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第3話 クラスメイト

 朝7時。目覚ましによりいつも通りに目覚める。

 さて今日から本格的な学校生活か。あの学校で本当にやっていけるのか心配は尽きないが、行けるところまではいってみよう。いざとなれば学園長が言ってた転校もあるし。


 ダイニングに行くとやはり両親はもう出ていておらず、今日は帰りが遅くなるとメッセージボードに書き置きが残されていた。

 まあ、これが普通だ。大抵二人とも遅くまで仕事をしているので昨日みたいに平日に家族全員で夕食をとることなんて滅多にない。もっとも二人とも同じ会社なので昼と夕食はいつも一緒にとるらしい。うむ、仲良きことはいいことなり。


「お兄様おはよう御座います」

「おはようメイ」

 妹に朝の挨拶をして食卓についた。昨日と同じくすぐに食べられるように準備をしていてくれたらしい。


「はい、どうぞお兄様」

 ご飯をよそってくれたお茶碗を、お礼を言って受け取り朝食を食べることにした。

「いただきます」


 母さんの料理は旨い。和洋中なんでもござれで作ることが出来、お陰様で俺も妹も嫌いな食べ物は皆無である。

 母さん曰く「胃袋を掴んだものこそ勝者となる」といい、最近はメイに料理の手ほどきをしている。

 忙しいはずなのにちゃんと朝食と、また遅くなることが分かっているときは夕食も用意してくれている。まさに母に感謝である。


 さて今日もおいしい朝食を平らげて出発の準備をするか。

 マイ自転車を引っ張り出し鞄を籠に放り込んで家を出た。生憎妹の中学校と逆方向にあり、さらには通学時間も俺の方が微妙に掛かるために別々に出発することになっている。


「じゃあいってきます」

「お兄様お気を付けて」

「ああ、メイも戸締まりよろしく」


 そして自転車に乗り学園に出発した。

 閑静な住宅街を通り抜け学園の近くまで来た。そして、そこでこの学園が改めて異常なことを再認識した。

 まず高そうな高級車が門の前にずらりと並んでいるのである。何かと思っているとどうやら送り迎えの車らしい。流石はお嬢様学校。

 昨日あれだけでかい駐輪所に自転車が3台しか止まってなかったけど、自転車通学してる人は俺以外では2人しかいないんだろうな。そういえばそのうち1台は子供用のちいさいやつだったな。


 とりあえず自転車から降りて手押ししながら門に近付いた。ここで門番に学生証のIDカードを渡し、顔を確認されて中に入る。相変わらずの厳重警備。昨日初めて登校したときは大いに戸惑った。

 流石に二回目となると慣れてきたのでそのまま駐輪所に向かった。

 ガランとした駐輪所に自転車を止めて教室へ。そういえば今日も俺の自転車を含めて3台だったな。


「ヒロくんおはよ~」

 教室に入ってすぐに恵が挨拶してきた。どうやらクラスメイトの女子生徒達と朝から談笑していたようだ。

「おはよう恵。しかし相変わらず女装なんだな」

「もちろんだよ、可愛いは正義だよ」

 朝からわからんことを口走りながら恵が隣に来た。

 しかし本当に女としか思えんな。しかも美少女に分類されるほどの顔立ちだし。


「なんかもう他のクラスメイトと仲が良さそうだな。もちろんお前の性別を知っているんだよな?」

「うん、もちろんだよ。肌のお手入れとか、あの化粧水がおすすめとか、みんなと話してたよ」

 いや、それ普通男とする話題じゃないから。と心の中でツッコミを入れていたら思わぬ人物から声を掛けられた。


「おはようございます、黒田くん」

「あ、おはよう北条さん」

「ふふっ、名前を覚えて貰って嬉しいです。私のことはどうぞ瑞季と呼び捨てにしてください」

 パーフェクト笑顔でこちらに挨拶をしつつとんでもないことを言い出す北条瑞季。

「え、いや、流石に呼び捨てはハードルが高いよ。瑞季さんでいいかな?」

 名前で呼ぶのもかなりハードルが高いのだが、周りのお嬢様の会話を聞く限りでは下の名前で呼ぶのが普通みたいだ。


 そういえば前住んでいた町の近くにいたことがあるって言ってたよな。何年くらい前のことなんだろ?

