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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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100海里目 画策する案

 先の防衛戦により、クレイル連邦海軍、防衛連盟海軍双方に多大な被害が出た。

 クレイル連邦の方は、50隻を超える艦船が沈み、一方で防衛連盟海軍はレイグル王国、ランスエル公国、ヤーピン皇国合わせて29隻が沈んだ。

 この結果によるものなのか、クレイル連邦で諜報活動中の乙賀組からは、連邦内部での軍の活動が萎縮してきているとの報告を受けている。


「これが本当ならばありがたい限りなんですがねぇ」

「まったくだ」


 そんなことを俺とトーラス補佐官は話す。

 一方で、防衛連盟側も少なくない被害を被っている。

 これにより、今後防衛連盟内での海軍の影響力が小さくなるのではないかという懸念がなされているのが現状だ。

 また最近は俺のお願いや戦時造船法により、連合艦隊の艦艇が中心に建造されている。

 そのため、各国は自分の所の海軍を増強することができない状況にあるのだ。

 なんの因果か知らないが、回りまわって自分の首を絞めることになるとは思いもしなかった。

 そんなわけで、現状連合艦隊による防衛連盟領域の打撃力というのは重要度を増しているとも言えよう。


「なんとも大変なことになってしまったな」

「それに司令長官個人が一枚噛んでいることははっきりしておいたほうがいいな」

「それは仕方ないことですよ。ははは」

「笑っている場合じゃない。真面目な話どうするんだ?今後も防衛連盟海軍の艦船が沈むような事態に陥ったとき、連合艦隊で対処仕切れるのか?」

「それは今後艦艇の増強をしていくことにします。幸いにして一型タンカーを担当してくれた造船所は手が空いているので、これを機に連合艦隊の戦力をグンと増強させちゃいましょう」

