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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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114/115

111海里目 講和

 それから1ヶ月後。

 ヒルノ海上国家では、慌ただしい空気が流れていた。

 この日は、クレイル連邦およびバンイ帝国から降伏文書に批准するための国家代表団が訪れるのだ。

 すでにクレイル連邦およびバンイ帝国には停戦協定が結ばれ、現在戦闘は終了している状態にある。

 そして、国家代表団は俺たち連合艦隊がそれぞれ首都にまでお邪魔して迎えに行ったのである。

 俺は第一艦隊として、クレイル連邦の首都に赴き、国家代表団を迎えに行く。


「初めまして。私が今回国家代表団の団長を務めさせていただく、ヨーロフです」

「ようこそ、連合艦隊へ。ヒルノ海上国家までの船旅をどうぞお楽しみください」


 そんな感じで第一艦隊はクレイル連邦へ、第二艦隊はバンイ帝国へ向かい、それぞれの国家代表団を迎えにいったのだ。


「あとは彼らを丁重に送り届けるだけですね」

「帰りの便もあるぞ。まだ気は抜くな」

「分かってますよ。けど、これでこの戦争は終わりになるんですね」

「そうだな。ここまで長かったが、同時に短かったようにも思えるな」

「連合艦隊が設立されても、そんなに戦闘がなかったような気もしますけどね」

「それだけ、この世界には隔たりがあるということだ。これまでも、そしてこれからもな」

「…何うまいこと言ったみたいな顔してるんですか」

「いいだろ、今日くらいはこんなこと言わせてくれ」

「やっぱりトーラスさんも終戦するからテンション上がってるじゃないですか」

「黙って職務に励め」


 そんなことを言いつつ、連合艦隊第一艦隊はヒルノ海上国家へと向かっていく。

 ヒルノ海上国家に向かっている途中、俺はヨーロフさんと話をする機会を得た。


「こんな人間に用があるとは、司令長官殿も物好きのようですな」

「よく言われます」

「それで、何用ですか?」

「いえ、ただ単純にシム・ユーリンのことについて聞きたくてですね」

「あぁ、彼女のことですか」

「何か覚えていることはありますか?」

「そうですね…。朧げながらですが、彼女のことをクレイル連邦有史以来最悪の国家権力と記憶しています」

「ほぉ」

「彼女の帰還者による能力によって我々は操られていましたが、それはもう横暴の連続でしたね」

「彼女はその能力をどの程度まで使っていたんですか?」

「我々のような公務員は限りなく全員能力の影響下にあったと言っても過言ではないでしょう。その状態で、様々な職務を行わせていたでしょう」

「しかし、詳しくは覚えていないと」

「えぇ、残念ながら。しかし、あなたが彼女のことを止めてくれたおかげで、我々は悪夢から解放されたわけです」


 そんな感じで話を交わしていく。

 数日後、ヒルノ海上国家へと到着した連合艦隊第一艦隊は、第二艦隊と合流する。

 第二艦隊の方も、バンイ帝国の国家代表団を安全に連れてきてくれたようだ。

 そのまま、連合艦隊司令部は二国の国家代表団を防衛連盟本部に連れていく。

 防衛連盟本部で一番広い部屋である、総合議場にて今回の批准式は執り行われる。

 その部屋には、各国の代表や国家元首が参列していた。

 まずは、防衛連盟軍総司令長官のフリード・シュトロンハイム大将が降伏文書批准式に際しての挨拶を述べる。


「我々と彼ら、二つの勢力は互いに戦闘を行っていた。そしてそれは互いに多大なる犠牲を生んだ。これまで戦闘で命を散らせた者は数知れず、大量の血がこの海に流れ出たことだろう。しかし今日、ここに戦争そのものを終了させ、この世界に平和をもたらす時が来たのである。本日の批准式に参列していただいた組織の代表、各国の代表や国家元首の皆様に、感謝の意を込めたい。そして、この平和がいつまでも続くように、これからも我々は一層の努力を行わなければならないだろう」


