神の楽園 ~5~
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「うっし!ヤッタネ!」
アリーナの真ん中で梁は満面の笑みを浮かべる。渾身のガッツポーズまで決めていやがるよ。あいつ。
「どうだい?ランキングなんてアテになんねえだろ?」
オレも笑顔でエナに問う。オレの笑顔は梁みたいな爽やかな笑顔ではない。少し嫌味な笑顔らしい(エナ曰く)。
「負けたエルギンが悪いのですわ」
エナ嬢は自分の予測が外れたせいか不服そうだ。
このままじゃ、なんだかオレに飛び火しそうなので、俺は話題の軸を変えた。
「にしても二人共上手く修練系と才能系を使いこなしてたなぁ・・・・・・」
「修練系しか使わないあなたとは違いましてよ?」
「さっすが、才能ある人は違ぇわな」
異能力には才能系異能力と修練系異能力の二種類がある。
才能系異能力は主に、新人類ならひとつは持っている、その個人だけの、世界でひとつだけの異能力である。もともと特別なオンリーワンである。
例えば、エルギンの『武骨』。梁の『必中』はこれに該当する。一人一つの能力。簡単にまとめてしまえばそれが答えだ。
それに対して修練系異能力。
これは『突風』や『飛脚』が必然的に当てはまる。
修練系異能力は新人類が作り出した異能力である。修練、つまり練習すれば誰でもできるようになる異能力である。これは一人一つという決まりはなく、覚えられる範囲は覚えておくべき技術である。
っていうか覚えないと実戦で死ぬよ?あと座学試験。
「あら?才能の問題ではありませんわ。優れた戦士というものは綿密な作戦を立てて勝負に挑むものですのよ?」
「へーへー。お言葉ありがとーごぜーやす。優秀な戦士さん」
「っな!?私はあなたの質問に根絶丁寧に教えただけですのよ!?」
エナが怒りながらオレに言い寄ってくる。ちょっとからかいすぎたか?エナは冗談通じないタイプだしなぁ・・・・・・
『・・・・・・エナ・コロッセオ。いるならアリーナ中央に集まってください。』
おっと。どうやらいつの間にかレナの順番が来ていたようだ。
「じゃあ、今日も頑張ってこいよ!エナ!」
オレはからからと笑いながらエナを送り出す。
「当たり前ですわ。私を誰だと思っていますの?」
エナは心外だとばかりに肩をすくめてからオレを見つめる。その視線にはなんだか温もりすらも感じる。
オレはその視線に答えるかのように笑顔で右手を掲げる。
エナも呼応するかのように右手を掲げる。
パァン!
大きな音のハイタッチ。
「・・・・・・行ってこい!」
「ええ。言われなくても!」
オレたちの間に言葉なんて必要なかった。