神の楽園 ~2~
まぁ、この学園にいる以上、オレも異能力者なわけで。
「つーかさっきの横暴だよね・・・・・・?児童虐待じゃね?」
不自然に腫れた俺の右頬。さっきハゲに殴られた時のやつだ。
「まったく・・・・・・授業をまともに受けないからですわ・・・・・・!」
そういって手当をしているこのパツキン美女はエナ・コロッセオ。
オレが神の楽園に入ってからできた初めての友人だ。
「いや、だってあれだぜ?旧世代災害とかもう何回目だよ?アダムとイブはもういいよ?」
「毎日の予習復習は大事ですわ。それは基本中の基本ですもの」
「うっわ!でた!お嬢様思考!もっと市民の気持ちも考えろよな!」
「お嬢様は関係ないでしょう!それにあなた市民かすらもわからないでしょうに!」
今のエナの発言に少し補足を加えよう。
オレは記憶喪失だ。
覚えていたのはオレには東雲継遥という名前があること。もう一つはオレが異能力者であることだけだった。
オレは何故この学園にいるのか知らない。気がついたら何故か、神の楽園の高等部の広場にいたのだ。
そんな身元不明、いかにも怪しいこのオレに、エナはなんの隔たりもなく、優しく接してきてくれたのだ。エナには本当に感謝している。エナ様マジ女神。
――ワァァァァァ!!
ふとそんな歓声が俺とエナの耳に入る。
オレとエナはお互いに顔を見合わせる。
「・・・・・・なぁ、エナ。今日って何月何日だっけ?」
「・・・・・・5月の第二月曜日。14日ですわ」
「・・・・・・っていうことは」
「もしかして・・・・・・?」
「「今日ってランキング戦!?」」
俺とエナは同時に声を上げて、アリーナに向けて駆け出した。
◆
――ランキング戦。
月に一度、第二月曜日に行われる、生徒同士の異能力を使った戦闘訓練である。
これは、訓練であるとともに試験でもある。
この試験には全校生徒が月に一回だけ参加できる。勝ち上がることで単位も貰え、さらにランキングも上がってれば食堂のタダ券10枚セットなんかも貰える。
座学よりもよっぽど単位を取れるこのランキング戦は当然みんな参加するわけで。
『ランキング348位!エルギン・エメラルダ!ランキング572位!梁・陳真!両者前へ!』
ランキングは1000位まである。それ以下は圏外。
それにしても今回の対戦カードはエルギンと梁か・・・・・・
「エナはどっちが勝つと思うよ?」
オレは飄々とエナに問う。
「無論、エルギンですわ。彼の方が順位が高いですもの」
エナはアリーナに広がるバトルフィールドを見つめながら答える。
「いやいや、異能力の差だってあるぜ?俺は梁だと思うなぁ・・・・・・」
「人より自分の心配をしなさいな?ランキング最下位さん?」
「へーへー。親切にどーも」
俺はエナの発言を受け流し試合に集中する。