第7話 休日の過ごし方
それは10時を過ぎても惰眠を貪っていたときだった。
机の上に置いたスマホから、嫌がらせかのように紡ぎ出される着信音。
こちらの睡眠をなんとしてでも遮ろうかとする意志でもあるかのように鳴り響いていた。
「ええい、うるさい! 3コールくらいで諦めろよ」
余りの五月蠅さについに目が覚めてしまった。
仕方なくスマホを手に取り誰が安眠を妨害したのか画面を覗いてみた。
「ん、誰だこの番号? 全然知らないぞ」
間違い電話だろか、それだったら文句を言ってやると思いながら電話に出た。
「おっそーい、一体いつまで待たせるのよ」
第一声がそれだった。
「あの、電話番号間違ってません?」
「えっ、ご、ごめんなさい。ってあんたヒロでしょ。しらばっくれるんじゃないわよ」
ちっ、気付かれたか。
「一体こんな早朝から何の用だよ、碧ねえ。大体なんでこの番号知ってるんだよ」
「10時過ぎてるのにどこが早朝よ。いい加減脳みそが腐るわよ」
「用がないなら切るぞ」
「ちょっと待ちなさい。用があるから電話を掛けたんじゃない。早漏は嫌われるわよ」
「そ、早漏じゃないもん」
「ぷっ、DTのくせに」
プチッ。通話終了。あとは念のため電源OFF。
ちぇ、すっかり目が覚めちまった。しょうがない起きるか。
ちなみに、さっき電話を掛けてきた相手は従姉の黒川碧。
4歳年上で今年こちらの大学に入学したばかりである。前に所に住んでいた時には比較的家が近く、しょっちゅう遊びに来ていた。昔から逆らえず、よく理不尽な行動に巻き込まれたものだった。
1階に降りてみると、どうやら妹のメイも出かけているようだった。
「ふむ、そういえば越してきたばかりで周りの店とか全然分からないんだよな。よしちょっと冒険してみるか」
朝食兼昼食も外で摂るかと思い、外出の準備を始めた。
ものの10分ほどで準備が整い、火の元や施錠の確認をしてから玄関のドアを開けた。
「ヒロ、さっきはよくも電話を切ってくれたわね!」
玄関の前には鬼、もとい従姉の碧ねえが立っていた。
咄嗟に玄関のドアを閉めようとする俺。しかし、すかさず隙間に荷物を挟み込み施錠を妨害する碧ねえ。
「ほう、この期におよんでもまだ抵抗するとは。わかっているんでしょうね、ヒロ」
ちぃ、無駄に反射神経がいいな。しかし家に乗り込まれた時点でこちらの負けか。ここは素直にドアを開けた。
「いやだな~、碧ねえ。いや、どっかの犯罪者が襲ってきたのかと思って咄嗟にドアを閉めようとしたんだよ」
「へえ、このかわいらしい私の顔を見て、そんなことを言うか」
自分でかわいいとか言ってるよ、まったく図々しい。腹の立つことに、まあまあ可愛らしいけど。
「では言い訳を聞きましょうか?」
「え、なんのこと?」
ここは惚けてやり過ごす!
