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○ローストモンスター:1

 夜には、また晩餐会が開かれた。

 当然、前回の晩餐会があった『ジャルードの間』は、私が大穴を開けた為に現在修繕中なので、別の大広間である『カーリナの間』が使われている。

 正式な物ではなく食事会といったカジュアルなものだったので、皆の衣装も昼と同じ物だった。

 私だけは、ネリーに『森ガール新バージョン』に着替えさせられたのだけれど。

 今回のドレスは、黒シフォンに銀糸の小花刺繍のキャミワンピースで裾が四段にレイヤードされたヘムライン。レイヤーの種類は黒レースの下にグレーシフォンレース、その下にドレープが多く取られた白レース、最後に黒のオーガンジーレースが顔を覗かせている。

 オプションで黒のニットボレロに、足元はワンストラップの黒フラットパンプスにくるぶし丈の黒靴下。おまけの髪飾りは黒の蔓薔薇花冠で、マメにもネリーが生花の蔓黒薔薇をわざわざ手編みしたらしい。

 レースたっぷりだけれど素材が柔らかくゆったり仕様なので、着心地はかなりいい。

「リュレイナ神殿へ行ってたんだって?」

 スープを平らげたディオンがスプーンをお皿にカチンと置きながら、左隣のライアンにそう確認する。

 席順は前回と同じで、テーブルの向かい側に奥からライアン、ディオン、ルディ。こちら側に座る私はライアンとディオンの間くらいの位置で、左隣にジェイクがいる。

「うん、星見をして貰ったんだけど、凛音の魔力の特性がまだ分からない」

 ライアンもスープの最後のひと口を飲み終えて応じる。

「フィミア様が、そうおっしゃったのですか?」

 ジェイクはお皿から宙に上げたスプーンを一旦止めて顔を上げた。

「そう。でもまだ見えなかったらしい。ただ魔力はかなり強いだろうって」

「そうですか……」

 ライアンの返答に軽い安堵の表情を見せたジェイクは、そのスプーンを口へ運んだ。

 安堵するということは、そこに懸念があったからで……。

 すみません、いつもご心配かけてしまって。

「魔力が強くても使いこなせなきゃ、意味ないんじゃないの?」

 右手に掴んだスプーンを子供がするようにピッと立てたルディが、ジェイクへと顔を向ける。

 言い方が可愛くないのだけれど、ルディの指摘は正しいと思う。

「おっしゃる通りですが、凛音様もまだまだこれからですので」

 いつもジェイクにはフォローして貰ってばかりで恐縮だ。

 努力します! 適度に!

 それなりに自分を戒めつつ、私もスープの残りをやっつける。

 『ほうれん草とチーズとトマトのサラダ』の次に出て来たこのスープは、イエロースクワッシュのスープなのだそうだ。

 スクワッシュは人間界にもあったけれど、食べたことがなかった。

 味はカボチャとズッキーニの間くらいですっきりとした甘みがある。

「もう魔力は安定してるから、凛音の練習方法変えてもいいかもしれない。でないと時間が掛かりそうだ」

 ライアンがそう話を続けると、背もたれに身を預けながらディオンも頷く。

「魔王選定まで一ヵ月もないからな」

「仮に魔王になった後、空気弾の練習とかされても、ちょっと笑えないしね」

「ははは、だよなー」

 ちょっとそこの人達! 思いっきり聞こえてるんですけど!

「いっそのこと、モンスターや精霊と契約結ばせてみれば? 魔力を引き出すきっかけになるかも?」

 ルディの発言にライアンとディオンは雑談を止め、興味深げな瞳でルディを見た。

「ああ、それは悪くないかもしれませんね」

 ジェイクも乗り気のようだけれど、私には意味がさっぱりわからない。

 ……モンスターや精霊と契約? 精霊って?


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