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好きだった人が突然勇者になっちゃって、私の命を狙ってきます  作者: うさたろう
第四章、デュクリアスの鏡とさまざまな事情
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○デュクリアスの鏡とさまざまな事情:7

「神託に背けば、死あるのみです。デュクリアスの鏡より神罰が下され、業火の炎に焼かれてその身が消滅すると聞きました」

 なにそれ……怖いんですけど……。

「逃げることも叶わないのです。このデュクリアスの鏡は、他の鏡やまたそれに近い鏡面のものならば、全てを媒体にします。この部屋へ来ずとも、緊急時には窓ガラスや水面などへ映像を飛ばしてくることすらあります」

「……ということは……」

「神罰も同じように、傍の媒体により与えられるのでしょうね」

 う……こわい。これはかなり、こわいぞ……。

 宗教信仰とか精神面だけの問題じゃないよ、これ! 実害アリアリだよ!

「このデュクリアスの鏡に似た物が、人間サイドにもあるようですよ。あちらは、伝説の剣だとか。刀身から映像が映し出されるようで、空へ大きく映像を送って来たのを、私も見たことがあります」

 そうだとすれば、私達が持ち得る情報は、魔族も人間もほぼ同等なのだ。

 いつか旭先輩が人間界の映像を見て、記憶を取り戻してくれればいいなと、そこに自分の望みを見出した。

 ごく単純思考だとは思うのだれど、魔族と人間が対立していなければ、私としては色々助かるのになぁと、そんな考えが頭をよぎった。

「魔族と人間って、仲良く出来ないんでしょうか?」

 そんな軽い気持ちでうっかり口にしてしまうと、ジェイクの表情は想像以上に曇った。

「……それは……相当難しいかと……」

 声もかなり沈んでしまい、いつもの彼の朗らかさが消える。

 私は慌てて取り繕うようにして話を進めた。

「あ、あの……争いごとの元って……?」

「表だっては、領土争いと権力争いですが……平たく言うと、迫害です」

「……迫害……」

「あくまで、私の立場から言わせて貰えば、ですが」

 ジェイクは今まで見せたことのない冷たい表情を見せる。

 背筋にぞくりと寒気が走った。

「魔族は人間に比べて、その数が絶対的に少ない。だからか、人間達は『この世界は自分達のものだ』という主張をやめない。たとえば、人間界に存在する魔女狩りをご存知ですよね?」

「は、はい……」

「同じです。人間は異質な存在に怯え、それが自分達にはない魔力を持っていると知ると、抹消しようとする。向こうが血気盛んに好戦的で、勇者はその名の元に魔王を亡き者にするのです」

 言葉の最後の方でジェイクは微笑みを見せた。でも、彼に綴られたその言葉の端々に、怒りにも似た鋭い棘を感じた。

 安易に『仲良くしたい』などと、言ってはいけなかったのだと思う。

「けれど、だったら……魔法が使える魔族の方が、人間よりずっと有利なんじゃ?」

「人間には魔力はありませんが、魔術を使います」

「……魔術?」

「人間の中にも、魔力に似た魔法を操れる術師というのが存在するのです。方法はさまざまで私にも詳しくはわかりませんが。その魔術によって魔法アイテムを作ったり、剣や弓に魔法と同じ効果を持たせたりと、そういったことが出来るそうです」

 言われてみて思い出す。

 あの草原でジェイク達と人間の騎士達が軽い戦闘になった時、ニコラスさんが使った剣は、確かに魔法のような効果を出していた。

「ですが……凛音様が旭駿馬を気に掛けておられるお気持ちは、お察しします」

 自分のたかぶった気持ちを抑えるかのように、ジェイクは睫毛を伏せて大きく息をつく。

 それからついと瞳を上げると、もういつもの朗らかな笑顔に戻っていた。

「凛音様、ご空腹ではありませんか? 晩餐会ではお食事が中途半端になりましたから、ネリーにお夜食でもご用意させましょう」


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