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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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34海里目 成果と発表

 翌日、また日が昇る前に起きた俺は軍服に着替え、颯爽と窓から飛び出していく。サージ港に停泊中の「白雪」に到着すると、トーラス補佐官から今日の予定を受けとった。

 今日はカールヴット本部総長との共同記者会見が控えている。これにも原稿があるので、一通り目を通しておく。こういう堅苦しい感じはあまり得意ではないんだけどなぁ。


 日が昇りきり、トーラス補佐官とジェイル大尉他数名とともに防衛連盟本部へと向かう。なんだか車での移動もだんだんと慣れてきたな。

 十数分ほどで本部に到着する。すでに本部前には出迎えのために職員が並んでいた。車から降りて中に案内されると、控え室のほうへ通される。そこで待っていた本部職員と、会見の場における最終的な調整を行った。


「…以上です。ほかに何かございますか?」

「いえ、特には」

「ではお呼びするまで、今しばらくお待ちください」


 職員が出て数十分ほど待ち、いよいよ会見場へ移動する。

 会見の舞台となる場所は、昨日会談を行った中会議場であった。舞台袖から見た限りだが、昨日とは違って防衛連盟のシンボルマークの前に防衛連盟旗と連合艦隊旗が交互に並べられ、さらにその前に演台が二つ設置されていた。よく国家元首が訪問先で共同の会見を開くときの感じだ。俺の緊張感がさらに高まってしまう。

 そして今日は、すでに報道関係者が座っていた。しかも昨日より多い。


「うわぁ、余計に緊張する…」

「ここまで来たのだから覚悟決めてくれ、カケル司令」

「分かってますよ…トーラスさん」


 そう、ここまで来て緊張していても仕方がない。ここは腹をくくるしかない。

 その時、隣にカールヴット本部総長がやってくる。


「やぁ、指揮官。今日もよろしく頼むよ」

「こちらこそ、本部総長」


 職員に合図されて、演台へと向かう。もうすでに心臓はバクバクだ。

 演台の前に立つと、報道関係者の目が俺に降りかかって来る。


「これより、防衛連盟本部総長及び独立統合戦術機動部隊司令官の共同記者会見を開始します」


 司会が会見の開始の合図をする。

 まずはカールヴット本部総長が先に発言した。


「先日、我ら防衛連盟に新たな部隊が設立された。すでに承知の通り、これまでとは一線を画す艦艇で編成された艦隊、正式名称を独立統合戦術機動部隊、通称連合艦隊だ。私の隣にいるのが連合艦隊の指揮官、流浪者のウナバラカケルである。今回、連合艦隊の設立に至ることができたのは、ひとえに彼が我々に協力を申し立ててくれたことに他ならない。これにより、我々が取るべき選択が増えた。実に喜ばしいことだ。現在戦争状態にあるクレバイルに対して有効な手段が取れることを意味している。そこで我々は、連合艦隊に対して防衛連盟の想定している作戦行動の説明を行い、これまで議論されていた反攻作戦大綱に変更を加えることにした。そしてそれに伴い、連合艦隊に最大の援助を行うことも決定した。我々防衛連盟は、彼と、彼の指揮する部隊に期待して、私からは以上とする」


 カールヴット本部総長の話が終わるとまばらな拍手が起こり、報道関係者の視線が一斉に俺の方へ向く。なんだか嫌な汗が出てくる。


「続いては、独立統合戦術機動部隊指揮官カケル大将です」


 司会が単調に俺の名前を呼ぶ。


「えー、私が連合艦隊の指揮官である流浪者の海原駆です。防衛連盟には、このような場に招待していただきありがとうございます。昨日(さくじつ)は防衛連盟の反攻作戦大綱に、我が連合艦隊が戦力として加わることが決定された記念すべき日となりました。私は指揮官としてとても光栄に思います。それと同時に、我々が背負わなければならない期待や重圧も同時に感じています。それはとても困難な道になることでしょう。しかし、困難だからといって退いていい理由にはなりません。私は流浪者として、連合艦隊の指揮官として、防衛連盟の勝利に一歩でも近づけるよう、尽力していきたいと思います」


 何とか言い切った。全身の筋肉から力が抜けたような感覚が襲ってくる。

 しかしながら、まだ気を抜くには早い。


「それでは、記者の方からの質疑応答を受け付けます。挙手でお願いします」


 そう、質問攻めが待っているのだ。


「ローラン新聞です。本部総長へ質問します。今回の大綱改定によって、今後防衛連盟の軍事行動に影響は及ぶのでしょうか?」

「それについては詳しくは述べられないが、少なくともこれまでの考えを改めなければならないと思っている」

「クァンテム・ファロ新聞です。本部総長への質問ですが、ここ5年間で防衛連盟の予算は2倍に膨れ上がっています。この新たな部隊が設立されたことで、さらに予算が増えるのは確実かと思われますが、そのあたりのことはどうお考えですか?」