「えっと瑞季さん、ちょっと聞きたいことがあるんだけど良いかな?」

「はい、上から89・59・86です」

 ちょ、イキナリ何言い出してるのこの娘。

「瑞季さん落ち着いて! そんな重大なパーソナルデータを聞きたい訳じゃないよ」

「あら、違うのですか? 男性の方が一番知りたがっていると聞いたものですから」

 おい、誰だよお嬢様に変な事を吹き込んだ奴。どうもありがとう。

 じゃなくて昨日の事を聞かなくては。


 そこで呼び鈴がなり朝のホームルームの時間になってしまった。

「あら、ではまた後ほど」


 そういって自分の席の方へ行ってしまった。

 まあいいや、後でチャンスがあれば聞いてみよう。


 ガラッと扉が開き子供先生たる栞先生が入ってきた。

「みんな~おっはよ~」

 うん、子供は元気が一番だよな。

「じゃあ今から出欠を取るね」

 先生が元気よく出欠を取っている。それもまもなく終わり

「それじゃあ今から学級委員や各係を決めたいと思います」 

 と先生がプリントを配り始めた。

 受け取ったプリントを見るとズラッと各係の一覧が書かれていた。

 どうやら全員強制的になにかの係に就かされるようだな。ここはやはり地味で楽そうな所を狙っていきたいところだ。

 何かあるのかな、とそう思いプリントをよく読んでみることにした。

 一番上は普通に学級委員、うん定番だな。他にも見ていくとお花係やらボランティア係、定番の図書委員やら風紀委員などもあった。

 うむ~、ヘタなものに所属して時間を取られたくないな。


「まずは学級委員をやりたい人はいますか?」

 まずは立候補者を募る訳か。とそこで一人の生徒が挙手した。おおう、瑞季さんじゃないか。なるほど確かにピッタリかもしれない。

「はい北条さんですね。他に立候補はいませんか~?」

 シ~ン

「はい居ないようなので、北条さん学級委員をお願いしますね」

「はい、宜しくお願い致します」

「では次に副委員を」

「先生、私に指名させて貰ってもよろしいでしょうか?

「はい? そうですねえ、他の皆さんはいいですか?」

 ビクッ! 急に背筋に寒気が!

「問題なさそうなので指名していいですよ」

「では黒田くんにお願いします」

 静寂していた教室が一斉にざわめいた。というかなぜ俺を。やはり俺を陥れるためなのか!

 とりあえず席から立ち、一番前の席のため振り返って北条さんを見た。

「あの、なんで俺を?」

「いえ、折角男女共学になったのですし、これからは互いに歩み寄っていかないとと思いまして」

 くっ、そんな正論を言われたら断れないじゃないか。

「わかりました、副委員長をやります」

 パチパチパチパチ。なぜか教室に響き渡る拍手。なんか非常に恥ずかしいんですが。とりあえず教卓の前に二人して並ぶことになり、ここからはの仕切りは先生から引き継いで各委員を決めることになった。


 どうやらパーフェクトなのは笑顔だけではないらしく、あっという間に進行してすべての委員が決まってしまった。

 さらには黒板に綺麗な字ですべての名前が書き込まれていて、俺はまさにいらない子状態。

 おっと教室の隅で見守っているフリをしながら居眠りしている栞先生も同じか。

 よしイタズラして起こしてやろう。ポケットの中にあったティッシュを筒状に丸めて栞先生の鼻へ。コチョコチョっとくすぐって、すぐに何もなかったかのように直立姿勢に。

「ふぁ、な、なんですか!?」

 鼻へのいきなりの攻撃に先生が慌てて目覚めた。とりあえず俺は知らんぷりを決め込み明後日の方を向いておいた。

「先生どうかしましたか? 委員の方は全部決まりましたが」

「はっ、いえいえありがとうございます」

 誤魔化すように先生が慌てて教卓の方へ駆け寄ろうとした。そこで先生の特性なのか何もないところで躓いてあわや転けるというところで、すぐ側にいた俺が慌てて先生を支えた。

