というものが存在しているのだろう。


「ほかに何かご質問は?」

「えー…。じゃあ、ロメイラル自治国にいる亜人種ってどのような方々がいるんでしょうか?」

「そうですね…。これは彼女に説明してもらいましょう。…レフォールさん?」

「はーい」


 そういってクァムアスは広報室の奥にいた女性を呼んだ。

 心地の良い返事が響いたあと、こちらに誰かがやってくる。

 レフォールと呼ばれた女性は、人の姿に準じていたが人にはない特徴的な耳と尻尾を持つ、いわゆるケモ耳がついているモンスター娘であった。


「呼びましたか?」

「えぇ。こちらが連合艦隊の司令官のカケル大将です。彼にロメイラル自治国の亜人種について教えてあげてください」

「分かりました」


 そういって彼女はクァムアスの横に座る。


「改めまして、広報のレフォールです」

「よろしくお願いします」

「ロメイラル自治国の亜人種についてお聞きしたいとのことなので、簡単ではありますが説明させていただきます」

「はい。お願いします」

「まず、亜人種といっても厳密な定義があるわけではございません。単純に人間であるか否かという曖昧な線引きによって分けられているに過ぎないのです。しかし、自治国で生活する亜人種は人間とは異なる文化を持っていて、人間社会に入り込むのは難しいとされているため、これを以て亜人種と定義づけしている場合もあります。そんな亜人種ですが、現在大まかに分けて3種類います。最も人口が多いのが、クァムアスさんの出身のエルフ属ですね。次いで私のような人間の容姿に動物の一部が加わった獣人族。この獣人族にも色々いまして、より人の姿に近いヒト型獣人、動物の要素が強く出ているケモノ型獣人、ほぼ動物に近い容姿を持つ動物型獣人がいます。話が逸れましたが、エルフ属にも獣人族にも属さない少数派亜人種がいるんです」

「意外と少ないんですね」

「そうですね。私たち亜人種の祖先は、大災厄の時に多くの犠牲を出したと言われています。そして生き残った私たちの祖先は現在のロメイラル自治国に国を置き、今日まで手を取り合って生きてきたのです」


 亜人種って意外にも種類としては少ないほうなのかもしれない。それに大災厄については、人間だけでなく亜人種も大変だったんだな。


「亜人種についてはこんな感じですね。ほかに何かお聞きしたいこととかございますか?」

「えーと…。それだったら、自治省の中を見てみたいですね」

「なるほど、わかりました。私がご案内しましょう」


 そうレフォールさんが言う。俺はその言葉に甘えることにした。

 早速広報室を出て、館内巡りに出かける。最初から分かっていたことではあるが、館内は亜人種ばかりで人間の姿は見かけない。

 内務自治省の中は他の省庁と変わりない感じではあるが、奥のほうに入ったときには見えなかった窓口があった。


「こちらは亜人種の行政窓口になります。主に首都で生活する亜人種を対象にロメイラル自治国における代理業務などを行っています」

「結構広いですね…」

「えぇ、ここだけで全ての手続きが出来てしまうほどですからね」

「そりゃすごいな…」


 俺があっけに取られていると、突然視界いっぱいに人の姿が広がった。


「ぬわぁっ!」


 俺は変な叫び声と共に、思わず仰け反る。


「あっ!ごめんなさい!」


 謝罪の声が聞こえてくるのが分かる。その声の主を見ると、まさに小人が宙に浮いているような感じであった。


「あら、キュサーニちゃん」

「レフォールちゃんだ!どしたの、こんな所で?」


 二人はどうやら知り合いのようだが、俺はそれどころではない。目の前に妖精そのものがいたからだ。


「え…ん?」

「あれ、亜人種の方ではないですね」

「そうなんです。現在リクア共和国を訪問されている連合艦隊指揮官のカケル大将です」

「あれれ、そうだったんですか?失礼なことをしてしまいました…」

「あぁ、いえ、大丈夫なんで…」


 妖精のキュサーニさんが俺に謝り、俺も腰を低くした謝罪をしてしまった。


「紹介が遅れました。私、内務自治省自治行政部代理行政窓口少数種族担当のキュサーニと申します」

「連合艦隊司令のカケルです…」

「あっ、もしかしてびっくりしちゃってます?」

「えぇ、まぁ…」

「確かにそうですよね。私って妖精属の中でも小さいほうですから、大体の人間の皆さんも驚かれますよ。えへへ…」


 なんとも陽気な妖精である。しかしキュサーニさん、だいたい身長20cmところだが妖精族では小さいほうなのか…。


「ところでキュサーニちゃん、何か急いでたように見えたけど時間大丈夫?」

「あっ、そうだった!保安監督部に行かなくちゃいけないんだった!」

「それは大変ね」

「ごめんね、また今度ねー」


 そういってキュサーニさんはその場を離れていった。なんだかポジティブな人という印象だ。

 その後も、内務自治省の館内を見学する。ほかの省庁と変わりないような部署から、ここだけしかないような特殊な部署までさまざまだった。

 最後に案内された場所は、先日もお世話になった保安監督部だ。


「ここは…もうお分かりですよね?」

「そうですね。昨日知ったばかりですし」

「それにしても大変でしたね。まさかエルフ属の方があんな事件を起こすなんて…」

「まぁ、人にはそれなりの理由があるんでしょうよ」


 そんな話をしていると保安監督部のドアが開き、中から見たことある人が出てくる。


「おや、カケル大将。こんなところに何用で?」

「あっ、ディフロさん。実は内務自治省とかについて話を聞きに来たんですよ」

「そうでしたか。ゆっくりとご覧になってください」

「ありがとうございます」

「そうだ。昨日の件ですが、犯人の人物像が浮かび上がってきましてね。お聞きしますか?」

「それだったら、ぜひ」

「聞き取りによりますと、彼はロメイラル自治国における反社会的要注意組織の末端の構成員を自称しています。これに関しては現在調査中ですが、おそらく事実に近いと思われます。しかし、彼自身がエルフ属でありながら魔法の適正がない事も今回の捜査で判明しました。もし彼が反社会的要注意組織の構成員でありその組織から声明がない場合、彼が単独で犯行に及んだと考えられるでしょう」

「魔法が使えないエルフもいるんですね…」

「えぇ、かなり珍しいタイプです」

「しかし、そうなると動機が見当たらないような…。自分はその組織とやらとは何も関わりがないわけですから…」

「動機は憶測ですが、魔法が使えない彼が流浪者であるカケル大将が訪問していることを聞き、思い付きでテロを実行に移したのでしょう。一方的かつ突発的な八つ当たりといった所でしょうか」

「なんというはた迷惑な…」

「まだ分からないことが多いですが、それは今後の捜査で判明するでしょう」


 八つ当たりでテロ被害を受けたらこっちの身が持たないわ。

 そんなことを話した後、ディフロさんは用事のために足早にどこかへ行ってしまう。

 この後は特に目新しいものもなく、内務自治省の見学は終了した。

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