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○モンスターのサンドイッチ:4

「モンスター、食った方が良い」

「え……?」

 『これ食べて』と私が彼に言う前に、ディオンに先制攻撃されてしまった。

「魔力が安定する。多分」

 けれど、その内容は思いもつかないものだった。

「……本当?」

「俺がお前みたいだった。子供の頃は魔力が制御出来なかった」

「うそ……だって、ディオンの魔法は凄くて――」

「俺には半分人間の血が入ってるからな。それで、お前に魔力の使い方を教える役目には向いてるかと思って、買って出たんだ」

 そうだった。彼は魔族と人間のハーフなんだ。

 ディオンは魔王候補な上に、あまりにも自然に見えていたからさほど意識していなかったけれど、事情はとても複雑なのだ。

 もしかしたら、私以上に――

「牛とか鳥とか普通に食うだろ。モンスターも、そう変わらねーよ」

「そう……ですか……?」

「お前、昨日実際にソレティの燻製食ったろーが。結構、美味かったろ?」

「あ、ですね……そうでした……」

「ビタミンAとかCとかカルシウムとか、そういう色々必要な栄養素あるだろ。魔力を安定させるのにも必要な栄養素ってのがあって、モンスターを食うとそれが補えるみたいだ。……多分」

「どうして、『多分』なんですか?」

「だって、俺みたいなヤツが他にいない。確認の取りようがないから、あくまで俺の体感だ。だから、『多分』。俺はお前にも有効だろうと思うけど、違うかもしれねーから、お前が嫌なら無理には勧めねーけどな」

 私にとって魔力は、暴走さえしなければ良くて、特に向上は望んでいない。

 出来れば魔王になりたくないから、逆に魔法はさほど上手く使えないままでいる方が良いのではないかという気すらしている。

 でもディオンにそんな風に言って貰ったら、断れるはずもなく――

「食べて……みます。モンスター」

 私の返事に、ディオンは嬉しそうに微笑んだ。

 うー、そういう笑顔は反則ですよ。自分の考えが後ろめたくなりますー。

「俺とお前は、似てるよ……多分」

 成り立ちは全く違うのだけれど、彼の言うようにとても似ている気もする。

 彼も私も、人間であり、魔族でもある。

「これ、美味いよ。食べてみ」

 ディオンは半分に切り分けられた自分のサンドイッチを両手で掴んで、豪快にかぶり付く。

 曲線を描いた上部に綺麗な焼き色のついたふわふわのスライスされたこのパンは、焼き立てらしく香ばしい香りがお皿から漂って来ている。

 大振りのサンドイッチには見た感じターキーっぽいお肉と、レタスにトマトとチーズが入っているようだ。

 このターキーっぽいのが、モンスターだろう。

「……このモンスターって、どんな味ですか?」

 私もディオンと同じモンスター入りのサンドイッチを手に取った。

 訊かない方が良い気もしたけれど、知らずに食べるのもどうかと思い訊いてみる。

「味は、ほぼ鶏肉。鳥系のモンスターだから。でも肉が柔らかくて旨みが濃厚、栄養価も高くて重宝されてる」

「へぇ、なかなか美味しそうですねー」

「うん。名前は、ギンドラグラノ」

 ……あ、名前は聞かなきゃ良かったですね。

 なんか、ギャオーギャオーって言ってそうな、凄いモンスターを想像しちゃいましたよ。

 しかし一旦手に持った以上、食べないと。

 ままよと、カブリと噛り付いた。

 おおー、なんだなんだー、おいしい~~~~!

 お肉はディオンの言う通り、鶏肉を濃厚にした味で肉汁たっぷりでジューシーだ。

 パンには細かく刻まれたナッツとドライフルーツが入っていて、パンだけでもおいしい。

 中身はレタスやトマトの他にはブラックオリーブのスライスも入っている。チーズの味わいも濃厚でとてもおいしいのだが、食べたことのない味でもあった。

 まさか……モンスターのミルクから出来てるとか……?

 いや、モンスターって哺乳類? 爬虫類? 鳥類?

 恐竜って、卵から孵るんだよね、確か。

 じゃあ、このチーズの元ってなに~~~~~~~~?


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