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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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19/115

16海里目 王都着

 グロフ島を出発して丸一日、ハジーサ島を発ってからまもなく一週間が過ぎようとしていた。もうすぐで王都に到着する。

 正直、王都に来るまで何にもなかった。若干ピンチになったといえば、真水が足りなくなったことと、貯蔵庫から高魔力変換機に通じる魔力伝達パイプに亀裂が入っていたことぐらいだ。

 水に関しては特に問題はないが、亀裂が生じていたのは結構危なかった。ここから漏れ出していた魔力というのは何もない状態であるため、外部からなにかしらの衝撃、いわゆる属性別魔法の発動が近距離で行われた場合、良くて魔法の暴走、悪ければ艦の周辺数百mが想像を絶する程度の被害をこうむることになる。簡単な話、工業用ガスボンベからガスが漏れ出しているところで煙草を吸うようなものだ


 さて、現在深夜の1時過ぎ、王都の南西約10kmを航行中である。今、俺はものすごい眠気を噛みしめながら艦橋に立つ。なぜなら、入港に関していろいろ言われてしまったからだ。

 昨日のうちに外総館に連絡したところ、日が昇る前になるべく目立たないようにくるように言われた。しかも、港の目立たない所に案内するという。その際の目印としてシドラール国の国旗(フォーシルア)を掲げるよう指定された。民衆から「吹雪」のことを隠したいのは分かるんだが、なんか一方的な注文ばかりで嫌になっちまうな。まぁ、なんだかんだ一時間しないうちに、港へと近づくんだけど。


 シドラール国の王都は正式にはラガスーロという。ラガスーロは元々、当時複数あった王宮の移転先の候補として計画・開発され完成した城郭都市だが、あの大災厄の後は南側が海岸になってしまったため、そこに港湾を整備し、民間用と軍用の港を設置した。さらに元からあった陸軍に位置付けられる国立陸上団をもって、都市機能を完備したと判断され、約300年前に王宮をラガスーロに移転してきた。以来、ラガスーロは王都として存在し続けてきたのだという。


 そして俺達が案内されるのが、この王都にある軍港、ラガスーロ海軍基地である。

 その海軍基地まで目と鼻の先というところで、基地から何かが来る。


「あれは…おそらく案内役の船です」


 双眼鏡を覗いていた部下の一人が言う。


「ちょっと探照灯点けてきます」


 羅針艦橋の屋根にある人孔から外へ出て、そのまま左舷の探照灯の電源を入れる。探照灯は本来、アーク放電による発光によって照らすが、案の定魔力による代替で何とかしてる。


 まばゆい白色の光線が一直線になって海面を照らす。少し向きを変えると、一隻の外輪船が姿を現した。全長約50m弱に煙突を二本つけた、船尾式の外輪船である。大きさ的に連絡船かなにかだろう。


「おい、カケル!聞こえるか!」


 人孔からトーラス小艦隊司令官が顔を出して、俺のことを呼んでいる。


「はい、なんでしょう?」

「連絡船からの指示だ。『我に続け』だそうだ」

「分かりました。指示通りについて行ってください」

「了解した。…後、その明かりは消してくれ」

「あ、はい」


 今夜はそこまで暗くないが、連絡船は念のためにと灯りを灯している。その航路を外れないように「吹雪」は進んでいく。

 気付けば、護岸整備された埠頭の最も西端に来させられた。なるほど、東側に民間用のラガスーロ港、北側に陸上団のラガスーロ駐屯地、周りには大小さまざまな帆船が停泊している。ここなら民間人に見られる可能性が低い。


 その後、異様に明るい部分が目に入る。おそらく停泊する場所を指定されているのだろう。岸壁に接岸するように停泊するのは普通の操舵技術では不可能である。ここは一つやるか。


