98海里目 気配がする
防衛連盟領海域に戻ってきた連合艦隊は、早速諜報員との連絡を行ってみる。
「周波数を合わせて…っと」
この装置は日ごとに周波数が変化するように設定されている。
そのため、その周波数を設定しないと使えないようになっているのだ。
我ながら面倒な装置を構築したものだ。
しかしその性能は折り紙付きであり、しっかりと役割を果たしてくれることだろう。
「そろそろ定期通信の時間だな」
「ちゃんと届くんでしょうか?」
「確かに心配ではあるがな」
トーラス補佐官らがそんなことを言っていると、定期通信の時間になる。
通信機から一瞬ノイズが入ったあと、声が聞こえてきた。
「こちらイトウ。敵地の街近くに潜伏中。どうぞ」
通信機の周りにいた隊員たちは「おぉ」と声を上げる。
「こちら連合艦隊、現在までの状況はどうだ?どうぞ」
「こちらイトウ。クレイル連邦の国力の状況を調査中。現在までのクレイル連邦はリクア共和国の国力と同等であると推測される。どうぞ」
リクア共和国と国力が同等であるということは、陸軍もそれなりに備わっているということになるだろう。
「これは少し厄介なことになりそうだ」
そんな考えを汲み取ったトーラス補佐官がそうぼやいた。
「こちら連合艦隊、今後も情報収集に尽力せよ。定期通信を終了する。どうぞ」
「こちらイトウ、了解した。定期通信を終了する」
そういって通信が切れた。
ほんのわずかな情報ではあったものの、有益な情報を得たことは確かだろう。
「あとはここに人員を配置して、定期的に通信させるだけですね」
「いや、そうとも限らないだろう。もしかすると突然の通信なんか来るかもしれない」
「その時はその時ですよ。まずは人を置かないことには始まりません」
そんな感じで、テラル島に通信施設を設置することになった。
現在通信機が設置してあるのは連合艦隊本部庁舎の一番上の部屋である。
ここでも十分に聞こえてはいるものの、総合的に情報を収集したいと考えた俺は、テラル島の一番高い場所に通信施設を作ることにした。
とりあえず、その場所に鉄塔を作る。
これは通信用の鉄塔であり、海面からの高さは100m近くにした。
次に、鉄塔の根元に通信用の施設を作る。
この施設は主に通信や情報をまとめるための施設にするつもりだ。
こうして1週間ほどの時間をかけて、通信施設は完成した。
あとは各種配線をして出来上がりである。
今後クレイル連邦からの定期通信は基本ここで行うことになるだろう。
「さぁ、こうなれば次の作戦を立案するしかないな」
俺はこれまで以上にやる気を出す。
それは、次の作戦に成功すればこの戦争を終わらせることができるからだ。
早速、俺は防衛連盟総合参謀本部に連絡を取った。
すぐに返事は返ってきて、なるべく早いうちに協議したいとのことだ。
俺は数日後なら空いていると連絡を取り、後日面会することになった。
当日、俺が防衛連盟軍総合参謀本部に向かうと、ダリ中佐とグライディン少将が出迎えてくれる。
「よく来た。早速だが協議に入らせてもらう」
すぐに奥の会議室のような場所に通される。
なんだか展開が早いな。
そのまま、次の作戦に関する会議が始まった。
「先の作戦…『砂上の突風』作戦では、大きな損害は受けなかったものの、損失は被った。そのため今回の作戦では、作戦の指揮権を君に託したい」
いきなり大きな役割が回ってきた。
しかし、それは想定された内容である。
前の作戦では、若干ながら無茶を敷いていたとも言えるものだったからな。
「分かりました。自分に任せてください」
こうは言ったものの、結構緊張している。
「では、今回の作戦に関して、君はどのように考えているかね?」
「そうですね…。実際のところ、敵に対して陸上戦力が乏しいのが問題であると考えます。そのため、陸上戦力の拡充、もしくはそれに等しい戦力の確保が急務であると考えます」
「やはりそうなるか…」
「しかし少将、今から陸軍戦力を拡大することは困難です」
