○契約魔法と召喚魔法:1
今日も朝から例の如く、庭園の練習場に来ていた。三王子とジェイクも一緒に。
お天気はすこぶる快晴。
この世界の気候がららしく、私がここへ来てからもずっとお天気で気温もちょうどいい。
さて、本日のドレスは中世ヨーロッパ風カジュアル版だ。
スカート丈は膝下、三段のドレープフレアは広がり過ぎずで大人しい雰囲気。首を包む縦襟や胸元はしっかりレースで、ビスクドールなどで良く見る定番の感じだろう。ブーツはローヒールの編み上げだが、一昨日のとはデザインが違う。
毎回全部が新しいもので、ここまでしなくとも……という気はしないでもない。
色は当然黒だけれど、ドレスの所々に白レースがアクセントとして使われている。
露出も少なく動き易いので、とてもいい。ただ一つ、『猫耳付き』ということ以外は。
もちろん、ものすご――――く遠慮したのだが、案の定ネリーのうるうる攻撃に負けたのだ。
ネリーは、『人間界の可愛い女の子は猫耳をつけている』と本気で信じている。
デュクリアスの鏡……仕事が偏ってますよ。
そして言うまでもないんだろうけれど、黒猫耳だ。
「やっぱさ、モンスターと契約させてみるのは良いかもしれねー」
「俺もそう思った」
「でしょ、僕の言った通りじゃない」
「私も賛成です」
話題を呈したディオンの周りに、ライアン、ルディ、ジェイクが同意を示しながら集まって行き、自然に円陣を組むと、あーだこーだとやり出している。
私は少し離れた場所で、ぽつねんと佇んでいた。多分、当事者なのに……。
今朝はこの猫耳衣装で、まず部屋まで迎えに来てくれたジェイクに会うと、彼は「とてもお可愛らしい」と、いつものように私を褒め称えた。
ジェイクはネリーと同じで、私が何を着ても褒めるのだ。
褒められるのはもちろん嬉しいのだけれど、ジェイクがどこまで本気なのかが分からないところが怖い。
次にジェイクと連れ立ってこの練習場まで来ると、先に来ていた三王子は私を見るなり一斉に目を丸くした。
異世界補正の効果なのか若干頬を赤らめた気もするけれど、その後すぐ三人共が片眉を下げた微妙な表情となり、この猫耳には一切触れずに普通の会話を始めた。
というわけで、ちょっとブルーになっている、今だ。
うにゃあ~~~~ん!
不意に横手の花壇前に座っていたオーフェスが陽気な鳴き声を上げ、右手をペロペロと舐めてから顔を洗う。
オーフェスは自分の仕事がない時には、いつもジェイクに寄り添っているようだ。
とはいえ、本来は結構凶暴なモンスターらしいのに、あの『猫っぷり』はどうしたことだろう。猫に擬態しているから猫っぽい仕草をしているのか、それとも自然に猫化してしまうのか。
まぁ、可愛いからどっちでも良いんだけれども。
ふふふ、今日の私達は猫友達だね、オーフェス?
自分の猫耳をふにふにと手で触りつつ、『彼』との友好でも温めようかと思ったが、顔を洗い終わったオーフェスは素知らぬ顔でころんと寝転んで丸くなった。
く……オーフェスにまでスルーされてる……。
「凛音、やってみるか? モンスターと契約」
そこでようやく、なにがしかの算段がついたらしく、ディオンが私の傍までやって来た。