「これより接岸作業に入る。『吹雪』の操縦指揮を譲渡せよ」

「了解」

「周辺への監視を厳となせ。両舷前進半そーく赤15、おもーかーじ」


 円弧を描きながら岸壁へ接近する。


「両舷機関停止、もどーせー、舵中央」


 岸壁まで目測で15mほどまで寄せた。


「接岸のために横移動を開始する。接岸準備!」


 何人かが係留索を投げ飛ばすため、甲板上で待機する。一方で、埠頭にいる人間ももやい止めの周りで待機している。

 ゆっくりと、ゆっくりと接近する。

 岸壁と左舷の幅が1mになったところで、艦を固定するため一斉に係留索を投げる。それを埠頭側の人間か受け取り、もやい止めに素早く縛り付ける。

 そして岸壁と完全に接したところで、俺は艦の移動を止めた。


 埠頭側から艦の後部に、渡り桟橋が架けられる。そこから十人を超える大所帯が乗り込んできた。

 一体何者が乗り込んできたのかと、俺とトーラス小艦隊司令官他数人を連れて後部甲板へ見に行った。

 そこにいたのは、煌びやかな恰好をした集団だった。


「我々はシドラール国外界総合事務館審問部のものだ。流浪者のウナバラカケルはどこだ?」

「自分ですが?」

「君が流浪者か…。いきなりで申し訳ないが、外界総合規定第7項に基づいて君の身柄を一時的に拘束させてもらう。以降許可あるまではこの船から出ることはできないものとする」


 かなり強引だなぁ。


「そちらの海軍中佐は、召喚中の第一方面第二哨戒班司令官トーラス・ジンブルグ中佐であるか?」

「そうだ」


 トーラス小艦隊司令官も出頭されてたんだったな。


「それで、そちらの老人は…?」


 一瞬、老人が誰のことか理解できず、振り返ってみると、そこには島長さんの姿があった。


「儂はハジーサ島の島長をやっとるベイエルという者じゃ。島のモン達の移住先を探しておっての、連絡を取らせてはくれんかの?」


 うわぁ、あからさまに嫌な顔してるなぁ。


「その話は後で聞こう。それより今は、そこの流浪者と海軍中佐に話がしたい」


 そう切り出したのは、集団の後方に佇んでいる男だった。

 その集団の中でも、より一層煌びやかな装飾をした初老の男性である。

 周りの人間はもちろん、トーラス小艦隊司令官とその部下もその男性に最敬礼をする。


「え、誰?」

「ふむ。流浪者ならば、私の顔を見ても分からぬものか…」


 その男性は首をひねってブツブツと何か言う。そりゃあ周りの反応を見れば、立場上偉い人だってのは分かるが。


「まぁよい。ならば自己紹介しよう。私はシドラール国第21代国王シドマ・グラリス・レーベルクだ」


 シドラール国の…国王!?

 次の瞬間には、俺は直立し、最敬礼になっていた。


「もっ、申し訳ありませんでした!」

「いやいや、分かってもらえればそれで良い。流浪者というのは話を聞かん曲者が多いものよ。態度を変えてくれるだけでも、君はこれまでの流浪者とは違うようぞ」


 そういってシドマ国王は高笑いをした。


「陛下、『アレ』をやってしまっても構わないのですか?」

「む、そうだな」


 シドマ国王はこちらに向く。


「外界総合規定に基づくならば、設備の整った室内で適正尋問を行うべしとあるが、今回は特例として『今ここ』で尋問を始めようと思う。と同時にトーラス・ジンブルグ中佐への職務上の事情聴取も行う」


 尋問とは言っても十字架に磔にされたりはせず、面接のように椅子に座って行われた。内容も自分の名前、能力名、具体的な能力の説明と極普通に答えた。トーラス小艦隊司令官にも、俺がどんな人間だと思うか問わされていた。その間も、自分に降りかかる視線が痛いが。


「うぅむ…。彼は不思議な人間だな。その力さえあれば国の一つや二つを侵略することもたやすいだろうに、それをせずに我々と共闘してくれるというのだから」

「自分を救ってくれた国の人にそんな卑劣なことはしませんよ」

「さて、尋問は以上だ。君は我々と共に歩む仲間となった。君には相応の位がいるのだが、少し話し合いが必要だ」


 シドマ国王は立ち上がり、渡り桟橋へ向かう。


「日が昇ったら、また迎えに来よう。それまで休むとよい」


 日が昇るって…あと2時間程度しか無いんですが…。

『物語を1.3倍位楽しむための豆知識コーナー』

王都ラガスーロ

 国立陸上団と海軍基地および民間用湾港を内包した港湾城郭都市

 城郭内面積:13平米弱

 人口:約28200人

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