表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/77

○三王子ととびきり派手な宴:7

 

 程なくして前菜を食べ終えると、次のお料理が運ばれて来た。

 二番目の前菜といった感じで、今度は色んな物が少しずつ乗っている。

 凄いなー、フランス料理のフルコースってこんな感じなのかな。

 怖かったり哀しかったり不安だったり、目まぐるしい一日なのに、お腹って空くんだな。まぁ、それはそれでなんか幸運なような、切ないような。

 とにかく、しっかり食べておくに限るよね。いざという時の為にも。

 ところが、またお皿に見慣れないものが乗っていた。

 茶色とピンクのは、多分なんかのパテだ。それとキッシュと生ハムは分かり易い。

 試しに生ハムを食べてみると、すこぶるおいしい。

 塩味の加減とまったりしつつしっかりとお肉の味がする。今まで食べた中でも、一番といえるほどだ。

 でももう一つ、でろーんとした緑色のジャムみたいのが乗っているのだ。

 スライスしたパンが添えられているので、塗って食べろという感じなのだが。

「あの……これ、なんですか?」

 またもやこのジャムみたいなのを指差して、隣のジェイクへ訊いてみる。

「ああ、リリークですよ」

「え……リリークって……?」

「スライムの一種です」

「スライム!? って、あのよわっちぃモンスターの!」

「食用ですから、大丈夫ですよ」

 いやいやいやいや。食用とかそういう問題じゃ――

 いやぁ、やっぱりいるんだ、モンスター! しかも食べたりもするんだー!

 そうだよね、似て非なる世界なんだね、異世界って……。

「味は敢えて例えるなら、イクラといった感じですね。おいしいですよ」

 言いつつジェイクが、それをパンに塗ってぱくりと口に入れた。

 また実食してみせてくれた……。

 けど、安心して食べるとか出来ないから! 今回は!

「人間界でも、生で食うもの沢山あるだろ?」

 ライアンが『なにが気に食わない』とでも言いたげな顔をする。

「な、生なの!? これ!」

「そりゃ、そうだ。イクラを煮て食わねーだろが」

 ディオンも当然といわんばかりに説明するが、それはなんか全然違うと思う。

「モンスター、食べられないの?」

 カトラリーで生ハムを切り分けながら、ルディがそう訊いて来た。

 オーフェスはルディ達の後方にある大きな窓に掛かった赤カーテンの下で気持ち良さそうに丸くなっている。

「た、たべたことないから……抵抗があるというか……」

「今、食べてたじゃない。これ、ソレティっていうモンスターの燻製だよ」

 ルディが自分のフォークに突き刺して翳したのは、生ハムだと思ってたヤツだった。

 ぎゃ! マジですかっ!?

 たべちゃったー。知らないうちにたべちゃったよー、モンスター。

「ふ、ちょっとバカなんだね」

 ルディがまた不敵な笑みで言い、

「バカというか、抜けてるというか」

 ディオンが追い打ちを掛け、

「思慮が浅いな」

 ライアンに冷たくいなされる。

 三王子……慣れない異世界で苦労してる者に対して……言いたい放題ですか……。

「ですが、凛音様はとてもお美しいでしょう?」

 ――と。脈略なくジェイクがそんな妙なフォローを入れて来た。

 ぎゃぎゃ! なんでそんなこというの!? 笑い飛ばされるよ!

 けれど予想に反して、王子達は一瞬にして顔を赤らめ、それぞれに目を逸らした。

 ……なぜにそこで赤くなる? しかも、すごく分かりやすいツンデレ風に。

 するとジェイクが、ついと私の頬へと顔を寄せて来て囁いた。

「凛音様は、この世界では大層お美しいです。特に白いお肌に映える艶やかなその黒髪は、魔族にはとても魅力的なのですよ。私もうっかり、みとれてしまうほどに」

 ち、近いですよ……ジェイク……。

 また、貴方の吐息が耳に掛かってくすぐったいというか、私には刺激が強過ぎますので……。

 それにしても……異世界補正(と言っていいのかどうか)が、凄すぎる。

 ここでは私、結構いい感じに見えるらしい。

 おう! なんて、ありがたい!

 でも普通に暮らして来た私にはそういうのは慣れないので、妙な沈黙に誰も口を開かないこの空気に耐えられなくなってきた。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