「あ~ん、惚けるつもり? さっき電話の途中で切ったことよ!」
作戦失敗。ならば次の作戦を決行するのみ。
「ごめんごめん、実はスマホの充電を忘れてて途中で切れちゃったみたいなんだ」
じーーー。
やばいです、ジト目でめっちゃ睨んでます。
「ふ~ん、まあこれからの行動次第では許してあげるわ」
「これからって?」
「ヒロ、この街に来たばかりで全然お店とか知らないでしょ。私が案内してあげるからすぐ出かけるわよ」
俺の冒険終了。ここで抵抗しようものなら、ますます機嫌を損ねかねない。
「本当? いや~碧ねえと一緒なんて嬉しいなあ~」
多少棒読み気味になったがなんとか言えた。これも日頃からプレイしているエ○ゲでシミュレーションしているおかげだな。
「ふふん、もっと感謝してもいいのよ」
よし上手く機嫌が直ったみたいだ。
「さあ、行くわよ」
電車で2駅を移動。ちなみに家から駅まではバスで10分の位置にある。
「どう、大抵のお店ならここに揃っているわ」
「へえ、なんかお洒落な店が多いな。しかし碧ねえもこっちに来たばっかりだろ。よく知ってたね」
「受験やら住むところやら何回かこっちに来てたからね。情報収集に抜かりはないわ」
「そういや碧ねえはどこに住んでるの? というかなんで携帯の番号知ってたの? 高校入学からやっと解禁されたばかりなのに」
「うん? 今住んでるところはここから3駅離れたところよ。あんたの住んでるところの方が大学には近いんだけど、あの辺り家賃が滅茶苦茶高いのよ。あと携帯はおじさんに聞いたわ」
あのクソ親父め。人様の個人情報を勝手に漏らしおってからに。しかし、そうか離れているのか。ならば前の時のようにしょっちゅう来襲することはないな。
「とりあえずあの店に入るわよ。ちょっと早いけどお昼にしよ」
「ほーい。確かに混んだ店で食べたくないからな」
「そういや碧ねえは大学の方はどうなの?」
「ん~、まだ始まったばかりだからね。サークルとかも入りたいけどいっぱいあって決めかねてるし。とりあえず先輩から色々聞いて情報収集してるわ」
「楽しそうだね」
「うん、やっぱりこの大学を選んでよかったわ。最初は家を出ることに抵抗があったんだけど、思い切ってよかった」
本当に楽しそうだな。まあ結構迷ってたみたいだからな。
「そういえばヒロ、あんたの方はどうなのよ?」
ギクッ、とても元お嬢様学校に通っているなんて言えない。
「俺の方も普通だよ~。一応仲の良い友達もなんとか出来たとこだよ」
「あんたに友達が? 俺俺詐欺?」
「失敬な! 俺にだって一人くらいできるわい」
「あははっ、冗談よ冗談。でも安心したわ、ヒロって変なところで人見知りするし、てっきり教室内で浮いてる存在じゃないかと心配しちゃった」
いえ、思いっきり浮いた存在です。なんせクラスで男子の格好をしてるのは一人ですし。
「いやだなあ~、そんなわけあるわけないじゃないか~」
またも棒読みっぽくなってしまった。
「部活とかは何に入る予定なの? まさかまた帰宅部? 高校くらい何か入りなさいよ。このままだと灰色の青春を送ることになるわよ」
灰色どころか周りはピンクですが。
「いや、来週から部活の勧誘が始まるんで、そこで色々見て決めようかな~と思ってるよ。あと一応副学級委員だから、あんまり負担がかからない部がいいかな」
「え、あんたが副学級委員! 何、もしかしていじめられてるの? 私が学校に言ってあげようか」
「いや、なんでそうなるんだよ。別にいじめられてないし、たまたまなったんだよ」
「そうなの? あっ、わかった。じゃんけんに負けたのね。そういえば昔っから弱かったものね」
いや、まあじゃんけん弱いけど。まあ説明するわけにもいかないからいいか。
「ま、困ったことがあったら私に言いなさい。なんとかしてあげるから」
碧ねえのこの姉御肌なところは昔っから変わってないな。流石は女ジャ○アンと言われたことだけはある。
「ああ、何かあったら相談するよ」
丁度その時食事が運ばれてきたので食事に没頭することにした。
「ねえねえ、どうこの服?」
「俺に聞く? まあ似合うと思うよ」
「そーいえばヒロってセンスなかったわね。ごめん」
「マジレスするなよ、傷つくだろ!」
「まっ、今日はウインドショッピングだしいいわ」
「買わないの?」
「うん、まずはアルバイト始めないとね。流石に仕送りしてもらっている身分だし、自分の事は自分でね」
「アルバイトかあ」
「なに? あんたは禁止よ」
「わかってるよ。だいたい家は大学生まではバイト禁止だからな」
家の教育方針でアルバイトは大学生になってからやりなさいという事に決まっている。それまではちゃんと勉学に励みなさいっと言われているし、俺自身もそれが当然だと思っている。
「でもどんなバイトするの?」
「う~ん、それが色々迷ってるのよ。時給がいいのは家庭教師だけど、人に教えるのって難しいしね」
うん、いきなり暴力を振るう碧ねえには向かないよな。
「ま、そこらへんも先輩に色々紹介してもらおうと思ってる」
「先輩に頼りっきりだなあ」
「いいのよ、ほらヒロも知ってるでしょ、浅葱先輩の事」
「ああ、あのおっとりした人か。菩薩って呼ばれてた人だよね」
「うっ、まあ時折背後に後光が差してるような感じがするけど。今、浅葱先輩に料理も習ってるんだ」
「料理! 碧ねえが! 一体誰を毒殺したいの?」
「・・・・・・まずはヒロ、あんたかしらね」
やばい、つい口が滑った。
「いや、ほら洗剤でお米洗うレベルだったから」
「それは高校生で卒業したわよ! 今はちゃんと目玉焼きも焼けるんだからね」
おい、高校生にもなってそんなレベルだったのかよ!?
