神の楽園 ~4~
速く。
速く。
ただただ風のように速く。
エルギンの竜巻は、梁にとっての追い風だ。
今の梁の姿はまるで風と舞い踊る風神。
――『疾風の梁』という異名通りに。
「飛脚!!」
飛脚もまた、突風と同じ修練系異能力のひとつである。
飛脚は空を走る異能力である。飛ぶのではない、走るのだ。
事実、梁は追い風に乗りながら、アリーナの四方八方をビュンビュンと駆け回っている。
飛脚は自身の足の速さに比例してどんどん速くなる。
そして梁の速さ。
――梁は学園一、足が早いのだ。
最後に梁の才能系異能力、『必中』。
梁はこの二つでランキングを勝ち上がる、学園で話題のルーキーなのだ。
「必中・・・・・・」
ついにエルギンの背後に回り込んだ梁は、意識を研ぎ澄まし、右手の拳に全神経を集中させる。
「しぃ~まったぁ~」
エルギンが緊張感のない声を出したところでもう遅い。
「一点張り打撃!!」
シュッっと。
そんな音がしただけだった。
だが次の瞬間。
ズズズズーン!
そんないかつい音を立ててエルギンが地に伏せた。
それまで吹き荒れた豪風もぴたりと止み、その閑散とした雰囲気が、必然的に結果をアリーナ全域に知らしめることになる。
『ランキング572位!梁・陳真!勝利!ランキング昇格!』