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○三王子ととびきり派手な宴:5

 この場には一応主要人物は揃っているはずなのに、一体誰が入って来るのかと緊張してしまう。

 うにゃ~~~~~ん。

 ………………ねこ?

 守衛の騎士達に扉を開けて貰ったらしい黒猫がご機嫌な鳴き声を上げなら、ひょうひょうと部屋へ入って来た。

 そして、てしてしとペルシャ絨毯らしいフロアラグを踏みしめながら、こちらへとやって来る。

「ああ、もう戻って来ましたか」

 ジェイクが椅子から上半身を倒して彼の足元で立ち止まった黒猫へと手を差し出すと、黒猫は甘えるように『うにゃん』と鳴いてジェイクの手に頬を擦り付けた。

「なんだ……ジェイクの飼い猫なんですか?」

「ジェイクの使い魔だ」

 即座にライアンが教えてくれる。冷たそうに見えるけど、意外と親切なのかも。

「使い魔って……?」

「名前は、オーフェス」

 問いの答えとしては少し外れたけれど、そう付け足したのは黒髪王子だ。

 彼はほんのり笑顔を浮かべて、ジェイクと黒猫の様子を眺めている。

 この人は穏やかな表情をしていると鋭い目つきじゃなくなって、案外柔和になるんだなー。

 でも、猫の名前は分かったけれど、私はまだ貴方の名前を聞いてないんですよ。

 焦らずともジェイクが紹介の続きをしてくれると思うので、待ちますけどね。

 ジェイクが黒猫の頭を撫でると、黒猫はにゃんにゃかにゃんと急に言葉でも話すようにせわしなく鳴き始めた。

「情報収集に役立ってくれています。オーフェスはとても働き者なので」

 いかにも今黒猫と話し終えたといった風に、ジェイクが身体を起こして私へそう説明する。

「……猫と、話せるんですか?」

「私はオーフェスと契約を結んでいますので」

 この世界の猫ちゃんてば、そんなことまで出来るんだ。

「だから、『使い魔だ』と言ったろ?」

 ライアンが若干冷ややかに指摘してきたが、こっちは『使い魔』とかピンとこないんだから仕方ない。

「オーフェス、おいでおいで?」

 椅子から立ち上がったルディがテーブルの向こうから、ジェイクの足元にいるオーフェスとかいう猫ちゃんへ声を掛ける。

 ルディの無邪気な笑顔はあんなに可愛いのに、なぜあんなに辛口か。

 黒猫オーフェスはルディの呼び掛けに応えて、ぴょいと一旦テーブルへ飛び乗り、次のジャンプでルディの足元へと軽やかに飛び降りる。

「よーしよしよしよし~~~~」

 北で動物王国を築いたオジサンみたいに嬉々としたルディがオーフェスを自分の膝へ抱き上げて撫でると、オーフェスもゴロゴロと喉を鳴らしてルディの手や胸へスリスリと気持ち良さそうに身を寄せた。

 わ~、可愛い~、いいな~。私も後で触らせて貰おうっと!

「中断してしまい、失礼いたしました」

 ひと息ついたジェイクが仕切り直して、紹介の続きを始める。


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