グライディン少将の言葉に、ダリ中佐が反論する。
「もちろん、そんなことは分かり切っている。しかし、敵地に送る戦力は多いほうがいい。それを実現するためにはどうしたらいいものか…」
グライディン少将の言葉に、会議室にいる全員の言葉が止まる。
俺も考えを広げてみる。
陸軍戦力の拡大をしたい。だけどそれには人も物資も足りない。武器庫で補える量も限られてくる。おまけに訓練する時間もない。
そうなると今ある戦力を最大限に利用する他ないということだ。
今ある戦力というと、陸軍戦力は4個師団と連合艦隊陸戦隊、海軍戦力は連合艦隊と防衛連盟海軍くらいだろう。
この世界では海の占める割合が多いから、どうしても海軍に注力する国が多い。
もう少し陸軍に戦力を分散できなかったのかねぇ。
まぁ、そんなことを言っていてもしょうがない。
すなわちこれだけの戦力でクレイル連邦の陸軍を相手にしないといけないのだ。
正直言って無理ゲーである。
どうにかしてこの戦力差を埋めることはできないだろうか。
「…ん?戦力の埋め合わせ?」
その時、俺の頭の中であるアイデアが浮かんできた。
「もしかしたら、いけるのでは!?」
「どうした?カケル」
不思議そうにダリ中佐が声をかけてくる。
「この方法があれば、もしかしたらうまくいくかもしれません」
「ほう、ぜひその方法とやらを教えてほしい」
俺は、考えをまとめながら彼らに話す。
話し終えたところで、会議室はシンとなった。
「…そんなことが可能なのか?」
「少々研究が必要になりますが、不可能ではないと考えます」
「いや、確かに理屈では合っているかもしれないが…」
正直、会議室の中は若干の混乱が見られた。
それもそのはず。
俺が提案した内容は奇抜すぎて受け入れられないような内容であったからだ。
「とにかく、それについては今結論を出すことはできない。もしそれが可能であることを証明できた時に、また作戦を考えよう」
「すぐに結果を出すことができないということですか?」
「正直なところ、懐疑的である。もしそれが可能であると仮定して作戦を立案したあと、だめでしたとなっては後の祭りになってしまう。そうならないためにも、研究なりなんなり行って、可能であると結論付けてほしいというのが本音だ」
「分かりました。数週間以内にそれができるようにしていきます」
「数週間でできるものなのか?」
「おそらくは」
「…まぁ、良い。結果が早く出ることには越したことはないからな」
そんなことを話していると、会議室のドアがノックされる。
「失礼します!」
そこに一人の軍人が入ってきて、グライディン少将の耳元で何か報告をしている。
「それは本当か?」
「確かにそうだと言っています」
グライディン少将は驚いた様子で、聞き返す。
そして何か悟った様子で、軍人を帰した。
「何かあったんですか?」
俺はグライディン少将に聞いてみる。
「先ほどレイグル王国領海域警備部隊が東方戦闘海域より接近する大艦隊を発見したそうだ」
「数はどのくらいで?」
「50は超えているそうだ」
「そんなに…」
会議室がドヨッとする。
50隻というのはかなりの大艦隊である。
そんなのが東方戦闘海域にやってくるのなら、目的は一つしかないだろう。
「現在、周辺国にも協力を要請し、ランスエル公国とヤーピン皇国の艦艇が出動している。現在どこまで持ちこたえるか不明な状況だ」
そんな状況である以上、俺は黙っちゃいない。
「グライディン少将!我々が出ます!」
俺は思い切って、提案する。
「本当は却下したいところだが、状況が状況だ。連合艦隊は直ちに出撃し、敵の大艦隊を撃退せよ」
「了解!」
俺は会議室を飛び出す。
すぐさまヒルノ海上国家まで乗ってきた艦に乗り込み、テラル島に通信をする。
「連合艦隊に出動命令、直ちに東方戦闘海域に出発せよ」
俺は激戦になることを考えながら、艦を進める。
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