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○ローストモンスター:2

 

 そういえば、ジェイクには使い魔のオーフェスがいるんだった。

 あ、じゃあ、私も猫が飼えたりするんだ!? 猫飼ってみたかったんだよねー!

 呑気にそんなことを考えていると、給仕係さん達がガラガラガラと音を立てて大きなカートを三つも運び込んで来た。

 彼らはテーブルの最奥となるライアンと私側のテーブルの際までカートを移動させると、三つ横並びに連ねて固定した。

 それぞれのカートには横長で上部に丸みがある豪華な銀蓋をかぶせられた揃いの大皿が乗っている。

 多分、メインディッシュなのだろう。

「実は今日は良い素材が手に入りましたので、ローストを数種類作って頂いたんですよ」

 ジェイクがわざわざ私の方へ半身を捻って向き直る。

 どうやらこのお料理は、私へのもてなしの意味が含まれているようだ。

 ジェイクって、優しいなぁー。

「係りの者が切り分けますので、お好きな物をお好きなだけ、沢山召し上がって下さいね」

「はい、ぜひ!」

 私が嬉々として答えると、ジェイクも嬉しそうだ。

 毎食ご馳走ばかりで幸せだ。太っちゃいそうだよ~。

 給仕の人達が一斉に三つの銀蓋をカパリと開く。お皿の上には想像した通りの塊肉のローストが揃っていた。

 わー、おいしそうだー。

 パッと見た印象だと、左端はローストビーフ、真ん中はローストチキン、右端はローストポークといった感じだ。

 あれを給仕さん達が大きなナイフとフォークで切り分けてくれるらしい。

 今まで給仕さん達をじっくり見る機会はなかったのだけれど、こうして改めてお肉の向こう側にいる彼らを眺めてみると、やはり皆イケメンだ。

 それも先日の人間チームの騎士達と同じく宅配便爽やか系の。

「へー、豪華だなぁ」

「昼、魚だったからちょうどいい」

 お肉を目の当たりにしたディオンとライアンが順に感想を述べる。

「凛音、太らない様にね」

 次のコメントは当然、ルディ。なぜにニッコリ笑顔か。

 く……私もおそれていることをズケズケと。

「凛音様、どちらをお切り致しましょうか?」

 真ん中の『ネットブックショップの荷物を運んで来た風なイケメン』が、お決まりといった感じの笑顔を見せる。

 レディファーストなんですね。ありがとうございます。

「そちらのお肉はローストチキンですか?」

 本当はローストビーフが食べたかったけれど、声を掛けてくれた人へ応じるのが礼儀かと思い『ネットブック荷物の彼』に問い返した。

「ガラゴンドでございます」

 あ、モンスターでしたか……。

 いえいえ、いいんです。モンスターも食べていくつもりですから。

 でも最初は、普通の物から行きたいと思います。

 ここは素直に食べたいと思ったローストビーフにしますね!

「えっと、左端のは?」

 左端を担当する『ご当地グルメの荷物を運んで来た風なイケメン』が、私へついと目を向ける。

「こちらは、ジャンノルーでございます」

 ……ローストビーフではなく、モンスターなんですね。

 了解です。でもお肉の見た目が似ている気もするので味も近いかもですね。

 期待です。が、最初は普通の物を――

「じゃあ、右端のにしようかな~?」

 すると右端を担当する『小型家電製品の荷物を運んで来た風なイケメン』がにっこりと微笑んだ。

「ダルドロマロリンでよろしいですね?」

 …………気づいてました。薄々。モンスターコンボであると。

「凛音様は、モンスターを召し上がった方が魔力も安定するだろうと、お昼にディオン様から伺いましたので」

 私の背中へジェイクの嬉々とした声が降りかかる。

 くるりと身体を反転させてみれば、ジェイクが満面の笑みだ。

「早く魔力が安定して、魔王に相応しいコンディションを整えて頂こうと思いまして」


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