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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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19海里目 突貫建造

「陛下、一体どうするおつもりですか?」


 会場を後にして先程の応接室に戻った直後に、付き添いの人から疑問の声が上がる。

 応接室に残っていた成弘親王やトーラス小艦隊司令官も、興味ありげに耳を傾けている。


「どちらにせよ、彼の能力については説明することになるだろうぞ。その時にもおそらく、先ほどと同じような事が起こる可能性がある。なら、先手を打って彼の事を理解させたほうが良いではないか」


 シドマ国王としては先を見越しての判断だった。今のうちに能力を見せておくことで、今後の活動に影響を与えることが目的だと思われる。たぶん、良い結果にも悪い結果にも転がる出来事になるだろう。


「どうせやるなら派手な方が良い。何か考えはあるかね?」

「それでしたら…、『吹雪』の同型艦を造るというのはどうでしょう?半日もしないで出来ると思いますよ」

「ほぉ!そんなことが可能なのかね?」

「ぶっちゃけ、『吹雪』の構造を丸々コピーして生成すればいい話なんですけどね」


 部屋の中はいろんな声で溢れかえった。


「よし、そのようなことならば、すぐにでも準備をしようぞ。何か必要なものはあるか?」

「んー、乾ドックがあればいいんですけど…」

「それは艦の全長によるが、どのくらいかね?」

「120mいかないくらいですけど」

「120!?ラガスーロにあるドックは最大でも100m程度なのに、それを上回るというのか!」


 セル国防局長官が驚嘆の声を上げる。


「ならば、船台を使うのは?あそこなら長めに場所をとってあるから、問題はないと思われるが…」

「一回下見に行ってみますか?駄目なら他の方法でやりましょう」

「ううむ、ならばそうしようぞ。彼らにも連絡しておこう。今日の14時で、場所は基地の入り口に集合するよう伝えてくれまいか?」

「え、今日ですか?」


 付き人が困惑した顔をする。

 そりゃそうだろう。このような場合は充分な下準備をした上で、催し物を行うべきなのだ。


「そうだ。彼らは気が短い、ならば直ぐにでも見せてやろうではないか」

「分かりました。早速行ってきます」


 シドマ国王の指示で人が動く。これが王の持つ権限なのか、と若干ながら感動に浸る。


「さて、カケルも移動するぞ。車を出してくれ」

「僕もついていっていいかな?」


 エルド王太子が意気揚々に名乗りを上げる。


「…うむ、今後のためにもなるだろうし、いいだろう。準備してくれ」


 シドマ国王を先頭にゾロゾロと人が移動する。今日はなんだか動いているばっかりだなぁ。

 レンペルス城内を移動し、入ってきた時とは別の場所から外に出る。少し行くと数台の車が停まっていて、その周りを十数騎の兵が取り囲んでいた。


「急な呼び出しですまない。海軍基地の第一造船工廠に向かってくれ。司令長官には了承を得ている」


 シドマ国王はそこにいる全員に指示をする。付け加えて、移動するルートについてもなるべく人通りの少ない道を走るよう言った。

 シドマ国王が乗り込んだ車に俺も一緒に乗る。全員の準備が出来ると、騎兵隊を含んだ一行はレンペルス城を出る。

 横道に入り、来た時よりも長い時間をかけて海軍基地の門をくぐる。騎兵隊は門の前で散開し、車数台のみで基地内を移動する。

 そこから数分ほど走ると、巨大な建物が目に飛び込んできた。ここが第一造船工廠なのだろう。外見は長い期間放置された倉庫のようだ。まぁ潮風に晒されて外壁が腐ったといったところか。

 俺たちを乗せた車は、建物の入口で停まった。シドマ国王から順に車から降りる。俺も後ろから慌てて追いかける。シドマ国王やエルド王子はためらうことなく、大きく開いた建物の入り口をくぐった。

