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○魔力の特性とライアンと:5

「お前、他の魔法は使えそうか?」

 いきなり突拍子もない質問をされて驚く。

 そうか、そういうのまだ考えてもみなかった。

「わからないです。そんなの考える余裕もなかったですし」

「魔王の魂の欠片を持ってるヤツが、空気弾しか使えないはずないんだよな……」

 ライアンは小首を傾げて右耳の下辺りを掌で撫でながら思案する。

 確かに、ディオンの炎や、ライアンの風と水、ルディの土関係。

 どれもなんとなくカッコイイし強力そうなのに、私の空気弾ってなんかショボイ。

 いや、ショボさがどうこうだけでなく、同じ魔王候補なら、ライアンが言うようにもう少し何か特別な魔法が使えても良さそうだ。

「そういえば、ライアンは二つも使えて凄いですよね」

 ふと気づいたことを口にすると、ライアンがその長身で私を見降ろして怪訝な顔をする。

「二つ……?」

「風と水の魔法です」

「……バカ、もっと使える」

 ライアンは腕を組みながら顎を引き、呆れ顔をする。

 もう気づいていたのだけれど、ここの王子達はすぐ私へ『バカ』と口にする。

 兄弟だから似てるのか……なにもそんなとこ似なくても……。

「え、じゃあ、ライアンだけもっと沢山使えるんですか?」

「皆、他にも色々使える。ただ得意分野があるってだけだ」

「そうなんですね……知らなかった。そんなに魔力使ってるところなんて見ないし……」

「当たり前だ。魔力を使うと体力消耗するって、お前ももう知ってるだろ。滅多やたらに魔力なんて使わない」

「ジェイクも色々な魔法が使えるんですか?」

「ジェイクは、俺達ほど魔力は強くない。魔王直系じゃないからな。だから、特殊なものとか防御とかサポート役が多いんだ」

 そうか。魔王直系であるかどうかは、魔力の強さにも関係してるんだ。

 だからこそ、魔王直系の三王子が魔王候補に選ばれてるわけか。

「最初に移動魔法でお前を迎えに行ったろ。あれは俺とディオンとジェイクの合作魔法。でないと移動魔法は魔力の消耗が激しい。戦闘になるかもしれなかったから、うかつに魔力を消費出来なかった」

 魔力があるから万能というわけでもないんだよね……。

 そういえばあの時、ルディは来なかった。

「あの……私はルディに嫌われてるんでしょうか?」

「……は?」

 話が飛躍し過ぎた。ライアンが呆気に取られた顔をする。

「いえ、ルディは私に対してなんだか意地悪ですし、私を移動魔法で迎えに来てくれた時にも、ルディだけ来なかったですし……」

「ああ、あれは。もしもの時の為に、ルディは城で待機してただけだ」

「……待機?」

「もしあの場で戦闘になってルディがケガをすると、傷が癒えるまでルディは魔法が使えなくなるケースもあるからな。大事を取って待機」

 それなら、ライアンにもディオンにも当てはまりそうだ。

 ルディだけ一時でも魔力を失えない理由でもあるのだろうか。

「ま、ルディの意地悪というか、わがままみたいのはデフォルトだな。あれがアイツの普通」

 ……嫌なデフォルトだなー。

 なんとか少しいい感じにカスタマイズして頂きたいところですが……。

 とにかく良くはわからなかったけれど、ルディは他の二人とはなにか違うらしい。

「それぞれが持つ魔力には特性がある」

「特性?」

「お前もさっき言ってたけど、俺は水や風系が得意だし、ディオンは炎とかそういうの。お前のタイプはまだ良く分からないけどな」

「私の得意分野ってことですよね……」

「まぁな。魔王の魂の欠片を持ってるんだから、万能に近い可能性もあるけど。お前見てると、それもどうだろうって気もするしな」

 ははは……また何気に毒舌ですね、貴方は。

「魔力がコントロール出来るようになったんなら、次は特性が分かれば魔法能力上げ易いはずなんだよな」

 ライアンは腕組みを解き、また右耳の下辺りを掌で撫でる。

 彼は感情をあまり表に出さない人みたいなのだけれど、こうやって見ているとなんとなく違いが分かって来た。

 耳の下を撫でるのも癖なのだろう。彼が考えごとをする時の。

「じゃあ、星見をして貰うか?」

「……星見って?」

「占いみたいなものだけど……はっきりと指針が見えることもある」

「そんなのしてくれる人がいるんですか?」

「いるよ。俺の母親だ」


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