○三王子ととびきり派手な宴:1
――ジャルードの間。
その大広間の重厚な両開きの扉の前には守衛の騎士が左右に一人ずつ立っていて、私とジェイクに折り目正しく一礼してから、ギィと扉を開いてくれた。
ひゃー、なんてものものしい~。
しかもこれから魔王候補の王子三人とご対面とは、緊張で心臓がどっきどきですよ。
「どうぞ」
レディファーストらしく、ジェイクが慣れた振る舞いで私へ先に入れと促す。
できれば貴方の後ろにこっそり張り付いて、しれっと入りたかったんですが……。
それはマナー的にダメなんでしょうね。分かりました。
仕方なく大広間へずいと足を踏み入れる。
――と、既に席に着いていた三王子が一斉にこちらを向いた。
大きな白ベースの大理石テーブルの窓側席に、三人の王子は横並びで腰掛けていた。
年頃は全員が二十代前後で、最奥が銀髪、真ん中が黒髪、そして一番手前が金髪と、見事に全員髪色が違う。
あれ、三王子って兄弟じゃないの? こんなに髪色違うもの? あ、魔族だから?
それが気になって思わず彼らを見つめていると、彼らも大きく目を見開いたまま静止し、じっと私を見つめている。
やがて私が我に返るのと同時に、彼らもハッとしたらしく、心なしか頬を赤めて三人一斉に視線を落とした。
……え? なに、その反応。
「皆様、凛音様に見惚れておられたようですね」
急に背後からジェイクが、私の耳元へ唇を寄せてそう囁いた。
――び、びっくりしたっ!
言われた内容以上に、ジェイクの吐息が耳に掛かったことにだ。
「お席はこちらですよ」
もう決まっているのかジェイクが私を席へと誘導するので、彼の後を付いて行く。
王子達の目前を歩くのもドキドキだが、ジェイクの囁きの余韻にもいまだ心臓がどっきんどっきんしている。
私の席は最奥の銀髪王子と黒髪王子の間くらいに位置する向かい側で、ジェイクは私の左隣だ。
メイドに引かれた椅子に腰掛けてふっとひと息吐いてから、改めて前を見て、やっと気づいた。
「あ、私を殺そうとした人達だ……」
つい口からするっと言葉を零してしまうと、黒髪王子と銀髪王子が弾かれたようにして同時に顔を上げた。
――間違いない。
黒髪ワイルド系で赤目の男は火柱を出した人で、クール系の銀髪で青緑色の目の男は風と水の魔法を使った人だ。
晩餐会用なのか、服装が昼とは違ってややクラシックないわゆる王子服っぽいもの着ていたので気づくのが遅れてしまった。
それにあれはてっきり、ジェイクが従者を引き連れて来ていたんだと思い込んでいたのだ。それがまさか、魔王候補の王子達だったとは――
「誰が殺そうとしたって? 俺達はお前を助けてやったんだぞ」
ギロリとこちら睨んだのは、黒髪王子だ。
元々彼の赤目はインパクトが強く目つきも鋭いので、その目力に圧倒される。
「だ、だって……焼け死ぬところだったんですよ……」
「ちゃんとギリギリ外してた! お前が動かなきゃ、なんの問題もなかった!」
「びっくりして動いちゃったら、どうするつもりだったんですかっ!?」
いきなりケンカ腰で来られたからか、つい言い返してしまった。
「俺がいたから問題ない」
冷めた声色で口を挟んで来たのは、銀髪王子だ。
自分は水の使い手だから、火の暴走を止められるという意味っぽいけど……。
でも、この人にも溺れさせられそうになったのに~~~~。
「溺れてないだろ」
……く、まだなにも口に出してないのに、心を読まないで下さいよー。
「顔見たら、丸分かりだ」
更にまた人の心を見透かし、つんとそっぽを向く銀髪王子。
ちょっと感じ悪いんですけど~~~~~。