それに目玉焼きって料理なのだろうか? まあ洗剤から考えたら大分ましにはなってるんだろうな。全ては浅葱先輩の指導の賜か。流石は菩薩と呼ばれた女の人だ。また会いたいな。
「まあ見てなさい。いつかヒロを見返してやるんだから」
「お手柔らかにお願いします」
もしそんな機会が来たら全力で逃げようと心に誓った。
「さ、次はあのお店に行くわよ」
もう何件目だろうか。結局碧ねえがウインドショッピングを楽しみたいがために俺が連れ出されたような気が。
「う~ん、このお店もいいわね。本当にここはお店が豊富ね、目移りしちゃうわ」
「碧ねえ、まだ見るの?」
「なに、もう疲れたの?
「いや、もう15時過ぎだよ」
「え? あ、本当だ。時間が過ぎるのを忘れてたわ」
ふう、どうやら今まで夢中になりすぎて時間を忘れてたみたいだな。相変わらず一つのことに夢中になると、他が疎かになるな。
「じゃ、〆にカラオケ行こっか」
カラオケ・・・・・・それは女ジャ○アンの異名の元である。とにかく碧ねえは歌がヘタなのである。しかし本人は全く気にしない。持ち前の音量によって音程とかの細かいことがすべて吹き飛んでいるのである。さらに迷惑なことに、一度歌い始めると自分一人で歌いっぱなしになり、3時間は拘束されることが確実である。
「ごめん、実はまだ課題をやってないんだ。だからもう帰ってやらないとまずいんだよ。時間的にも今からカラオケ行くと、休みの日にしか全員揃うことが出来ない夕飯に間に合わないし」
「む、そうなの。課題はどうでもいいとしても、家族の団欒を邪魔するわけにはいかないわね」
よし、今日は上手く回避できた。
「あ、でも私おじさんとおばさんにそのうち晩ご飯食べに来なさいって誘われてるんだった」
ちぃ、余計なことを。
「家にいるかな? ちょっと掛けてみるわね」
居ませんように居ませんように、と神様にお祈りする。
「あ、もしもし私黒川碧です。はい、お久しぶりです。ええ、そうですね受験で忙しくなって以来ですから」
神は死んだ!
「はい、今ヒロと一緒にいるんですよ。え、今日ですか? ご迷惑じゃないですか? いえ、私の方は全然予定ないですから。はい、わかりました。今から戻りますね」
どうやら今日は厄日のようだ。今の話しぶりからすると、これから家に帰って夕飯を一緒に摂ることになりそう。
俺の平和な休日を返して欲しい。
「さ、ヒロ帰るわよ」
なんという傍若無人さ。そこに痺れもしないし憧れもしない。むしろ反面教師だな。
「念のために聞くけど、碧ねえ家に来るの?」
「ええ、おばさんが是非来てって。今から帰って私も料理を手伝うわ」
このまま帰ると家族に死人が出てしまう! 主に自分だが。
考えろ、冷静になるんだ。こんな時は素数を数えて・・・あれ2って素数だっけ?
いかん、余計なことを考えてたら余計に混乱してきた。まずは危険を回避するために、このまま帰宅するにはいかないってことだ。ならばどうすればいい。今こそエ○ゲで培ったコミュ力を発揮する時・・・・・・よし、これだ!
