神の楽園 ~9~
「な、なんですかソレ!?エナ先輩の灰燼の能力ですか!?」
カルマは自分の知らないデータに驚き、試合中ながら、質問をしてしまった。
だが質問されても答える余裕は、今のエナにはない。
黒い炎は飛んでくる石の礫を、跡形もなく燃やし尽くした。
「・・・・・・これは、煉獄火炎。私の『灰燼』の能力ですわ」
灰燼の異能力。これは現在発見されている才能系異能力の中で最も強いとされる異能力。
――最強の異能力である。
「私の右手は、すべてを焼き払う灼熱の紅い火炎。左手からはすべてを燃やし尽くす煉獄の黒い火炎が燃え上がりますの。これが私の異能力、『灰燼』ですわ」
カルマはゴクリと息を呑み込む。
「さすがランキング2位、エナ先輩はやっぱりすごいです」
「いいえ、まだ中等部で私に左手を使わせたあなたも、十分賞賛に値しますわ」
「ははは・・・・・・ありがとうございます」
カルマは謙遜しているが、実質カルマには実力がある。
中等部相手にエナが左手を使ったのはカルマが初めてだからだ。
「では・・・・・・そろそろ決めさせていただきますわ!」
そう言った矢先、エナの両手から巨大な火球が燃え盛り、天を焦がす。
「ちょっ・・・・・・エナ先輩・・・・・・それ本気すぎじゃ・・・・・・?」
「本気には本気でぶつかります。それが私の信条です!」
業と燃える炎の珠を、エナは弾き飛ばした。
「業火絢爛火炎砲!」
火球は直進する。速度も相当だ。
「うわわっ!」
カルマはなんとか右に飛び込んで緊急回避。
しかし、まだツメが甘かった。
「突風!!」
エナが使用した異能は修練系異能力の基本。突風。強烈な風が左から吹き荒れる。
結果、直進していた火球は動きをカクンと変え、カルマを追尾する形で移動する。
「ええぇ!?嘘だ!?」
「今度は基本を勉強しましょうね」
燃え盛る火球を尻目に、この試合は幕を閉じた。