 一緒になって建物へと入ると、そこは学校の体育館ほどの大きさを持ち、木屑と鉄とオイルの匂いで満たされていた。


「あぁ…良い香り…」


 男子なら誰もが惹かれるであろう、あの素晴らしい空気が俺の身体を包み込んでいる。

 そんな感傷に浸っていると、周りがざわめいていることに気が付く。こちら側には連絡が行ってないのだろうか。


「国王陛下、突然の訪問とは一体何事でしょうか?」

「君は確か…」

「第一造船工廠現場責任者のマクトフです。司令長官からは至急の要件だと聞いておりましたが、まさか陛下が足を運びになるとは…」

「そこは詫びをしよう。本題だが、現在使用していない船台はあるかの?」

「確か…3号船台が使われていないはずですが…。しかし陛下、いったい何に使うんです?」

「直に分かるだろうぞ。案内を頼めるか?」

「それでしたら、ちょうど3号船台勤務の人間がこちらに来ていますから、そいつに案内させましょう」


 こうして呼び出されたのは俺と同い年くらいの少年だった。少年は最初、国王を見て怖気ついたが、すぐに自分のなすべきことを実行した。

 3号船台へは、歩いて十数分の所にあった。途中竜骨(キール)を置いている船台と中型の艦艇を建造中の船台を通り越す。

 やっと着いた3号船台は、大規模建造計画がない限り滅多に使われることはないらしく、整備員が定期的に船台の保守点検を行っているらしい。


「カケルよ、これならどうだ?」

「んー、大丈夫…そうですね」

「よし。では現場責任者のマクトフに、3号船台の使用許可を。それと司令長官にこれからの予定について再度了承を頼む」


 こうして3号船台の周りでバタバタと慌ただしく準備が進む。船台に滑走台を設置したり、観客のために椅子を並べたり…。

 俺も何か手伝うべきなのだろうが、国王に昼食に誘われてしまい、近くにあった簡素な椅子でサンドイッチのようなものを食べた。


 こうして約束の時間を迎え、全ての準備が整った。

 だが…。


「人多くないですか…?」


 ノーエ派の議員は勿論のこと、最前列には正装した各国の大使が並び、後ろの方にはここの技術者や海軍関係者が大集合していた。


「せっかくの晴れ舞台だ、盛大に行わなければな」

「んな殺生な…」

「それに、各国の関係者も君の能力に興味を持っている。防衛連盟理事会に君の今後を含めた方針を提出する前に、その能力を知ってもらえれば後々気が利くだろうぞ」


 そう言ってシドマ国王は、演説をしに前へ行く。

 そりゃ自分に理解を持ってもらうなら見てもらうのが一番だろう。しかしそれをどう捉えるかは全くの別物だ。


「では今日のメインイベント、カケルによる艦艇の建造を見てもらおうぞ」


 シドマ国王に呼ばれ、俺は考え事を止めて前へと出る。


「カケルよ、早速始めてくれ」

「了解しました」


 俺は船台の中に入り、息を整える。

 後ろから痛いほどの視線を感じるが、そんなのはすぐ気にならなくなるだろう。

 深く精神を落ち着かせる。自分の中にある「吹雪」の構造を思い浮かべ、超高密度の魔力を一気に集中させる。


 まずは竜骨キールを設置し、肋材を生成しつつ鋼板も一緒に貼りつける。大まかに船体の外殻が完成すると、甲板やビームなどをどんどん設置する。この時に一緒に機関を生成する。

 こうして「吹雪」でやったことを、ほぼそのままトレースしたようなものを船体が完成するまで休みなく続けた。


 もう何時間も魔力を放出してるからか、頭が絞められるような感覚に視界がグニャグニャになり膝が笑う。正直な話、進行形でぶっ倒れそうだ。

 そんな状態でなんとか進水できるところまで持っていくことができた。


「ひ、ひとまず完成です…」

「大丈夫か?」

「少し…休憩すれば…」


 気付けば太陽が地平線の淵に触れそうになっていた。

 シドマ国王は関係者に説明をしているが、話が頭に入ってこない。それほどまでに体は疲れているのだろう。だが非常にざわついているのは分かる。



 吹雪型駆逐艦2番艦「白雪」進水直前である。

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