108海里目 次なる行動
ものの30分程度で現場に到着する。
俺は駆逐艦の艦橋から、海面をジッと見つめた。
「本当にここにあるんですか?」
俺は同乗しているアルトさんに話を振る。
「本当だ。この世界の裏にある世界アカシア図書館で調べてきたからな」
「世界アカシア図書館?」
「簡単に言えば、アカシックレコードのことだ」
「なるほど」
そんな話をしながら、俺はどのようにしてブルヴィの槍を回収しようか考えていた。
「アルトさん、ブルヴィの槍って海底山脈の旧サラパイア山山頂に突き刺さっているんですよね?」
「そうだ」
「海底どのくらいとか分かります?」
「確か、50mくらいと思ったんだが」
「深海よりかはマシか」
深海は水深200mより深い場所のことを指す。
それ以上になると、水中を光が通らなくなり真っ暗になる。
それよりも浅い場所にあるのだから、ありがたい限りだ。
それと同時に、水圧の問題をどうするか考えよう。
水深50mというと、水圧は6気圧くらいか。
人間が潜れる限界は、世界記録にして約200m程度。
それよりかは幾分楽な部類に入るだろう。
しかし、何の訓練も受けていない人間が急に潜水をすると、身体に支障をきたす恐れがある。
そのため、この場合は能力を使用して潜水するのが一番だろう。
俺は甲板に降りる前に、体につけている余計な装備を外し、潜水の準備をする。
「しかし、本当に大丈夫か?」
一緒になってついてきたトーラス補佐官に心配される。
「確かに大変ではありますけど、それ以上に俺がやらないと誰もできませんから」
これはある意味で、俺の決意の現れだった。
これを聞いたトーラス補佐官は、それ以上何も言わなかった。
さて、甲板に降りた俺の横に、アルトさんもいる。
「槍までの場所は俺が指示する。海原はそこに向かって泳げばいい」
「アルトさんが行くんだったら、自分が行く必要あるんですか?」
「俺は霊体だぞ。槍に触れるわけがない。それに英雄の槍に触ったら、この世界から成仏する可能性も否定できない」
「あー、確かに」
そんなことを話しつつ、俺は準備を始める。
まずは、自分の周りに海水を通さない膜のような物を張る。
そしてその膜の中に、潜水中でも呼吸ができるように、空気を目一杯詰め込む。
これは海中でも呼吸ができるようにするためだ。
もし呼吸が苦しくなったら、酸素を創造すれば問題はないけど。
そんな状態で、俺は海の中に飛び込んだ。
ちょうど俺の周りだけ、能力によって空気の層ができているような感じだ。
このままでは海中に潜ることができないため、ここでも能力を使って沈んでいくような感じにする。
そのまま海底につくまで、しばらく沈んでいく。
数分くらいしたところで、ようやく海底に到達した。
どうやら斜面のようになっていて、踏ん張っていないとより深い海底に転がってしまう感じである。
そこに、一緒についてきたアルトさんも合流する。
「海原。ブルヴィの槍はこの山の頂上にあるはずだ。まずはそっちに向かうといい」
俺は指示された方向に向かって、海底の登山を始める。
しっかし、降りた場所が場所だから、急な坂で困ったもんだ。
能力も一緒になって使わないと、まともに登ることもできないぞ。
そんな感じで、登山をすること5分ほど。
ようやく山の尾根の到着する。
ここからさらに山頂に向かって登らなくてはいけない。
歩道でも整備してほしいところだ。
さらに登山を続けること十数分。
ようやく山頂のようなものが見えてくる。
それと同時に、山頂に何か刺さっているようにも見えた。
「あれだ。あれがブルヴィの槍だ」
槍の元に、俺は到着する。
一見すると、海藻や苔のようなものが生えており、これが本当に槍なのか疑わしいほどのものであった。
まぁ、大災厄の時に沈んでそのままだったから、軽く数百年は海中にいることになるから仕方ないのかもしれない。
