○三王子ととびきり派手な宴:3
「……え、そうだったんですか?」
なんだ、やっぱり普通の従者じゃなかった訳ですね。
それならそうと早くいって下さいよー。
うっかり乗せられて、『ジェイク』とか呼び捨てにしちゃってますよ、もう。
「血族ではありますが、私は魔王直系ではありません。初代魔王には妹がいて、その女性が私共の祖先となります。嫁ぎ先が当方のモランディ家でしたので、その縁あってモランディ家は、このリンデグレン家へ仕えるようになりました」
いえいえ、それは充分に高貴な出身と言えるのでは。
彼が自称する『補佐人』というのは、相当重要なポジションのようだ。
ジェイクって、何気に凄かったんですね。そうなのに腰が低くて物腰柔らかなのも凄いです。
「あ、じゃあ……他の方は魔王直系なんですよね」
「はい、王子様方は前魔王ルトバルト・リンデグレン様のご子息です」
ならやはり、彼らは間違いなく兄弟だ。
ジェイクは笑顔で続ける。
「では、改めてご紹介させて頂きますね。まずは凛音様から向かって右側のライアン王子。お歳は二十歳になられます」
ジェイクの視線に沿ってそちらへ顔を向けると、銀髪王子と目が合う。
落ち着いた青をベースにした衣装は凛々しい雰囲気の彼に良く似合う。
確か、昼間にはグレーベースでスリム系の衣装を身に纏っていた。普段はああいう服装を好んでいるのだろう。
少し長めのサラリとした髪、じっとこちらを見据える青緑色の瞳は独特で神秘的な輝きを放っている。
こうやって顔を合わせてもみても、最初に会った時と同じように彼はとても平静でクールな眼差しだ。
「ライアン様の母君はリュレイナ神殿を護る水の巫女フィミア・エスレルート様です」
なるほど、言われてみればピッタリ。水の魔法がお得意なのも納得。
「ひと月ほど前に魔王候補に選出された折、こちらのリンデグレン城へおいで頂きました。今後はこの城をお住まいにされます」
「それまではどちらに?」
「リュレイナ神殿」
説明してくれているジェイクへ訊き返したのだが、銀髪王子が短くさくっと答えた。
そうですよね。まぁ、普通に考えてそうですよね。
一応確認してみようと思っただけなんですよー。
「じゃあ、ライアン様も――」
「ライアンでいい。敬称は必要ない。お前と俺達は同じ魔王候補。立場は対等だ」
あれ、意外だ。そういうのに細かそうに見えたけど、そうでもないらしい。
ならば、お言葉に甘えて――
「では、ライアンもこのお城へ来たばかりですか?」
「子供の頃はここに住んでた。魔王が封印されてから、リュレイナ神殿へ移った」
おっと、新情報が。
次期魔王選定状態だから、もう前魔王は亡くなったと思っていたけど、封印されているだけようだ。
新しい単語と訊きたいことがどんどん増えるなー。
全部は覚えきれないから、思い出したら順番に確認していくしかない。
しかしライアンって、淡々としゃべる人なんだね。
――と、話がひと息ついたところで、前菜が運ばれて来た。
大きな白いお皿の中央にハーブサラダらしきものが乗っている。
というのも、初めてみる花の形をした緑色の物体が幾つか入っているからだ。
つるんとした表面はピーマンっぽくもあり、大きさは平らに伸ばしたプチトマトほどで、五枚の花びらが広がっている。多分、野菜の一種なのだろうけど。
……なんだろ、これ。




