【詩】「夜の童話」「溜め息とあくび」
「夜の童話」
闇がもっとも深くなるころ、
ようやく、
夜は背中を向けて
語り出す。
星の粒の金と、
月の研ぎ澄まされた銀と、
闇に全てが映った蒼の、
いっぱい詰まった
童話のお話を。
それはこんなお話。
誰もが欲しがるけれど、
誰もが畏れて、
誰もがその身に
秘めていることがある。
それは、
誰でも、
明日、何かが出来るということ。
誰でも、
明日、何かが待っているということ。
誰でも、
明日、新しいということ。
「溜め息とあくび」
透き通る湖に浮かぶ、
白鳥の溜め息は霧を呼び、
獣を安らがせる。
遠い奏でに耳を立てる、
ウサギの小さな溜め息は、
山の天気を穏やかにする。
トンネルの出口で
何時も待っているカエルの、
ぽつんとした溜め息は、
静かな沼に波紋を広げる。
そして
わたしたちの溜め息は、
あくびの反対側にあるもので、
こころの息の溜め息と
からだの息のあくびとは、
裏と表の息の兄弟なのです。