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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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107/115

104海里目 到達する場所

 クレイル連邦の海岸線から内陸におよそ15km。

 ここには川沿いに隣接するように村が存在していた。

 川から得られる恩恵を受けながら、村の人々はのんびりと暮らしている。

 そんな中、村にいる一人の少女が母親の元に駆け寄った。


「お母さん、変なお船がいるよ」

「船?こんなところに船なんてあったかしら?」


 母親は疑問に思うが、すぐに考えを変える。


「もしかしたら、お国の船が川を上っているかもしれないわ」


 クレイル連邦の特性上、たまに変な形をした兵器を作ることもある。

 母親はそのことを言っているのではないかと考えたのだ。


「お国のことだし、ちょっと見に行ってみるのもいいかもしれないわ」


 そういって母親は、少女にその船を見た場所に案内してもらうことにした。

 しかし少女が案内したのは、川がある方向とは真逆のほうである。


「こんなところに船があったの?」


 母親は確認するように、少女に問う。


「うん、あっちのほうをお船が通ってたの」


 そう少女は指を指す。

 母親はその方角を、目を凝らして見てみると、一直線に木々がなぎ倒されているのを見つける。

 まるで、何かが地を這ったような感じだ。

 その直後、海の方向から地鳴りのような音が聞こえてくるのを感じた。

 母親はその方向を見ると、そこにはまさしく海に浮かんでいるはずの軍艦が進んでいたのだ。

 それは連合艦隊の松型駆逐艦の「樫」である。

 母親は、何が起こったのか分からず、そのまま固まったようにその艦を見ていた。

 本来、海上に浮かんでいるはずの艦が、なぜ陸上を走っているのか。

 それはもちろん、この男の仕業である。


「へっくしょん!」

「どうした?夏風邪か?」

「まさか。この時期にありえませんよ」

「どうだか」


 連合艦隊の艦は現在、5kmという範囲内でクレイル連邦の大地を疾走中である。

 なぜ、連合艦隊の艦が陸上を走れるかというと、船体にそのような魔術を仕込んだからである。

 まず船体から一定距離にある物質を液体と同等の性質に変化させる。

 その状態で艦を前進させると、まるで波を切るような状態にすることができるのだ。

 しかし、このままでは地面が重力に対して垂直ではない場所では流れが発生してうまく前進することができない状態に陥る危険がある。

 そこで俺は、魔術にある工夫を凝らした。

 それは、地面の垂直方向に疑似的に重力を発生させるというものだ。

 こうすることで、船体には垂直に重力がかかり、うまく前進することが可能なのだ。

 その分、船内は傾くことになるが。

 この処置を連合艦隊の全艦船に施している。

 これが俺の言っていた作戦、切り札だ。

 周辺には、艦船に巻き込まれないように陸軍連合部隊が走っていたり、はたまた艦船に乗って一緒に移動している。

 こうすることで、移動にかかるコストを削減しているのだ。


「さて、改めて目標までの位置を確認しよう」


 トーラス補佐官は海図室に俺を連れていく。


「今回の目標は敵の重要な場所、すなわちクレイル連邦の首都だ。現在位置から首都までは約100km程度である」

「案外遠いですね」

「それでもバンイ帝国の時よりかは近いさ。問題は首都の包囲後だ。首都は民間人も多い上に、攻撃対象になりうる建物も少ない」

「攻撃するには不便な場所であると」

「そうだ。そのため、威嚇攻撃を行う必要があると考えている」

「威嚇攻撃ですか?」

「威嚇攻撃に必要なのは、分かりやすい恐怖であると思う」

「何か考えがあるんですか?」

「『ヤマト』『ムサシ』両艦の空砲による威嚇攻撃だ」

「確かに、大和型の主砲はダイナミックと言いますか、空砲だけでも脅威になりうるとは思いますが」