とりあえず、俺はその槍を手にして、引き抜こうとする。
その時だった。
槍は光り輝きはじめ、その光は海面でも観測できるほどだ。
そのまま槍は簡単に引き抜け、槍本体についていた異物はすべて取り払われた。
そして、その下からは金属のようなもので出来た黄金の槍が出てくる。
「これが…ブラヴィの槍…」
俺はその神々しさに、思わず息をのむ。
目を奪われる程の美しさ、金とも白金とも見て取れる金属、表面に施された装飾の豪華さ。
シンプルながら壮大な何かを感じ取ることのできる槍であった。
いや、こうしている場合ではない。
すぐにでも戻って、この槍を使ってシュル=ヌェイットの化身を止めなければ。
俺は気を取り直して、浮上を始める。
数分かけて戻った俺は、そのまま駆逐艦の元に戻っていく。少しばかり遠くの所に来てしまったようだ。
駆逐艦の元に戻った俺は、その槍を携えて連合艦隊の元に戻る。
連合艦隊の方では、クレイル連邦の現在の状況を把握するために、いろいろと行動を起こしているようだ。
現在は駆逐艦を何隻か内陸の方に残してきて、偵察活動を行っているらしい。
連合艦隊司令部のある「大和」艦橋に戻ってきた俺は、現状について聞く。
「現在の目標の様子はどうだ?」
「司令長官、現在目標は我々のほうを目標として、内陸を移動してきています」
「移動速度は?」
「現在早歩き程度の速度とのことです」
「ここに来るまでにはまだ時間があるな…」
「司令長官、偵察中の駆逐隊から、目標の素性を明かすための攻撃要請が来ています」
「アルトさん、確かシュル=ヌェイットの化身は生物に対しては有害なんですよね?」
「あぁ、そのはずだ」
「なら、砲弾にはなんら興味を引かない可能性がある。攻撃を許可しよう」
「了解」
前線では、俺から指示を受けた駆逐艦隊が攻撃の準備に入っていた。
「主砲装填!弾種徹甲弾!」
「主砲旋回!」
「照準合わせ!」
「照準よし!」
「撃ち方始め!」
駆逐艦の主砲から砲弾が飛び出す。
主砲は数秒飛翔したのち、目標にぶつかる。
スライム状の身体から、ブヨブヨとした肉体が剥がれ落ちた。
その肉体は、地面に落ちるとそのまま自身の消化液と酸性によって蒸発するように消えていった。
「主砲による攻撃、効果あり!」
俺の元に、このような報告が入ってくる。
「よし、これなら主砲での攻撃が入る。これは吉報だ」
俺は駆逐隊に攻撃を一時中断させ、進行方向の確認だけをするように指示を飛ばす。
その間に、俺は何か策を講じることができないか、考える。
「確か、シュル=ヌェイットの化身は人類の叡智である炎を浴びせたあと、コアを破壊することで無力化することができるんだったな」
となると、炎を浴びせるんだったら爆弾のようなものを落としたほうが効率はよさそうだ。
しかし、そのような類いの物品を今まで作ってこなかった。
これは少々痛手だな。
だが、魔法による爆破なら、今ここで作ることも可能ではあるだろう。
そんなことを考えていると、駆逐隊から報告が入る。
「偵察の駆逐艦隊から通信です。現在、目標の大きさが目に見えて大きくなっていることが確認されました」
「巨大化しているだと?」
俺はなぜ大きくなっているのか、考えた。
そして理解する。
「もしかして、道中の植物を取り込んで巨大化している?」
道中にある植物なんて、たかが知れているが、それでもその考え以外に思いつくものが見当たらなかった。
とにかく、俺は駆逐隊に連絡を取る。
「今すぐ距離を取れ。巻き込まれたら大変なことになる」
とにかく今は、現状を観察する他ない。
そして俺はあるものを作ることを決めた。
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