「人員はどうする。すぐに隊員は増やせないぞ」

「今は沈んだ艦の人員を使って補填するという形で行こうと思います」

「しかし、3ヶ国ともそれに賛成するとも限らないだろう」

「多分、大丈夫です。自信はあまりないですけど」


 その言葉に、トーラス補佐官は思わず溜息をついてしまう。

 とにかく今は戦力の増強を行う必要があると考える。

 とりあえず、今は駆逐艦を中心に増やそうかな。

 それも重要であるが、それよりも今はやるべきことがある。

 それは次の作戦で行う予定の、陸上戦力増強の方法の研究だ。

 今は大体のイメージが頭の中でできている。あとはそれを形にするだけである。

 早速俺は松型駆逐艦のダミーを使って研究を始めた。

 この技術には、船体表面にある工夫を凝らすことで可能となる、はずだ。

 その研究を集中して1週間ほど行う。

 そうした結果、無事に研究は完了した。

 早速テラル島にある空いた土地で実験をしてみる。

 その結果、実に良好な実験結果を得ることができた。

 俺の考えは間違っていなかったのだ。

 あとはこれを実戦に出すのみである

 早速この研究結果の方を、防衛連盟軍総合参謀本部へ報告するためグライディン少将の元を訪れた。


「…本当に研究が完了したのか?」


 グライディン少将は勘ぐるように聞いた。


「えぇ。実際に実験も行い、その結果良好であることを示しました」

「…あれができるとは考えにくいと思うんだがな」

「ですが、今後陸上戦力の増強を考える上では避けては通れないと思いますよ」

「それは分かっている。だが、本当にそれをして有効なのか、疑問でもあるのだ」

「確かにこれの技術は前代未聞です。しかし、前代未聞であることを乗り越えないと、今後発展は見込めません」

「うぅむ…」


 グライディン少将はものすごく悩んでいる。

 それもそうだ。

 この技術を使うのは聞いたこともないし、今後出てくることもないからな。

 しかし、ここでこの技術を使わないと、この長い戦争に終止符を打つことは不可能であるとも言えるのだ。


「なんならこの後その技術を用いたデモンストレーションでもしますか?」

「いや、いい。君が言うのなら本当なのだろうから」


 そうしてひとしきり悩んだ末、グライディン少将は口を開く。


「…分かった。その技術を使った作戦立案を許可しよう。1週間以内に作戦の概要を提出してくれ」

「分かりました。すぐに作成してきます」


 俺はすぐにテラル島に戻り、作戦の概要を立て直す。

 今度の作戦は「砂上の突風」作戦の焼き増しといったところか。

 「砂上の突風」作戦の時はあれだけ失敗するかもしれないとか考えていた作戦だが、結局はそれにすがるような形になってしまった。

 しかしそれは、今回開発した新技術によって解決の糸口が見えたのが一番大きい。

 今回はその新技術を盛り込んだ作戦となっている。

 こうして作戦概要案を実際に総合参謀本部に提案した。


「…なるほど」


 俺の提案した作戦の概要を見て、グライディン少将はこう言った。


「カケルはこの通りに行くと思っているか?」

「多少の遅延などは生じるかもしれませんが、大体はこの通りに行くと考えています」

「分かった…。一応こちらでもこの作戦案で検討して、実現可能であるなら修正を加えて実行に移そう」

「よろしくお願いします」


 こうして作戦案は受理されることになった。

 俺はその作戦に間に合うように、いろいろと行うことにした。

 まずは今回の作戦を実行する上で、前段作戦として偵察活動を行うことにする。

 これは完成した「龍驤」とRAF-4Eを使ったものだ。

 これを使って敵の重要施設などを確認したいと考えている。

 この考えを総合参謀本部に打診した所、今度の作戦の判断材料に使いたいから是非やってくれとの回答を得た。

 早速俺は連合艦隊を動かす。

 今回は足の早い艦船を中心に動かすことにする。

 そうなると、おのずと軽巡洋艦と駆逐艦が出てくることになるだろう。

 今回は天龍型2隻と吹雪型4隻、そして松型4隻で行くことにする。

 旗艦は「龍驤」となるため、今回は空母機動部隊となる。

 これ第2艦隊にしようかな。

 そんなことを考えながら、連合艦隊はクレイル連邦に向けて出発する。

 艦隊は旗艦である「龍驤」を中心に、輪形陣を取りながら進んでいく。

 そんな中、俺は「龍驤」に乗っているオーウェンの元を訪れた。

 俺はオーウェンの自室のドアをノックする。


「オーウェン、いるか?」

「少し待っていてくれ」


 そういうと、少し時間をおいてオーウェンが出てくる。


「お邪魔だったか?」

「いや、ちょうど祈りの時間が終わったところだ。立ち話するくらいなら中に入ったらどうだ?」

「そうさせてもらうよ」


 そういって俺はオーウェンの自室に入る。


「それで、俺になんの用事だ?」

「実は今度の偵察行動のことなんだがな…」

「なんだ、心配にでもしに来たのか?」

「いや、そうじゃない。オーウェンも薄々気付いていたかもしれないが、同乗者のことだ」

「あぁ。そういやそうだな」


 RAF-4Eは元となったF-4同様、乗員は2人となっている。

 一人は操縦を担当し、もう一人が偵察ポッドの操作を担当する。

 しかし、前回の飛行の時はオーウェン一人で飛んでいた。

 そのため、同乗者が現在の所いない状態にあるのだ。


「それで、同乗者は見つかったのか」

「あぁ。じゃなきゃここに来ないよ」

「そうか。で、誰なんだ?」

「もういるよ」

「は?」

「オーウェンの目の前に、すでにいるよ」

「…まさかお前が?」

「そうだ」


 オーウェンは一瞬疑問を思い浮かべるが、すぐに真顔になる。


「悪い冗談はよしてくれ」

「冗談じゃない。本気だ」

「…冗談じゃないんだな?」

「そういってるだろ?」

「俺は別に構わんが、司令部がなんていうか分からないぞ」

「すでに許可は取り付けている。いつでもいけるさ」

「まったく。そういうところは張り切るんだからな」


 そういってオーウェンは立ち上がる。


「せめて失神しないでくれよ」

「問題はないさ」


 こうして偵察作戦は実行されようとしていた。

本作を読んでいただきありがとうございます。もしよろしければ下にある評価ポイントを入れてくれると助かります。

また、感想やレビューを書いてもらえると作者の励みになります。

次回も読んでいってください。

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