 会場は割れんばかりの拍手に満たされる。

 まぁ、拍手しているのは防衛連盟の人々であり、今回の当事国であるクレイル連邦とバンイ帝国の国家代表団は苦い顔をしていた。

 そりゃそうだよなぁ。こんな時にどんな顔をして、どんなリアクションを取ればいいのか分からないよな。

 そんなこんなで、式典はトントン拍子に進んでいき、いよいよ降伏文書に署名をする場所まで来た。

 議場の中心に机が並べられ、そこに今回の降伏文書が広げられている。

 そこには、防衛連盟各国の代表や国家元首が署名をする欄と、クレイル連邦とバンイ帝国の署名する欄がある。

 まずは、防衛連盟の代表が降伏文書に署名する。

 今回、元首の代理として来ていた代表はシドラール国、リクア共和国、ヤーピン皇国で、国家元首が来たのはランスエル公国とレイグル王国であった。

 彼らはそれぞれ、降伏文書に署名をし、批准する。

 それが終わると、今度は今回の主役の二国の番だ。

 まずはバンイ帝国の国家代表団が出てくる。

 署名する場所を確認して、署名する。

 その様子を、会場の後ろのほうから、元バンイ帝国帝王のアトラス帝王陛下が見ていた。

 一体彼は、どんな気持ちでこの式典を見ているのだろうか。

 バンイ帝国の署名が終わると、今度はクレイル連邦の署名の番である。

 クレイル連邦の国家代表団の団長であるヨーロフさんが前に出た。

 それまでは穏やかな顔をしていたヨーロフさんであったが、いざ降伏文書を前にすると、なんだが泣き出しそうな顔をする。

 そのまま、若干手を振るわせながら降伏文書に署名をした。

 この瞬間、この降伏文書は効力を発揮し、ここに正式に戦争が終結したことを表す。

 それと同時に、防衛連盟がこの戦争に勝利したことを示す証明にもなったのだ。

 それを表すかのごとく、会場からはどこからともなく拍手が湧きあがった。


「今ここに降伏文書はすべての国家によって批准され、効力を発揮した。戦争は終結したのである」


 再びの拍手。

 中には感極まって涙を見せるものもいた。

 こうして、降伏文書批准式は終了する。

 しかしここからが本番だったりするのだ。

 これから、戦後処理が始まる。

 今回の戦争において、戦争の首謀者は誰か。また戦争による損害の補償はどうするのかといった会議が執り行われるのだ。

 まぁ、ぶっちゃけこの会議には連合艦隊は関係はない。

 しかし今回特別に、戦争終結を早めた功績としてオブザーバーとして参加させてもらえることになった。

 この会議の結果を記すとしたら、以下の通りである。

 今回の戦争の首謀者はシム・ユーリンであると断定するものとするが、現在もその行方は知れていないため、国際指名手配として捜索するものとする。

 また、シム・ユーリンという危険な流浪者を放置していたクレイル連邦はその責任を負う必要があるとし、損害賠償金に上乗せしてそれを防衛連盟に支払うこととするそうだ。

 そしてバンイ帝国は、被害者か加害者かが争点となった。この場合、先代帝王がシム・ユーリンの能力の影響を受けていたかどうかが鍵になっているそうだ。

 今回の結論では、先代帝王はシム・ユーリンの影響下に入っていたものの、側近や公務員が止めることが可能であったとして、これまた損害賠償を払ってもらうことになるらしい。

 こんな感じで会議は進んでいき、数日の時間を要した。


「しかし、よくこんな退屈な会議続けてられますね」

「これが仕事の人間もいるんだ。仕方ないだろう」

「しかし、これで本当に戦争が終わったんですね」

「そうだな。俺たちの役割も一つの区切りがついたって所だ」

「少し、さみしくなりますね」

「それも時代の流れだ」


 俺はテラル島に戻って、そんな話をする。

 俺は外の景色を見る。

 その空はどこまでも青く、雲は水平線を漂っていた。

 空はどこまでも続いている。

 願わくば、この平和がいつまでも続くように。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

この話で異世界艦隊は完結となります。

投稿初期から読んでくださった方々、最近になって読んでくださった方々など、たくさんの感想、レビュー、ポイントをありがとうございました。

私、紫の別の作品も読んでいってください。

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