「あー、碧ねえ。そういえば俺参考書を見ようと思っていたんだ。よければ今から本屋に行っておすすめ教えてくれないかな」
「はぁ? あんた、そういうことは早く言いなさいよね」
「いや~、碧ねえが店回るのに夢中になってるからさあ、邪魔しちゃ悪いかと思って」
「ぐっ、悪かったわよ。でも参考書なら前に私が使ってたやつがあるけど。もっとも実家に置いてあるから送って貰うことになるけど」
「今すぐ勉強したい気分なんだ!」
くそ手強い。
「ふ~ん、じゃあさっさと選んで帰るわよ」
きた食い付いた。
「折角だからじっくり選びたいし、俺からちょっと遅れるって、母さんに電話で今から言っておくよ」
「え~、選ぶのなんて10分もあればいいでしょ」
「ほら、碧ねえと一緒なんて久しぶりだし、ちょっとゆっくりしたいな~って思ってね」
「・・・・・・なんか怪しいわね」
無駄に鋭いな、さすが野生の勘が働くだけはある。だが、こんなことで挫けたりはしない。目指せエ○ゲ主人公!
「ほら、あそこにプリクラあるし後でやろうよ」
「ツーショットか。もう、しょうがないわね」
セーフ。これで尊い命が救われた。
「じゃあまずは本屋に行こうか」
「待ちなさい、まずはプリクラを撮るわよ!」
「え、別に後でいいんじゃ」
「本屋の方が駅に近いのよ。またここに戻ってくるのも面倒でしょ。さあ撮りまくるわよ」
何やら碧ねえの琴線に触れてしまったらしい。ずるずると引きずられるように店に入った。
うわ、ここカップル限定しか入れないのかよ。初めて入っちゃったよ。
なんか一杯種類があるな。ほう、機種毎にフレームとかが違うのか。
「さあ、全部制覇するわよ!」
「ちょ、碧ねえ何言ってるんだよ。全部なんて時間もお金も勿体ないだろ」
「何よ、私と撮りたくないって言うの?」
ギロッと睨まれた。やべえ、
「いやいや、そういう訳じゃなくて。ほら、一度に全部だったらまたここに来る楽しみがなくなっちゃうだろ」
「そ、そう。また私と来たいのね。全くしょうがないわね、なら今日は我慢してあげるわ」
はあ助かった。しかし今のは失敗したかも知れない。また来なきゃ行けないのか。
「う~ん、このフレームもいいわね」
ここに来てから30分が経過した。
「なあ碧ねえ、いい加減決めてくれよ」
「何よ、私が丹精込めて選んでるのに」
「じゃあ候補上げてくれよ、俺が選ぶから。このままだと終わらないだろ」
「むう、じゃあこれとこれと……これかな」
「100以上あるじゃねーか! もっと厳選してくれよ」
「何よ、これが厳選した結果じゃない」
「あーもう、じゃあこれとこれとこれでいいだろ」
「ちょっと適当に選ばないでよ」
「厳選した中なら選んだんだからいいじゃないか。さ、撮ろう」
「まあいいわ、写メを撮っておいたから今度はこれ以外ね」
「へいへい」
「ほら、もっとこっちに寄りなさいよ。フレームに入らないでしょ」
「ほら、もっと笑顔」
「目瞑ってるじゃない」
はぁ、やっと撮り終わった。碧ねえは今は嬉々として落書きをしている。全く何が楽しいのやら。
「はい、あんたの分よ。宝物として厳重に保管しなさい」
宝物って大げさな。
「ははー、有り難く頂戴します」
「うむ、家宝にするがよい」
なんてバカな事をしながら本屋に向かっていた。
「大分時間が経っちゃったわね」
それ全部あなたのせいです。
「で、どの教科の参考書が欲しいの?」
「とりあえず英語かな。ちょっと苦い経験があってね」
主にペアで組まされた東別院のせいだけど。
「ふーん、あっそうだ。私が教えて上げようか?」
「ごめんなさい、マジ勘弁してください」
「ちょっと何よ?」
「だいたい碧ねえ、英語不得意だっただろ」
「そうだけど、受験英語ならいけるわよ」
