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○魔力の特性とライアンと:2

 自分でもよそごとを考え過ぎたと、申し訳ない気持ちで彼へ向き直った。

「……はい、わかりました」

 期せずして上目使いになった私とディオンの視線がカチリと合うと、彼は昨日と同じに分かり易く頬を赤く染め、ツンデレて横をプイと向いた。

「わ、わかればいい」

 あれ、なんだ。ディオンにはまだ効いてるみたいだけどなぁ、異世界補正。

 ちなみに本日の私のドレスは、ネリー曰く『森ガール風』。

 衣装作りの参考にと、ジェイクにデュクリアスの鏡で人間界を見せて貰っているのだそうだ。

 なんて、凝り性な……。

 トップスは前ボタンのカーディガン風シャツワンピース。胸元がレイヤードされていて生地がヒラヒラしている。腰下まであるシャツの裾はキザキザアシンメトリーでここにもレースのレイヤード。

 スカートまでもレースとチュールのレイヤードで、やはりアシンメトリー。

 ふんわりさを演出するエアリー仕様なのに、色は当然の如く真っ黒だ。

 靴も勿論黒のビンテージ風クシュクシュブーツと中の靴下まで黒。

 髪にはシフォン素材で出来た黒と生成と薄ピンク色の小花があしらわれた髪留めをつけられていて、幾分ここだけ印象が軽い。

 とはいえ、慣れとは恐ろしい。もう多少のコスプレも気にならなくなった。

 ま、楽だしね、この服。

「では、行きます!」

 私は気持ちを入れ替えて、規定の立ち位置へと移動する。

 崩れたエルクフェンの彫刻の向こうには、最初に設置された板の的が見える。

 次に狙うは、その的の真ん中にある赤玉だ。

 意識を集中すると、お腹の底がほんわかと温かくなり、ブワンと軽やかに垂直になった金色の魔法陣が顔の真ん前に浮かんだ。

 それから半透明の魔法陣を通して、その先にある的の真ん中を射抜くイメージをする。

 魔法陣はゆるゆると回転しながら明滅を始め――

 ここだ! と、気合を入れたのを合図に魔法陣が自身の中心から、空気の弾丸をどんっと吐き出した。

 ゴ――――――――ン!

 そうして見事に、弾丸は赤玉を貫いたのだ。

 よっし! やったよ、私!

 思わず胸元で拳をグッと握ってガッツポーズ。

 いやしかし、私の求めているものは魔法上達ではなかったんだった。

 ――と、思い直し、握った拳を解いてブラブラと手を振る。

 でも出来ないより、出来た方が良いよね、うん。

 ――と、またそう思い直し、もう一度身体の横でぎゅっと拳を握った。

「お見事です、凛音様」

 ジェイクがまたぱちぱちと拍手してくれる。

 優しげな笑顔のジェイクだけれど、ディオンから話を聞いてしまったから、彼の胸の内の哀しみを思うと私も辛くなる。

 ジェイクは人間に良くない気持ちを持っていると知ったのに、それでも私の気持ちはまだ人間側にある。

 だって……私は、旭先輩と敵対したくないんだもん。


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