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○魔力の特性とライアンと:1

 ――ドゴンッ!

 豪快に的中した空気の塊が、エルクフェンの彫刻の身体を砕き飛ばす。

 彫刻の上半身が高い台座からゴロンと地に落ちると同時に、衝撃によって軌道を変えられた空気弾が青空へと昇って雲に吸い込まれていく。

 その様を目で追い、なんともいえない爽快感と満足感を味わう。

 次の日も朝から魔法の特訓を始めていた。

 最初の三発こそ大外れだったけれど、四発目の今、見事にヒットしたのだ。

「おー、当たったなー」

 私の後方にいたディオンも眉の高さに置いた右手でひさしを作り、空を仰いで弾丸の消えゆく様を追いながら感嘆の声を上げる。

「やりましたよ!」

 嬉しさに思わず飛び跳ねた勢いで、ディオンへとぱっと振り向いた。

「おお、やっとな」

 手を下ろして私へ顔を向けたディオンは、若干ホッとした笑顔で応じる。

 『私と自分が似ている』と昨日話していた彼にとっては、魔法を上手く使いこなせない私を見ていると、身に詰まされるものがあったのかもしれない。

 ご心配お掛けしましたね。貴方のお蔭でなんとか形になりましよー。

「凛音様、やりましたね!」

 横手からぱちぱちと拍手をしてくれたのは、案の定ニコニコ笑顔のジェイクだ。

 ジェイクの足元には黒猫オーフェスがひなたぼっこしながら丸まっていて、しっぽをゆらんゆらんと左右に振っている。

 今打ち砕いた彫刻はオーフェスと同じエルクフェンなので、なんだか後ろめたい気持ちになってしまう。

 最もオーフェスの方は、全く気にしていないようだけど。

 ジェイクの右隣にはルディ、左隣にはライアンが立っていて、彼らは三人並んで私の練習を見ていた。

 もちろん、いざという時のサポートを想定してのことだろうけど。

 でももう、そんなご心配は必要なさそうですよ~。

「なーんだ。もう当たっちゃったか。また暴走するかと思って楽しみにしてたのに。つまんないヤツ」

 ところが私の浮かれ気分をぶち壊すように、ルディは軽い意地悪を口にする。

 自分の前髪のくるんとした一部を右手の指で摘まみ上げ、いかにも退屈そうに弄っているのだが、いかんせんそんな仕草さえ絵になって見えるのがなんとも腹立たしい。

「じゃあ、僕はもういいや。部屋でのんびりしてよーっと」

 そして早々に踵を返して背を向けると、塔へと向かって歩き出した。

 む~、相変わらず天使の姿をした小悪魔め~。

 いや、魔族なんだから、ある意味正しい姿か。

 ジェイクが「はい、ごゆっくり」とルディの背中へ声を掛けると、ルディは歩きながらヒラヒラと肩の上辺りで手を振る。

 私はこっそりと恨めしげな視線でルディの背中を眺めた後に、ついと目線を揺らすとライアンと視線が重なった。

 腕組みをしている彼は私と目が合っても全く動じず、ごく平静な顔でこちらを見ている。

 う……また昨晩のお風呂場のサロンでの記憶が……。

 今朝ライアンと顔を合わせた際、こっちはあのサロンでのことを思い出し恥ずかしさも相まってとても緊張していたのに、彼は全く冷静そのものだった。

 晩餐会では私のドレス姿を見て頬を赤らめたりしたのに、今は『そんなことどこ吹く風』といった感じだ。

 異世界補正に有効期限とかあったのかな? ライアンはそれが切れたとか? ルディもあんなだしね……。

 思わずそんな下らないことを考えてみたり――

「おい、凛音! 一回で満足してんな! 次は板の的に当ててみろ!」

 ディオンにまたどやされて、ピンと背筋が伸びる。


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