「ただ単純に民間人の恐怖を誘えばいい。それに今回は陸軍や乙賀組の協力を得られているからな」

「彼らの活躍に期待しましょうか」

「そうだな」


 こんな感じで、連合艦隊はクレイル連邦の大地をかき分けて進んでいく。

 その道中、何か基地のようなものを確認したという。


「先行していた陸軍部隊の偵察によると、どうらやクレイル連邦の陸軍基地らしい」

「なるほど。では、今叩いておく必要がありますね」

「では、先頭を行く駆逐艦に叩くように通達してこよう」

「お願いします。なるべく足止めできるように馬小屋などを攻撃するように言ってください」

「了解した」


 戦闘を行く松型駆逐艦は主砲を旋回させる。

 そのまま陸軍基地の敷地内に突っ込む。

 その様子を見た兵士は、慌て出す。

 こんな内陸の土地で、巨大な艦船を見るとは思わなかったのが原因だろう。

 そのまま松型駆逐艦は、主砲を施設が集中している場所に向けて放つ。

 若干主砲を俯角に向ける必要があったが、施設は無事爆発四散した。

 その中には厩舎や装備保管庫が含まれており、これの撃破により、この基地は連合艦隊を追撃する能力を失った。

 連合艦隊はそのまま前進を続けていく。

 途中、山を越えるような場所もあった。


「こんな山の間を越えていくのか?」

「ここ通らないと首都にたどりつけないじゃないですか」

「確かにそうなんだが、だからってわざわざ困難な道を行くのはどうかと思うぞ?」

「大丈夫ですって。全艦に船内の傾きによる装備品の移動に注意するように連絡してください」

「…分かった」


 連合艦隊は山脈の間を縫うように進んでいく。

 船体は斜めになっているのに、船体自体にかかっている重力は地面に対して垂直という、なんともミスマッチな状態になっている。

 そんな山脈をうまく越えて、連合艦隊はいよいよ首都を目前に控える場所までやってきた。

 クレイル連邦の首都は、何重かの壁に囲まれている城壁都市であるようだ。

 これなら包囲は比較的簡単である。


「いよいよ首都だ。駆逐艦は首都の城門を塞ぐように移動。ただし反対側の一か所は空けておけ。軽巡洋艦はそれを補助。重巡洋艦は向かって奥側に移動。戦艦はその場で停止」


 俺の指示通りに、連合艦隊は移動していく。

 気球による観測を行いつつ、連合艦隊は首都を一部を除いて包囲していくことに成功した。

 ついでに陸軍連合部隊も一緒に城門を制圧し、不完全な包囲が完成する。


「では威嚇攻撃を開始しようか」


 俺は指示を行う。

 「大和」「武蔵」両艦の主砲に炸薬のみを装填させる。

 そして主砲の仰角を最大にまで上げる。

 これで準備は整った。


「主砲一斉射、撃て」


 巨大な爆炎と黒煙が発生し、城壁を上回る高度にまで達する。

 この高さなら、城壁内部にいる民間人にも見えるだろう。

 ここからさらに城壁内部に陸軍連合部隊が突入し、民間人を追い払う行動に移る。

 陸軍連合部隊にはいろいろ注意したいところはあるものの、そこは現場の判断に任せるしかなかった。

 そんな感じで、一か所のみ空いた城門から民間人が逃げ出すことを期待する。

 時を同じくして、首都にある大統領官邸ではある報告がなされていた。


「報告します!先ほど首都を謎の艦艇が包囲し、砲撃を行いました!」

「ほう、ここまでやってきたか」


 その報告を受けた女性が、にやりと笑う。


「いかがいたしましょう?」

「私が直接出よう」

「なっ!?いいんですか!?」

「構わない。あの艦たちからは、私と同じような感覚がするからな」


 そういって女性は窓際に移る。


「楽しめそうだな」


 女性は不気味に笑った。

 その女性こそ、シム・ユーリンである。

 ここで今、一大決戦が行われようとしていた。

本作を読んでいただきありがとうございます。もしよろしければ下にある評価ポイントを入れてくれると助かります。

また、感想やレビューを書いてもらえると作者の励みになります。

次回も読んでいってください。

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