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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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32海里目 比較的な日常

 週末、テラル島に戻った俺は隊員たちを集め、水雷、つまり魚雷発射管の扱い方について指導した。

 とはいっても、魚雷本体はまだ造っていないので本当に魚雷発射管の動かし方をやるだけだし、魚雷の発射には割と理論立った数学的な方法がある。よってまだ戦力として利用できないのが現状なのだ。その他機銃の使い方も指導し、午前を過ごす。

 午後からは造船施設のほうに出向いて、新たな艦艇である「初雪」の製造に入る。今日はその下準備及び竜骨キールの設置まで行った。

 日が暮れた後に仮設庁舎へと戻った俺は、書類の処理をする。今週はどんな重要な書類が届いているか確認すると、兵員の補充に関する文書があった。どうやら退役軍人の召集をしているそうだが、これには強制力がなく、ある種の志願制であることから集まりが悪いらしい。そのため現役の軍人や予備役をメインに召集をかけ、ある程度頭数が揃ったら逐次人員を回すとのこと。まずは20人ほどを防衛連盟本部のほうで選び、年度が変わる4月ごろに編入するとしているそうだ。また指導しなければならない手間は発生するが、戦力の拡大という点で考えればありがたい話だろう。

 人員の補充といえば、個人的に基地施設の建設や装備品の調整をする技官や工廠の存在が必要だと薄々感じている。艦艇の建造と同様に、これらも自分一人で調整しているものだから俺にかかる負担は大きい。将来的に俺がいなくてもこの技術を利用し、継承されるようにしておかなければならないだろう。

 翌日は「初雪」の建造の続きをする。吹雪型も3隻目になるため、建造は慣れたものだ。おかげて今日一日で船体まで完成させることが出来た。


 週末も終わり、クリファランに戻った俺はミラと共に本格的な研究を始める。

 だが、昼間は教育課程の講義に出席する関係で夕方くらいから研究室に行くようになってしまう。ミラは問題ないとはいっているが、少しばかり心配である。

 研究の最初の段階として、目的の鉄鋼材料を試作するためにこれまでの研究内容から発展の余地がある論文を探す作業から始めた。普通は逆なのだろうが、辻褄合わせを考えたら致し方ないことだ。

 何本か良さそうな論文を見つけると、それをもとに研究の道筋を考える。これらの論文から、ニッケルやクロム、モリブデンの比率を変えて測定するという内容になりそうだ。そのようにミラと相談し、大まかな方針が定まった。


「ええと…。これはニッケルが重量比で3%、クロムが2%の鉄鋼で…、こっちがニッケルを4%に変えたもので…」


 ミラが実験で用いる鉄鋼の準備をしているが、手順を確認しながらやることに少し手間取っているようだ。

 準備が終われば、この試料を電気炉ならぬ魔力加熱炉に投入して融解させる。1000度ほどまで加熱することで完全に融けあい、一つの鉄鋼材料として生まれ変わるのだ。そしてこれを棒状に成形、試験を行うことでどれだけの機械的性質を持ち合わせているかを調べるのが今回の研究の大まかな方針である。

 割と地味な感じではあるものの、この積み重ねが新たな技術の創造につながるものだ。


 特に大きな出来事は起きずに週末を迎えた。書類は先週よりもさらに少なくなっており、俺にかかる負担減ってきたことを示している。ありがたい限りだ。

 パパっと書類を片付けたあと隊員たちの訓練の様子を見に行ったのだが、どうやら問題が発生したらしく、訓練用の主砲塔に隊員たちが群がっていた。一応作成者本人である俺が見てみると、砲塔旋回を担う装置に不具合があったようだ。幸い数時間もあれば直せるものだったので、その場ですぐに修理した。これは本格的に技官を受け入れないとまずいなぁ。

 修理を終えると、そのまま「初雪」のもとに向かう。この週末で艤装まで終わらせるつもりだからだ。船体まで完成させてたから軽くチェックを済ませ、早々に進水させる。そのまま慣れた手つきで艤装の工事に移った。これを終わらせたあとは関連の施設も建設しよう。これも整備関連で後々必要になってくるはずだからな。


 翌日も特に予定もないと思っていたが、一通の手紙で状況が変わった。差出人はクリファラン学園である。しかも俺が通っている予備役士官教育課程の事務室からだ。なんでも数週間以内に吹雪型駆逐艦をサージ港に寄港させ、これを候補生に見学させるというものらしい。なんだか艦艇の一般公開みたいなことをする上に、残り時間が少ない気がするなぁ。