「はきゃっ、あ、ありがとうございます」

 思わず抱きかかえるようにしてしまったが何とか助けることが出来た。何故かおおーと響めきがあがる教室。そして沸き上がる罪悪感。もう先生にイタズラをするのはやめようと心に誓った。



 さてこのクラスだが、はっきり言ってほとんどがお嬢様ばかりである。その中でも瑞季さんは中心的存在らしく、彼女や恵を通じてなんとか他のクラスメイト達と交流を図ることが出来た。


 だが何事にも例外というものが存在するらしく、ある一人の女子とだけは上手くいかなかった。

 それが東別院香織ひがしべついんかおりだった。


 まず第一声が「庶民とは話したくありません」と会話を拒否。とりつく島もない。

 ここは仕方ない、ぼっちで時間があった俺を舐めるなよ! なんと俺は通信講座で手話を習っていたのだ。

 というこで手話を使ってみたところ、なんと相手も手話を習得していたらしく同じく拒否を伝えてきてあえなく撃沈。俺の完敗だった。


 会話すらままならない状態ではお手上げなので、瑞季さんにそれとなく東別院について聞いてみた。


「香織さんですか。そうですね、確かに一般の方達を差別というか色眼鏡で見ているところはありますね」

 ふむ、俺だけが嫌われているというわけではないのか。ちょっと安心した。


「子供の頃に一般の方に意地悪をされたか何かで、それ以来差別的になったみたいです」

 よくある好きな子をいじめるやつか何かにあったのだろうか。全くその意地悪をした奴に文句を言いたくなるな。


「あ、その意地悪をされた方はその直後に何やら遠くの土地に引っ越されたと聞きました」

 うん、それ復讐だよね。すまん文句言いたかったけどもういいや。

 ふう、現状じゃあどうにもならないな。ヘタなこと言って俺も遠い土地に飛ばされるのは勘弁だし、関わらないようにするしかないな。




 遂にやってきましたランチタイム。この学園はお嬢様が通うということで食堂の方もとても豪華になっている。

 所謂カフェテリア方式を採っており、常に数百種類の料理が用意されていた。

 しかも俺には特典のフリーパスがあるのだ!

 何を食べてもタダ! うむ本当にこの学園に来てよかった。

 さっそく恵を誘って食堂に来た。流石はお嬢様学校、お洒落な雰囲気でお嬢様方が華やかに食事をしていた。

 うむ~、流石にこの中に混ざるのはきついな。俺が近付くと周りに誰も近付かないし、そこだけ空白地帯になるからな。

 どうしたものかと悩んでいると、瑞季さんが「外のオープンスペースで食べましょうか? 今日は晴れていますし風もありませんから外でも大丈夫そうですし」とそこで食事をすることになった。


「しかしここは凄いな。数百種類も料理が用意されてるなんて思ってもみなかったよ」

「そうだね、専用のコックさんを雇っているみたいだし、味の方も一流だよね」

「ええ、そうですね。思わず食べ過ぎてしまいそうです」

「とはいえ、流石にあの中に混ざって食事をするのは苦労しそうだ」

 と女子生徒達だけで埋まっている中を見て言った。

「さっきも俺の周りにだけ人が居なかったし、慣れるまで苦労しそうだ」

「みんな物珍しがっているだけですよ。次第に落ち着くと思いますよ」

「そうだといいんだけど。そういや他の男連中はどこ行ったんだ?」

「あそこに居る方がそうではありませんか?」

 といって瑞季さんの視線の先を目で追ってみた。

 居た! モーゼの十戒並に割れた中を歩いている3人。あれチャラい軽井がいないな。まあどうでいいか。

 しかし中にいたら俺もあんな目にあってたのかな。ここは瑞季さんに感謝だ。


 さて優雅なランチから教室に戻って、まずはスマホを取り出した。

 実は昨日聞いた男共のアドレス登録を忘れていたのだ。さっき野郎共の顔を見たときに思い出したのは秘密だ。

 さて登録するかと思ったときに、例のアプリが起動していることに気が付いてしまった。

 そこには・・・・・・



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『やあ、ついに世界を救うために行動する時がきたよ。まず第一の指令だ』


『東別院香織を遊園地へ誘え』

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 この文字を見た瞬間、俺は目の前が真っ暗になった。

な、なかなか話が進まない(汗

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