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○魔力の特性とライアンと:3

「お忙しい所、失礼致します!」

 そこへディオンの後方から、ドア前などにいる守衛さん達と同じ衣装を纏った男性が声を掛けて来た。

 えんじ色のジャケットは縦襟に少し長めの丈で、全体に金刺繍の縁取り。前の合わせは右寄りで金ボタンが盾に五つ並んでいる。トラウザーズは細めの黒で、ブーツも黒。

 見た目からして、騎士なのだろうと思うんだけど……。

「ディオン様へ騎士団長からの伝言がございます。お時間が出来ましたら、ぜひディオン様に騎士団広場へお越し頂きたいと」

 これで確定。やはり思った通り騎士でしたね。

 彼は騎士然としていて、キリリとした生真面目そうな面持ちに、焦げ茶の髪は額から後ろへと流されて毛先が良い感じに跳ねている。

 そして当たり前のように、イケメンなんだね。

「あ、そうか。俺が試合を見せてくれって頼んでたんだった」

 ディオンが『うっかりしてた』といった風に顔をしかめ、右手でうなじを撫でる。

「騎士団の演習は今日でしたっけ?」

 ジェイクがそう確認すると、「うん、そうなんだよな」とディオンが言い辛そうに答えた。

「では、ディオン様はどうぞ騎士団の方へ。凛音さんは安定していますし、後は私とライアン様が付き添いますので」

「出来ましたら、ジェイク様のご意見も伺いたいと団長が申しておりましたが……」

 騎士がそう付け足すと、ジェイクはゆるく立てた人差し指を口元へ当てて「うーん」と考える。

 私の練習が邪魔になっているのなら、申し訳ない。

「あの、じゃあ今日はもう練習はこれで終わりに――」

「俺が見てるから、ディオンとジェイクは行って来なよ。騎士団の指針は二人がってるんだし」

 けれど私の声を掻き消して、ライアンがそう言い出した。

「良いのですか?」

「凛音の面倒くらい、俺一人で充分だ。あんなの子供と変わらない」

「そうか、悪いな」

 若干ライアンが毒舌でしたが、誰もツッコまないんですね、ぐすん。

「じゃあ、凛音、あと少し頑張れ。あんまり疲れる前に止めろよ」

 ディオンが近づいて来てポンと私の頭に手を乗せた。大きな掌が頭の天辺を包み込む。

 男の人って手も身体も大きいよね。こんな風に接触することなかったから知らなかった。

 まぁ、私が小さいからっていうのもあるんだろうけど。

「……はい」

 ディオンが手を離した後の自分の頭を、意味もなく両手で押さえる。

「凛音様。私も少し席を外しますが、また戻って来ますので。なにかあれば、騎士団広場の方へいらして下さい」

 ジェイクがこちらへと歩いて来て、ディオンの隣に並んだ。

「はい、わかりました」

 彼らは私が頷くのを確認してから二人してライアンへ『後はよろしく』的な視線を送ると、肩を並べて塔の表側へと向かって行った。

 へー、騎士団広場って、あっちの方にあるんだねー。

「――凛音」

 妙に近い場所で響いた声に驚いて振り向くと、ライアンが真後ろに立っている。

 私がディオンとジェイクを見送っている間に移動して来ていたらしい。


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