「今回強化したいのはヒアリングの方なんだ」
「そうなの」
珍しくしょぼーんとしている。
「ここか、大きいな」
「ええ、この地域では一番大きいって聞いてるわ」
「へー、じゃ早速入りますか」
中も広く快適で、ゆったり選ぶことが出来そうだった。
「おお、すごい種類がある」
「すごいわね、前住んでた所にあった本屋なんてここの1/4もなかったわよ」
さてここから選ぶとなると大変だな。ちょっと店員さんに聞いてみようかな。
「はい~、何をお探しですか?」
「英語のヒアリングに関してのものなんですけど、何かいいものってないですかね?」
漠然とした質問になってしまった。しかしお姉さん|(推定20歳とみた)店員はそれにも関わらず「でしたらこれがお薦めですね」とあっさり解決してしまった。
中を見てみると付属にDVD等がついており、リスニングに重点を置いてあった、
よしこれに決めた。お姉さん店員にお礼を言ってレジに向かった。ちなみに碧ねえは料理本を熟読していた。
まだ諦めていなかったのか。
その後、料理本を買っていこうとする碧ねえを止めたりとなんだかんだで揉めながらやっと家の前についた。
時刻は6時30分。よし、この時間ならもう料理は出来上がっているはずだ。まさに計算通り!
「まったくヒロが邪魔するからこんな時間になっちゃったじゃない」
「悪い碧ねえ。ついつい久しぶりだったから時間を忘れちゃって」
「もういいわ。さ、入りましょ」
「ああ、ただいまー」
「おじゃまします」
そういってドアを開けて家の中に入った。
「まあ碧ちゃん久しぶりねー」
「お、碧ちゃん前にも増して綺麗になったねえ」
「お久しぶりです、今日は突然お邪魔してすみません」
「いいのよそんなの。前みたいに遊びに来てね」
ふう、今のうちに部屋に荷物を置きに行くか。
と階段を登り切ったところでメイに会った。
「お帰りなさいませ、お兄様」
「ただいまメイ。そういや下に碧ねえが来てるぞ」
「本当ですか。久しぶりですね」
「ああ、久々に今日は一日振り回されたよ」
「ふふ、いつも通りですね。では私も挨拶してきます」
「あいよ、俺も荷物置いたらすぐ下に行くよ」
俺の機転により、碧ねえが料理を作るという最悪の事態を避けられ、無事に食事を過ごすことが出来た。
いつの間にやら時間も8時近くになったので近くのバス亭まで碧ねえを送ることになった。
「ねえ、メイちゃんどうしたの?」
「ん? ほら引っ越して新しい中学に入っただろ。多分自分を変えたかったんだよ」
「そ、そうなの? いきなりお淑やかになっててビックリしたんだけど」
「そういや碧ねえも昔はやんちゃだったからなあ。見た目大人しくなったのって高校入ってからだっけ?」
「昔のことは言うな!」
やっぱり中身の方は変わってないな。見た目も今は髪を伸ばしてるけど、昔は短髪だったしよく男の子に間違えられたっけ。ふむ、改めて見たけど残念ながら胸の方は育たなかったか。
「ヒロ、あんた今なにか失礼なこと考えなかった」
くっ、やつはニュータイプか。
「いや髪伸びたなあって思ってたんだよ」
「うん、確かヒロって長い方が好きなんでしょ?」
「うーん、まあ本人が似合っていれば何でも良いと思うけど。今の碧ねえの髪は似合ってると思うよ」
「そ、そう」
おっとバスが来たようだ。
「じゃあね、ヒロ。ちゃんと勉強しなさいよ」
「はいよ、碧ねえ気を付けて帰れよ」
無事見送った後、俺は風呂に入った。
「ふう、なんか休日だったのに全然休めなかったなあ」
まあぼやいても仕方がないか。
とりあえず今日は料理を回避できたが、いつの日か死に直面しそうな危険があるなと考え、本気で料理を諦めさせる作戦を考えていた。
お気に入りが6件も。小躍りしております。
そして話が進まなくて申し訳ないです。