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好きだった人が突然勇者になっちゃって、私の命を狙ってきます  作者: うさたろう
第二章、リンデグレン城と厄介な事実
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○リンデグレン城と厄介な事実:7

 

 腕から顔を上げると右手首に黒い三日月の痣が見えた。その隣へ左手首も揃えて、知らない間に生まれた刻印を眺める。

 黒い痣は魔王候補の証、左手首の赤い星型の痣は人間界との繋がりを示すと、ジェイクさんは言った。

 この痣は、いつか消えるのだろうか。

 魔王候補でなくなれば黒い痣は消えるとしても、赤い痣が消える時は恐らく人間界に戻れた時だろう。

 でももし、もう戻れなかったら、この『繋がり』を示す痣は……?

 

 突き詰めて考えると温かいお湯の中だというのに背筋に寒い物を感じて、ぶるりと身震いをした。

 両手をサブリとお湯の中へ下ろして、湯面が唇ギリギリになるまで身を沈める。息を吹き出せばぶくぶくと水泡が立った。

 ともあれ、なんとか旭先輩に会える方法がないかを考えないと――

 ジェイクさんに相談したら、何か教えてくれるかな?

 でもジェイクさんってにこにこ優しいけど、勇者である先輩に対しては、やっぱり良くは思っていないみたいだったな……。フルネーム呼び捨てだったし。

 なんたって、魔族と勇者だもんね。仕方ないか……。

 ていうか、私も魔族チームなんだよね。ぐすん。

 そういえば、私がここに連れて来られた時に潜った魔法陣って、瞬間移動できるヤツだったんだよね。

 便利だなー、魔族。

 あの魔法陣、旭先輩に会いに行くのに使ってくれないかなぁ? ダメかなぁ?

 

 ――ザバザバザバッ!

 

「うぉおうっ!?」

 突然、お湯が勢い良く流れ出て来た音に驚いた。

「な、なに……?」

 キョロキョロと辺りを見渡してみれば、すぐ先の浴槽の縁に白い彫刻があった。

 ……なに、あれ?

 その彫刻までお湯の中を歩いて進んで行く。私が進むと赤い花びらがワラワラと左右へ流れ、モーゼの如く道が出来るのが面白い。

 いや、面白がってる場合でもないんだけども。

 彫刻はマーライオンっぽいヤツだった。スパワールドなんかでも見掛けるのと同じで、口からお湯を吐き出している。

 お湯の温度をキープするのに、定期的に熱めのお湯が出る仕組みらしい。

 でもマーライオンは不思議生物とはいえ、顔はライオンだ。

 ところがこれは、全くどんな動物か分からない。

 頭部の左右から波型にうねって伸びた二本の大きな角。突き出た鼻先にも小さな角があり、ガバリと開けた口には二本の長い牙。

 『なんとかタイガー』みたいな感じだが、やはりちょっと違う。

 ……なんだ、コイツ? 

 こんな世界だから、やっぱりモンスターかな。

 この顔から察するに、きっと凄く怖くて悪いヤツに違いない。


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