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好きだった人が突然勇者になっちゃって、私の命を狙ってきます  作者: うさたろう
第二章、リンデグレン城と厄介な事実
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○リンデグレン城と厄介な事実:9

 身形を整えた後、ネリーに部屋へ送り届けて貰うと、そこで待っていたジェイクさんが私のドレス姿を見るなり感嘆の溜息を漏らした。

「ああ、とても素晴らしいですね!」

 ひゃ~~~~、恥ずかし過ぎる~~~~。

「凛音様には、漆黒のドレスが良くお似合いになると思っていましたよ」

「そ、そうですか……ちょっと大人っぽ過ぎるかなと……」

 上質のシルクドレスは肌触りが最高で、こんなもの着るチャンスなんて結婚式くらいだと思っていた。と、言ってもこれは黒ドレスなのだけれど。

 スカート部分は四段重ねになっていて可愛らしさのあるデザインなのだが、トップス部分がシンプルなビスチェスタイルで肩がすっかり出ているのだ。

 長い黒髪はネリーが真ん中辺りからくるんくるんと巻いてくれたので、髪がたっぷりとしたボリュームを持って両肩にふわりと掛かり、セレブのお嬢様風な上品さで胸へと流れている。

 首にはドレスと共布のシルクリボンがチョーカーとして巻かれていて、右耳の上辺りには生花の黒薔薇コサージュをつけて貰った。

 漆黒の薔薇なんて、初めて見たよ。

 これはやっぱり、この世界にしかない薔薇だと思う。

 勿論ヒールも黒で、こんなに上から下まで黒づくめなのは初めてだ。

 けれど一切の差し色やスパンコール的な飾りが無くても、上質のシルクはやわらかい光彩を放っていて、生地そのものが艶々と綺麗なのだ。

 素材が良いとこんなにも違うんだなー。

 とはいえ、慣れない上等な肩出し黒ドレスは、気恥ずかしいには違いなく。

「想像以上にお綺麗です。リクエストして作って頂いた甲斐がありました」

「え、私がここに前から作ってあったんですか?」

「いえ、凛音様が眠っておられた間に、つい先ほど作って貰いました」

「ええぇ、そんなに早く!?」

「ネリーは、そういった魔法が得意なのですよ。本人からお聞きになりませんでしたか」

 ああ、なるほど、魔法……。

 ネリーはそこまで言わなかったので、知りませんでした……。

「まだまだ沢山作って貰う予定ですので、お好きなものをお好きな時に着て下さいね」

 ……魔族……凄すぎる。

「では、晩餐会が開かれるジャルードの間へ向かいましょう」


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