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異世界艦隊 ―軍艦好きな奴が異世界でゼロから艦隊を作ったら―  作者: 紫 和春
本編

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97海里目 複数の作戦

 それから数日。

 俺は通信傍受装置をいくつか複製し、連合艦隊の艦に設置する。

 これで通信傍受ができる可能性が出てきた。


「さて、あとは実行に移すのみといったところか」


 その実行の時は近いことは分かっていた。

 それは乙賀組がクレイル連邦に諜報員を送り込む日程が決まったからだ。

 これにより、連合艦隊が所有している大発を使った、クレイル連邦への上陸を目的とした軍事行動が発動されようとしていた。

 この作戦の概要は単純明快である。

 まずは諜報員を乗せた大発を駆逐艦で輸送する。大発に諜報員を乗せて、そのまま上陸させるのだ。諜報員には、武器庫で構築させる長距離でも使用可能な通信機を持たせ、数週間から数か月の間、情報を送ってもらう。この情報を使って今後行われる作戦の実施の可否を問うことになる。

 そして上陸作戦の実施日が今回の書類のやり取りで決定したのだ。

 作戦発動は今日より1週間後。

 作戦名は震号作戦だ。

 すでに防衛連盟本部の許可も取り付けてある。

 この作戦行動は防衛連盟本部も興味を惹く内容だそうで、もし上陸に成功した場合は、通信の中継をするらしい。

 それだけ防衛連盟内では関心が高いものだそう。

 どうして初めからそういう考えが浮かばなかったんだろうか。

 上陸するため技術がなかったからか?

 それなら仕方ないが、それでも情報に対する貪欲さというか、そういうのが足りない。

 もっと情報をかき集めようぜ?

