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ぴいちゃん日記  作者: 虹色
平穏な日々?
73/99

親友・・・みたいな。



12月8日から後期の中間テストがあるので、1週間前の今日から部活は休み。


月が変わったことを理由に、久々に席替えがあった。

帰る前にくじを引いて、バタバタと机の移動。

俺は窓際の一番後ろ。周りは男ばっかりで、気楽な席だ。隣には映司もいる。


岡田は今までと同じ場所だと騒いでいたけど、うしろにぴいちゃんが来たから嬉しそうな顔をしている。

前には小暮。両手に花?




昨日の部活が終わったときに、今日から活動休止期間に入ることに気付いて、もしかしたらぴいちゃんと一緒に帰れるんじゃないかと期待していた。・・・けど、言い出せないまま、この時間。

ただひとこと、「今日、一緒に帰ろう」って言えばいいだけなのに。


まあ、いいか。

どうせ、ぴいちゃんは、ほかの生徒よりあとに教室を出るんだし。


そう思って、帰り支度をのんびりとしていたら、岡田がぴいちゃんと話しながらのんびりしているのが目に入った。


しまった!

同じことを考えてたのか。

しかも、今は席が前後に並んでるんだから、岡田の方が圧倒的に有利だ。

でも、ここで簡単に引きさがったりするもんか!


荷物を持ってさりげなく(?)近付いて行くと、岡田がいやな顔をしたけど、それには気付かないふり。


「吉野は帰らないの?」


岡田は無視して、ぴいちゃんに話しかける。


「うん、もうそろそろ帰ろうと思ってるところ。岡田くんも一緒に帰るから、藤野くんも途中まで一緒に行こう。」


やった!

彼女の方から言ってくれるなんて!

しかも、まるで一緒に帰るのが当たり前みたいな感じだ。

“一番仲良し” の効果か?


まあ、途中まででサヨナラなのは仕方ないな。

とにかく岡田の邪魔が少しはできるわけだし。

でも・・・。

やっぱりぴいちゃんは、岡田と2人で帰ることは、あんまり気にならないらしい。

どうしてなんだろう?


岡田は一瞬、不満そうな顔をしたけど、俺が途中までしか行かないことで納得したのか、すぐにぴいちゃんに笑顔を向けた。


3人で一緒にいるのは思いのほか楽しかった。

教室では和久井や小暮や映司も一緒に、大勢の楽しさがある。

でも、岡田とぴいちゃんと俺という組み合わせはもう少し親密な雰囲気があって、3人がそれぞれの個性を発揮して話がはずむ。

ぴいちゃんは、岡田と俺の間では、けっこう遠慮しないでものを言う。

彼女はいろんなことを普通の人とは違う方向から見て、おもしろい解釈をする。

そのユニークさは、彼女と仲良くなった人にしか披露されることはない。


2人と別れてから、明日も今日と同じように帰ってもいいな、と思った。(岡田がどう思ったかは知らないけど。)

でも、せっかく部活がないんだから、ぴいちゃんと2人の時間もほしい!


ってことは、朝だな。

明日は早めに家を出よう。




夜になってから、岡田から電話がかかってきた。


「お前、ぴいちゃんと何かあったのか?!」


「え? 何かって、どんな?」


時間稼ぎに、逆に質問をする。

あらためて言われてみると、けっこういろいろあったよな。


「“一番仲良し” って何だ!!」


あ、それか。


「一番仲良しの友達っていう意味だけど。」


「なんでだよー。」


あれ?

岡田がちょっと弱気になってる?


「えーと、吉野が、特別の友達じゃダメだって言うから。」


「ん? お前、ぴいちゃんにフラれたのか?」


「違う! 吉野には、友達の種類があるんだよ。」


まあ、そんな感じの説明しかできないな。

それより。


「なんで、急にそんなことで電話かけてくるんだよ。お前、吉野に何か言ったのか?」


「・・・・・。」


返事がない。


「何か言ったんだな?」


「ノーコメント。」


それもそうか。


「じゃあ、吉野に何を言われたんだ?」


「そう! それだよ! いきなり『岡田くんは好きな人いないの?』って訊かれたんだぞ! あせったの何のって。」


すごいストレートだな。

さすがぴいちゃん。

昨日の俺の話からつながって、岡田にも訊いてみたわけか。


「で、一番仲良しが出てきたのか?」


「俺は、“一番好きなのは” っていう意味で言ったのに・・・。」


ああ、そういうことを言ったんだな。


「ぴいちゃんが、お前とも一番仲良しで、男からそんなに信用されるなんて光栄だとか言って・・・。」


「あはははは!」


本当に彼女らしい。


「よかったじゃないか、拒否されないで! はははは!」


安心したせいか、笑いが止まらない。

岡田のため息が聞こえる。


「それは置いといて、お前、帰りにぴいちゃんが教室を遅く出ること、知ってたな?」


う・・・。


「昨日もそれだな?」


「・・・ノーコメント。」


って言ったって無駄か。


「まあ、いいや。これからしばらくは、俺の方が有利だからな! はっはっはっは!」


岡田の自慢げな高笑いに悔しい気分を味わいながらも、こういう会話もけっこう楽しんでいる自分に気付く。

でも、岡田は遠慮のない性格だし、ぴいちゃんは岡田を信頼しているから、きっと何でも話してしまうだろう。

そうなったら、朝のひとときも・・・。


いや。

これだけはなんとか確保したい!

とりあえず、明日は大丈夫だろう・・・。








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