 でもこれを上手く使えれば、連合艦隊の必要性や存在意義を示すきっかけにもなる。俺にとっては決して悪い話ではないはずだ。問題があるとすれば…。


「ウォルシュタインがなぁ…」


 俺のことを目の敵のようにしてる彼が、何も問題を起こさないはずがないんだよなぁ…。これは何かしらの対策を講じる必要がありそうだ。とりあえず見学の件についてはトーラス補佐官とジェイル大尉に相談した上で了承のサインをしよう。

 書類を片付けたら残っている「初雪」の工事を済ませる。今日はあまり時間がないから、大まかな機能だけでも完成させておかないとな。


 週明け後にクリファラン学園に戻っても、相変わらず講義と研究室を往復するような生活を送っていた。ミラは先週に引き続き、研究室に残っている仲間と共に試験片の製作を続けている。この調子だと週末までには試験を実施できるそうだ。

 講義のほうは、少しづつ応用に入っていった。例えば、水際防衛線において海軍と陸軍による共同戦線の構築に関してだったり、少数戦力での敵大艦隊の撹乱など…。より実践に近い形での講義が行われている。

 そんなある日のトルカチョフ研究室では…。


「代表、サンプル17番割れてますよ」

「またですかぁ?」

「この配分だとダメみたいですね、とりあえず記録取っておきますか」

「何が原因なんでしょう?」


 最近はこんな調子で進めている。結構大変な作業であるので、俺も何か手伝えることがあればいいのだが、ミラのほうから無茶はしないようにとのお達しが出されてしまった。無茶をしているのはお互い様だと思うんだがなぁ。


 ある日の講義で、俺たち候補生はいつもの講義室ではなく外にいた。


「本日は士官としての振る舞いの一環として、式典などで行う表敬剣術栄誉礼の訓練をする。剣術儀礼の歴史は非常に古く、時には出征時に士気向上のための武舞として執り行われたこともあり、形式上簡略化されてからは騎士や士官が習得すべき作法の一つとされている。今回の訓練では主に式典で行う敬礼やそれに準ずるものを体に叩き込んでもらう」


 教官が手本を見せる。形式として決まっている動きなので、覚えてしまえばあとはどれだけきれいに見せるか体に覚えこむだけだ。なんとなくだが、見た感じは捧げつつに似ている感じがする。

 栄誉礼には二人が対面した状態で行われるものであるため、それぞれ相手を決めて実践する。これが意外と難しかったりする。

 半日かけて表敬剣術栄誉礼の訓練をしたあと、講義室に戻り座学をするのは少々キツいものだ。


 こんな感じでまた週末が巡ってくる。テラル島に戻ってくるやいなや、書類の山の処理に対応させられた。この量久しぶりだなぁ。

 内容はおおよそ一般公開に関するもので、詳しい日程が決定した。それによれば、来週末に連盟本部で連合艦隊との臨時防衛大綱作成のための会談が行われるのに合わせるそうだ。会談は二日間に渡って開催される予定になっているらしい。ちょいと忙しくなるのは致し方ないものだろう。

 ちなみにダリ中佐からも手紙が届いており、当日の自分の動き方を記した予定表が入っていた。どうやら朝早くにクリファランを抜け出してサージ港入港直前の「白雪」に飛び乗り、そのまま入港式典に出席する。そこから本部に移動してすぐに会談を行うようだ。ここでは互いの意思を表明する場で、その後に行われる非公開の次官級会合にて防衛大綱の詳細を詰めていくとのこと。この時に俺は本部を再び抜け出してクリファランに戻り、授業のほうに参加するといった具合だ。割と過密だなぁ。

 とは言っても特に異議があるでもないし、このままでも問題なさそうだ。あとはトーラス補佐官とジェイル大尉、そして「白雪」艦長に話を通すとしよう。


 それらを処理したら颯爽と造船施設に向かい、完成間近である「初雪」の作業の続きをする。あと何か所か艤装を取り付ければ終わりだからな、さっさと片づけてしまおう。

 そうして翌日には「初雪」が完成した。これに搭乗する乗組員である隊員の補充はあと数週間から数ヶ月ほどかかるそうだが、とりあえずは「吹雪」「白雪」両艦の隊員に公試替わりの最終チェックをしてもらうことにしよう。


 そして再びやってくる週明け。いろいろと進展がありそうだ。

『物語を1.3倍位楽しむための豆知識コーナー』

表敬剣術栄誉礼

かつて出征前の士気向上や騎士団が互いを信用するために誓いの一つとして交わされた儀式を簡略にして形式化したもの。代表二人が対面した状態で剣を交わらせたり地面に突き立てる動作をする。現代の軍人でこれを知らないものはいないといわれるほど。

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