 そんなことを言っても仕方ないから、俺は今の状況の中で頑張るしかない。

 そうこうしているうちに1週間が過ぎた。

 ついに震号作戦実行日がやってきた。

 今回の作戦で参加するのは、球磨型2隻、吹雪型4隻である。

 その中でも「吹雪」に大発を搭載して、それを発進させる仕組みだ。

 そして諜報員に持たせる強力な通信装置は武器庫で構築した。

 ついでにサバイバルキットも一緒に構築する。

 それらを乗せて、集合場所であるヒルノ海上国家へと向かう。

 ヒルノ海上国家の軍港に入ると、分かりやすい所にヤーピン皇国大使館の面々がいた。


「よくぞ来ました。私が乙賀組の諜報担当官、大津です」

「よろしくお願いします。…後ろの方々は?」

「彼らも諜報員です。が、名前は公表していません。悪しからず」

「そうですか。彼らで全員ですか?」

「えぇ。いつでも出発できます」

「では行きましょう」


 こうして彼らを乗せて、クレイル連邦へ出発する。

 クレイル連邦に行くには東方戦闘海域を通り抜けなければならない。

 今回参加する艦艇は必要最低限であるため、もしクレイル連邦の大艦隊に遭遇するようなことがあった場合、正直逃げるしかない。

 そんな心配事をよそに、艦隊は少しづつクレイル連邦のほうへ近づいていく。

 だがクレイル連邦に近づく前に、まずは東方戦闘海域を突破しなければならない。

 今回、諜報員の輸送と護衛をつけているのは、足の速い軽巡と駆逐だ。

 もしものことがあれば、全速力で海域から脱出するのが得策だろう。

 まぁ、それは数で押されている場合に限りであり、相手が10隻程度なら普通に相手しよう。

 このような感じで、防衛連盟領海域から東方戦闘海域に差し掛かろうとしていた。


「そろそろ東方戦闘海域だ。総員、しっかり気を引き締めていくように」

「了解」


 今回、トーラス補佐官はおらず、連合艦隊司令部の面々も数を減らして艦隊を運用している。

 なんだか、数が少ないと、初期の連合艦隊のことを思い出すなぁ。

 そんなことを考えつつ、連合艦隊は東方戦闘海域に突入することになる。

 とは言っても、東方戦闘海域も防衛連盟領海域と同様、穏やかな海だ。

 こうして航海を続けていると、境目のことなどどうでもいい感じに思えてくる。

 しかし、実際にここは戦場だ。気を引き締めていかないと。

 そうこうしていると、水平線の向こう側から、何かが横切っている様子がうかがえる。


「司令長官、前方に何かが見えます」

「そのようだな」


 俺は首にかけていた双眼鏡を覗き込む。

 そこには複数の帆船の列が見えた。

 俺は指示を飛ばす。


「通信傍受用意」

「通信傍受用意!」


 それは、「球磨」に装備させている例の通信傍受装置を使うことである。

 防衛連盟および連合艦隊が使用している通信機では傍受が可能であったが、実際に敵に対して使用するのは初めてだ。

 うまく使えるかどうかは、ここで決まる。

 早速、通信手は傍受装置を使って敵の通信を傍受できるように装置を弄った。

 傍受に使う周波数に合わせ、通信の様子を傍受させる。

 すると、ノイズのようなものが走ったあと、静けさだけが残った。


「これは傍受しているのか…?」

「何も聞こえませんが…」

「周波数はこれで合ってるんだよな?」

「はい。以前クレイル連邦が使用していた周波数です」

「どうする?わざと接近でもしてみるか?」

「しかし危険です。もし反撃されたら、面倒な鬼ごっこの開始です」

「うーん…。じゃあ砲弾でもぶち込んでみるか」

「そのほうが危険は少ないかと」

「よし、主砲旋回。目標、敵艦隊前方」

「主砲旋回!距離10000!」


 艦首側にある主砲がわずかに旋回をする。

 そして仰角を合わせ、主砲の発射準備が整う。


「主砲準備よし!」

「主砲撃て」

「うちーかたーはじめ!」

「撃ー!」


 主砲から砲弾が発射され、水平線へ吸い込まれていく。

 俺は主砲の発射のあと、傍受装置に耳を傾ける。


「だんちゃーく、今!」


 砲弾が水面に弾着した報告がされる。

 俺は耳に神経を集中させた。

 すると、傍受装置から一瞬ノイズのようなものが走る。

 その直後だった。


「艦隊前方の水中で爆発があった模様!」


 その声は鮮明に聞こえてくる。

 これではっきりとした。

 敵の通信の傍受に成功したのだ。


「司令長官!」

「あぁ、傍受は成功した」


 あとはこれを正式に採用するだけだ。

 しかしその前に、やるべきことがある。


「全艦、第2戦速。目標、前方にいる敵艦隊」

「第2戦速、よーそろー」


 このまま敵艦隊に接近し、苦戦することなく全艦沈めることに成功した。

 その後は、敵に察知されることもなく、クレイル連邦本土へと接近していく。

 時間は夜を指定した。

 わざわざ敵の目が行き届いている真昼間にやることもない。

 日が暮れるのを待ち、俺たちは準備を進めた。

 まずは連合艦隊から、諜報員を乗せた「吹雪」をクレイル連邦本土近くまで輸送する。

 限界まで近づいたところで、今度は大発に乗せて近くの浜辺に上陸させる。

 その浜辺は昼間のうちに目星をつけていた。

 その浜辺に向かえるように、探照灯をつけて誘導する。

 探照灯をつけて誘導するのは若干気が引けたが、周辺に人の気配があるような村が確認されたわけでもないから問題はないだろうと判断した。

 俺は「球磨」の艦橋から、作戦の成功を祈るしかなかった。

 しばらくして、諜報員に持たせた通信機から声が聞こえてくる。


「こちらイトウ。敵地への潜入に成功した。どうぞ」


 俺は胸を撫で下ろした。

 うまく潜入したことに安堵したからだ。

 あとは諜報員が頑張って情報を持ってきてくれるのを期待するだけである。

 作戦の帰りでは、特に敵艦隊と遭遇することもなく帰ってくることに成功した。

 もし敵艦隊に遭遇すれば、漸減作戦の一環として撃沈したんだけどなぁ。

本作を読んでいただきありがとうございます。もしよろしければ下にある評価ポイントを入れてくれると助かります。

また、感想やレビューを書いてもらえると作者の励みになります。

次回も読んでいってください。

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