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○モンスターのサンドイッチ:1

 私はまだまだ城内の間取りやシステム的なことには詳しくないので、ディオンに連れられて塔内へ入り階段を上っていた。三階のルーフバルコニーへ行くらしい。

 途中ですれ違った城働きのメイドさんに、ディオンが昼食の準備を頼んでくれていた。

 白い石造りの階段の縁には茶系の小さな四角いブロックが連なって埋め込まれていて、可愛いらしいデザインだ。

「ひゃ~、すごい~~~~!」

 塔からせり出した一画は童話の絵本で見るようなバルコニーで、私の胸の高さ辺りまである白い手摺は、角を取られた滑らか仕上げのやはりロココ調デザインだ。

 広いバルコニーの真ん中に白いテーブルセットが置かれていて、こちらもとても可愛らしい。

 でもそれよりも景色がすこぶる素敵だった。

 庭園に迷路の如く配置された花壇がここからだと、ざっと見渡せるのだ。

 手前に赤、次に青、その次はピンク、その次は白とエリアごとに花の色が分けられてあり、真ん中辺りは円状に幾重にもなっていて、それが幾何学模様へ変わり庭園全体へと広がって行く様が素晴らしい。

 でもやっぱり、迷路にしか見えないのだけれども。

 そして端の方にふと目を留めれば、例の板の的と無傷なままのエルクフェンの彫刻があった。

 ふ……嫌なもの見ちゃった……。

「ま、座れ?」

 私が景色に感激した様子に満足したのか、ディオンが得意気に笑って席を勧める。

 彼は見た目の印象が強くて怖そうだなと思っていたのだけれど、案外人懐っこいようだ。

 このルーフバルコニーにも私が喜ぶだろうと、連れて来てくれたのだと思う。

 細かい心遣いをしてくれるんだね、ディオン。人間界の女の子にモテるよ、きっと。

 籐製の白いテーブルにガラス台、揃いの白い椅子に厚手のふんわりクッション。

 お風呂場のサロンのとは違って、こちらの方がアウトドア用としてがっしりした作りで、キラキラとした陽光の差し込むこのテーブルで食事すれば、リゾート地にでも来たような気分にさせられるだろう。

「今日は昼飯食ったら、お前はもう部屋で休んだ方がいい」

 向かいの席に腰掛けつつディオンがそう言う。

「え……そうですか?」

「魔力を使うと疲れる。体力や精神力使うのと同じだからな。良く考えてみれば、凛音はまだ魔力を使いなれてねーから、もうやめといた方がいい」

「まだ結構、元気ですよ」

「ふ、あとで分かる」

 背もたれに身体をゆったりと預けると、ディオンが意味深にニマリと笑う。

 まぁ、貴方がもういいと言うなら、私ももういいんですけどね。ひとまず暴走の危機は回避出来そうだし。

 とはいえ、魔力の使い方を教えてくれたのには、感謝で一杯だ。

 考えてみればディオンも含め、ライアンもルディも魔王候補なのに、私がちゃんと魔法を使えるよう協力してくれるのが不思議だ。

 彼らは私とは根本的に違うし、魔王候補なのなら、自分が魔王になりたいのではないだろうか。

「ディオンは、魔王になりたくないんですか?」


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