○モンスターのサンドイッチ:2
「なんだよ、急に」
「だって、私は一応ディオンのライバルなのに、魔力の使い方教えてくれて――」
「バカ、お前は魔王補佐に決まってるだろ。俺が魔王になった後、使えないヤツだと困るからだ」
……ディオンってば、自分が魔王になる気満々だよ。
え、じゃあ、その為に魔法の使い方教えてくれたの!?
「ていうのは、飛躍しすぎだけど」
テーブルに乗せた両手の指を組みながら、ディオンが唇をアヒルみたいに横に広げて、またにんまりと笑う。
ああ、はは……からかわれてるんですね、私……。
「でも、ライアンもルディも自分が魔王になる気だぞ。とは言っても、選定はデュクリアスの鏡がするんだから、こっちで揉めても仕方ないからな」
なるほど、仲間内で権力争いしないで済むように上手く出来てるんだ。
「勿論、候補者が死んだり、魔力を失くすとか、大ケガするとかあれば、候補から脱落するらしいけど」
いや、それ、凄く権力争いの火種になるよ! 思いっきり!
「ジェイクが、『凛音推し』だからな。俺もライアンもルディも、ジェイクには世話になってるから、協力は惜しまないけど」
さっきのライアンやディオンの、ジェイクに対する態度を見ていても、彼らにとってジェイクは特別な存在なのだと知れる。
ルディは単純そうでいて意外と考えが見えないけれど、ジェイクに対しては好意的な印象だった。
「皆、ジェイクには信頼が厚そうですよね」
「そらぁな。子供の頃は皆ここに住んでて、ジェイクは兄貴みたいな存在だったから。特に俺はジェイクとずっとこの城で一緒だし、ライアンもルディも生家へ戻ってからも、ここには良く来てるし」
王族の血縁というだけでなく、そういった経緯があるからこそ、ジェイクは彼らにとって特別なのだろう。
それに彼ら三王子同士も、親交は厚いようだ。
「兄弟仲が良いんですねー」
「仲がいいっつーか……。魔王不在になったから、次の魔王が立つまで誰かが執務やらなきゃなんねーだろ。行政はここのリンデグレン騎士団がやるんだし」
「執務……」
そうだ。魔王には『王様的』な仕事があるんだ。ここって王政みたいだし。
「俺達も子供の頃は政の役になんて立たないから、当時の魔王の執務補佐がジェイクの叔父に当たる人で、そのまま執務官になったんだ。それで何人か補佐がついて、その中の一人がジェイクだった。当時のジェイクは、まだ十五歳だ」
今の私より二つも下だ。私が十五歳の時って『きゃっきゃっうふふ』と、ただ楽しく過ごしていたと思う。
ま、つい最近までもそうだったんだけど。
「俺とライアンがちょうど十五歳になった年、ジェイクの叔父さんが病気で亡くなって、ジェイクが執務官になった。で、今度は俺達が執務補佐になったんだ。ライアンはリュレイナ神殿に住んでたから、こっちとあっちを行ったり来たり。ルディはまだ十一歳だったけど、ここの学士に帝王学教えて貰いがてら執務を手伝いに来てた」
「え、そんな子供の頃からですか?」
「そう。俺達兄弟が魔王候補に選ばれるのは濃厚だったし、それがなくても大人になったら、誰かが執務官にならなきゃなんねーからな。デュクリアスの鏡の魔王選定時期は妥当だったんだろうけど、ルディにとっては、ちと早かったかも。でも、いつまでも魔王不在の方が危ないだろ。年齢や性別は関係なく、力のある者が魔王になる必要があるんだし」
おお、想像していたより状況はなかなかに複雑だ。
細かいところはよく分からないので、なにかあったら訊くことにしますね。
「それに……ジェイクが凛音を推したい気持ちも理解できるしな」
「え、それってどういう――」
途中まで質問を投げ掛けたけれど、バルコニーへメイドさんがカートを運び入れて来たのに気づいて話を中断した。




