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○契約魔法と召喚魔法:3

 

 ギャ――――――――ッ! 大きいオオカミ!?

 思いっきり、どっきんと心臓が跳ねた。

 が。あわやのところで、魔法陣は飛び出さなかった。

 おおぅ~~、良かった~~~~~~~~!

 いざ落ち着いて見てみれば、にっこり笑顔のディオンの隣にいる大オオカミは、きちんと躾けられた利口な犬のようにちんまりと『おすわり』している。

「へぇ、今回はびっくりしても魔法陣出なかったね」

 傍にいたライアンが、ごく冷静に言う。

「でませんでしたねー」

 ライアンの後方ではパチパチと手を叩いているジェイク。

「一応、やれば出来るんじゃん、凛音」

 その隣でオーフェスを片手で抱えるルディは、もう片方の手でオーフェスの前足を持って拍手仕草をさせている。

 それは……褒められているのかどうなのか。

 なんか微妙な気持ちになってきてるんですけど……。

「な、違うだろ? 精霊とモンスター」

 笑顔のディオンが何の躊躇ためらいもなく、私に確認の念を押す。

 彼の隣に鎮座している青い大オオカミは大人しくじっとしているのだが、金色の瞳で私を捕らえて、心なしか小さく『ぐるるー』と喉を鳴らしてるっぽい気もする。

 いやいやいや、わかんないから! 違いが全くわかんないんですけどっ!

 ていうか、精霊の方もかなり獣っぽいんですけど!

「モンスターは生物。精霊はエネルギー体ってとこだな」

 私の心のツッコみを感じてくれたのかどうか、ライアンが補足してくれる。

「能力も精霊の方がモンスターより大抵高い。オーフェス――つまり、エルクフェンは特殊な方だから、希少種なんだよ」

 相変わらず淡々と解説するライアンだけど、的確にまとめられた説明はとても有り難い。

 気付けばライアンとは反対側にいたディオンが、「またなー」と呑気な別れの挨拶をして、青オオカミを召還魔法陣ごとスッと消した。

 おー、何気にすごいことを……。

 青オオカミは凶暴そうだったけど、とてもお行儀が良かったと思う。それはディオンと契約を結んでいるからだろうか。

 もし襲い掛かって来ないなら、次はぜひモフモフしたい。

「だったら、モンスターと契約するよりも、精霊と契約した方がお得なんですよね?」

 ライアンへ振り返りながら質問を投げ掛けると、ライアンのすぐ後ろまで来ていたルディと目が合った。

「凛音、何言ってんだよ。今のお前の魔力制御能力じゃ、精霊となんて契約したら魔力を根こそぎ持って行かれるぞ」

 ルディから地面に下ろされたオーフェスがサクサクと土を踏んでジェイクの足元へと寄って行く。ジェイクはオーフェスを待ちながら、私達の様子を眺めていた。

「そうなんですか?」

 ルディは私より年下なのだけれど、庶民出の私とは違う彼の持つ王子特有の気品や、天使のような美貌とは裏腹の尊大な態度に、ついつい敬語になってしまう。

「だから、『モンスターと契約しろ』って、皆が勧めてるんだろ」

 ルディの言うことはもっともだと思います。

 でも、もうちょっと優しく言って頂いても良いと思いますよ~。

 私が少しルディに反抗的な気持ちになっているのを見透かしたのか、ライアンがふっと小さく笑ってから、また話を付け足す。

「モンスターと契約を結ぶとある一定の魔力が必要になる。それが魔力を引き出す呼び水になるんじゃないかって結論だ」

「ああ、なるほど……」

「でも先に、三つクリアして貰わねーとならないことがある」

 頭の上で声がしたので、見上げればディオンが私の背後に立っていた。

 彼は話を続けながら、私とライアンの間へ移動する。


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