「現在はクレバイルと戦争状態であり、予算の増大は致し方ないことだと思っている。連合艦隊の設立によってさらなる予算の増加は当然想定される事項であるが、このことがきっかけで早期に決着がつく可能性も否定できない。つまり一長一短であるとしか今のところは言えないだろう」

「ディセンティブ新聞です。連合艦隊の指揮官にお尋ねします。今回、部隊の設立ということで防衛連盟側から何か要求されたことはありますか?」

「特段そのようなことは受けていません」

「先ほども質問したローラン新聞です。連合艦隊指揮官にお聞きしますが、今後の部隊全体としての方針などはありますか?」

「今のところ明確な方針はありませんが、大まかな目標として戦力を増強したいと考えています」


 ほかにも様々な質問が飛んできた。俺はそれらに、答えられる範囲で回答を出していく。

 この調子で会見は数十分に及んだ。


「そろそろ時間も押してきましたので、以上で防衛連盟本部総長及び独立統合戦術機動部隊司令官の共同記者会見を終了します」


 こうして、記者会見は終了した。会場を後にした俺は、一気に肩の力が抜ける。


「ご苦労だったな、司令」

「本当に疲れましたよ…」


 だかこれで終わりではない。防衛連盟本部訪問の最後の行事である、昼食会が残っているのだ。

 この昼食会は関係者が一堂に会する場でもあるため、先ほど同様気の抜けない空気が俺を包みこむ。

 俺が会場に入ると、どこからともなく視線を感じた。そんなことはつゆ知らずに司会進行は進んでいく。


「では皆さん、乾杯!」


 その挨拶を皮切りに、出席者は自由に談話を始める。

 この昼食会はビュッフェ形式であるため、立食が中心である。俺も何か食べようかと思ったが、残念ながら挨拶回りに駆り出されたため叶わぬ願いとなった。


 こうして、2日間に及ぶ慌ただしい日程をこなした俺は、サージ港で式典を経てテラル島へと戻った。


「あぁー疲れたぁ…」


 仮庁舎の自室のベッドに倒れこむ俺。実際、これまで経験したことないような出来事が一斉に襲ってきたわけだし、頑張ったほうだと思う。

 しかし、そうは言ってられない状況が続くのは確定事項だ。今回の行事で、連合艦隊の運用に関して詳しい内容が内外に発信された。つまり、今後の組織的な行動は数多くの目で見られていることを意識しなければならないのだ。

 とは言っても、防衛連盟の一部隊だからそこまで背負うことはないだろう。


「司令、失礼する」


 ノックと共に、自室に入ってきたのはトーラス補佐官だった。


「なんですか…。今疲れてるんですけど…」

「そんな疲れている状況で悪いんだが、防衛本部に訪問したことで書類の量が倍増したぞ。今日中に少し整理しないと、明日までに終わらないからな」


 残念ながら世の中は無常である。


 こうして週が明ける。どうにか書類を片付けた俺は、クリファランへ戻った。

 講義に出る前に研究室を覗くと、ミラが今日行う予定である研究の準備をしていた。


「あっ、先輩。おはようございます」

「おはようございます、代表。研究のほうはどうですか?」

「そうですね…。まだ本格的な実験はできない感じですね。言葉にしづらいんですが、もうちょっと何かがあればいいんですが…」

「なるほど…」

「でも、大丈夫です。私がなんとかしますから!」


 そう言って、ミラは笑ってみせる。その元気が空振りで終わらなければいいんだが。

 俺は研究室を出て、講義を受けに行く。最近は内容が難しくなってきているから、ちゃんとやっておかないとな。


 こんな調子で一週間、また一週間が過ぎ去っていく。

 この日は研究室内での報告会が行われた。


「では、これまでの研究発表を行いたいと思います」


 研究室には、ミラのほかに現在研究室に所属しているメンバーが顔をそろえていた。


「まず始めに、今回の研究内容ですが…」


 報告会とは言っているが、実際には進捗の状態を確認するようなものだ。

 ミラが言ったことを要約すると、試料の作成は終了し、その生成手順も確認できたということだ。

 逆に言ってしまえば、試料を使って性質を調べるのはこれからであることを暗に揶揄していることになる。


「というわけで、以上がこれまでの研究発表になります」


 そのあとはいくつかの質問を受け、この日は終了した。

 研究会が終わると、すぐに研究の続きに没頭する。今の状態を邪魔するのは悪いだろうと思い、俺はそのまま寮へと戻った。

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