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好きだった人が突然勇者になっちゃって、私の命を狙ってきます  作者: うさたろう
第四章、デュクリアスの鏡とさまざまな事情
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○デュクリアスの鏡とさまざまな事情:6

「正確には、もし魔族が人間の領土へ入ると身体に異常をきたします。人間の結界内では、魔族は生きていけないのです」

「え……それって……私もですか?」

「実はそれも、良く分からなんです。凛音様は成り立ちが私達のような一般の魔族と違いますし。とはいえ危険には違いないですから、本日のお昼は慌ててお迎えに行ったのですけどね」

 えええ! だったら、私があのまま人間エリアに入ってたら、死んじゃってたかもしれないの!?

 それにもしそうなら、私は旭先輩を訪ねて行くことも出来ないんじゃないの?

 えええええ~、そんなぁ~~~~。

「逆に、私達魔族の領土であるサーラルウォン全体にも結界が張られていますよ」

 私の内心のこの取り乱しぶりに気づいているのかどうか、ジェイクは尚もトントンと話を進めて行く。

「ここには……人間は入って来られない……?」

「はい」

 きっぱりと言い切るジェイクに、疑いの余地もない。

 あああああ。

 私は先輩のところへ行けないし、先輩を呼ぶこともできないんだー。

「多少の例外はありますが」

「……例外?」

「結界封じの魔法を使えば、人間でもこの場で過ごすことは可能です。ディオン様の母君のように」

 そうか。ディオンのお母さんは人間だったんだ。

 じゃあ、先輩でもここに――

「ただその魔法は、魔王ほどの魔力がないと使えませんが」

 う……厳しい……。そう簡単にはいかないんだね。

「結界は水神リュレイナの加護により強力に張られています。それも、巫女のお力があればこそですけれども」

 ああ、その名前聞いたことありますよ。えーと、確か――

「その巫女って、ライアンの……」

「ライアン様の母君であるフィミア様です」

 えー、ライアンって、何気に凄い血筋なんだ。

 となるとフィミアさんは、前魔王の奥さんってことにもなる。

「まぁ、では。一度やってみましょうか。今の旭駿馬を見られるか、どうか」

「ぜ、ぜひ! ぜひ、おねがいしますっ!」

 ジェイクが「はい」と穏やかに返事をして鏡にそっと手をやる。

 今度はこちらを向いたままでスッと睫毛を伏せて、精神統一した。

 心臓がトクトクと高鳴る。せめて先輩が無事かどうかだけでも知りたい。

 しかし、そんな期待は敢え無く砕かれ、どーんと『検索不可』という文字が出て来た。

 ガクリと肩を落として、ソファに両手をつく。

 う……。いや、無理だってジェイクも言ってたし、分かってたよ。

 でもね、なんかその妙な『ネット検索ダメだった』的な表示に脱力させられるんですけど~~~~。

「ですが、旭駿馬は人間の町で元気にしているようですよ。おそらく今はクレーバール城にいるのでは、と思います」

 意外なジェイクの言葉に、パッと顔を上げた。

「え……なんで、そんなの知ってるんですか?」

「オーフェスに調べて貰っていて、さっきの晩餐会の時に戻って来たんですよ。でも凛音様にお伝えする間もなく、あの騒ぎになりましたので」

「え、じゃあ、オーフェスは人間の領土に入れるんですか?」

「モンスターは各結界に順応出来るものと出来ないものがいます。オーフェスの場合だと魔族の結界は問題なく順応していて、人間の結界には短時間なら耐えられます」

 ああ、そうだったんですね。

 く……あの騒動さえなければ、もっと早く教えて貰えてたのに~!

 ともかく、先輩は無事なのだと分かった。それだけでもホッとひと安心だ。

「それから肝心の魔王選定についてですが、選定日は約一ヵ月後の三日月の夜です」

 ジェイクが真剣な表情に変わる。私は身を起こして息を呑んだ。

「もし仮に……魔王に選ばれた場合の拒否権は……?」


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